第38話 スキルオーブ
僕たちは夕日が差し込む頃アイシアさんのところに戻った。今日ダンジョンで獲得したアイテムの売却金を受取り、鑑定結果を聞いた。
魔法の書は中級の【アイスランス】だった。これは大きな収穫だ。単発の魔法が封じられている魔法書で、水属性の初級をすっ飛ばして中級の魔法を覚えられる。現状攻撃魔法が風の初級のみなので、メリッサにとっては特に価値がある。
スキルオーブは【気配察知】だ。言わずと知れた索敵や斥候要員に必須な能力で、パーティーに一人は必要なスキルだ。僕より小柄なミンディーにぴったりだと思い、彼女に覚えてもらうことにした。
スキルオーブは基本的に販売禁止だが、パーティーメンバー全員が同じスキルを持っている場合に限り、初めて売ることが可能だ。今回はその場でミンディーに使ってもらうことにした。
静かな部屋の中、みんなの緊張した視線が集まる中、ミンディーはゆっくりとスキルオーブを手に取った。オーブは彼女の手の中でほのかに光り、温かさを放ち始めた。そして彼女が深呼吸をすると、その光が彼女の体全体に広がると一瞬で消えた。ミンディーの目がぱっと開き、周りを見渡した。
「気配を…感じられる。周りの生き物や人の存在が…明確にわかる!」
彼女は驚きと喜びの混じった声で言った。
魔法書はメリッサが今後使うことになった。メリッサは魔法書を開き、一つ一つのページを丁寧にめくりながら、その内容を吸収していく様子だった。その集中力と熱意は、まるで周りの世界から切り離されたかのようだった。数時間後、メリッサは頭を上げ、自信に満ちた表情で僕たちに向き直った。
「アイスランス、使えるようになりましたわ。これからの冒険で必ず役に立ちますわ!」
ミンディーは最初は戸惑っていた。
「ちょ、これ、ス、スキルオーブをアタイが?良いのか?」
「さっきも言ったように、斥候役にミンディーは向いていると思うんだ。駄目かな?」
「う、うん。こんな高価なの良いのかなってさ」
「ふふふ。らしくありませんわよ。どんと来い!あたいが使ってやるぜっ!とおっしゃればよいのですよ。私も魔法書を頂くのですから、遠慮などする必要はなくてよ」
「そりゃあお貴族様は慣れてんだろうけどさ、アタイのような平民はドキドキすんだぜ!」
使い方は簡単だ。スキルオーブに手を触れ、習得する旨を発すればよい。
「痛くないよな?よ、よし、行くぜ!気配察知!頂きます!」
その瞬間オーブが光り輝き、エフェクトが発生するとミンディーの胸に吸い込まれていった。
「おおおおお!何か来たぜ!」
「うん。僕も1度使ったけど、ちょっと待って」
僕はミンディーの手を握り、ステータス操作にてステータスを覗き見た。
「うん。ちゃんと習得したよ!」
「バンのそれ便利だよね。ギフトかぁ!羨ましいぜ!」
この日はこれでお開きとなり、ゴブリンのナイフやカナブーンの触角を売ったお金47900gを受け取りギルドを後にした。
僕は収益を3等分にしようとしたけど、アイシアさんが驚いて、5等分にすることを提案してくれた。結局、ミンディーとメリッサはそれぞれ1部分を受け取り、僕は3部分を受け取ることになった。ただし、宿代や装備代はその中から出すことにして、2人は私服や下着、化粧品などを買うお小遣いとして使うことになった。僕は2人がきれいな服を着ていると嬉しいし、正直、女性用の服屋に男が買いに入るのは勇気がいるから、自分で買ってほしいと思っていた。
売却金は、僕たちのこれからの冒険に大きく役立つだろう。そして、今日の一件は、僕たちが互いに支え合い、成長するための大切な一歩となった。僕はアイシアさんに感謝の言葉を述べた後、ミンディーとメリッサと共に、次の冒険に向けての準備を始めたんだ。新たに手に入れたスキルと魔法で、これからの冒険がより一層楽しみになった。
本日のリザルト詳細
ゴブリン
魔核(4個):1000g × 4 = 4000g
ショボイナイフ(4個):500g × 4 = 2000g
計:4000g + 2000g = 6000g
カナーブン
魔核(3個):1500g × 3 = 4500g
触覚(3個):800g × 3 = 2400g
計:4500g + 2400g = 6900g
スライム
魔核(2個):1000g × 2 = 2000g
スライムジェル(2個):500g × 2 = 1000g
計:2000g + 1000g = 3000g
ケンタウロス
魔核(1個):32000g
計:32000g
全アイテムの合計買取価格
ゴブリン:6000g
カナーブン:6900g
スライム:3000g
ケンタウロス:32000g
買取価格計:6000g + 6900g + 3000g + 32000g = 47900g
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