第37話 正座!
セーフエリアを抜け出してから僕たちはダンジョンを出て町に戻り、アイシアさんの元へ急ぐことにした。
メリッサは腰を抜かしていて動けそうにないので、僕がおんぶしてダンジョンを出ることにしたんだ。最初は大丈夫ですと言って立とうとしたけど、腰を抜かしていて、立った瞬間倒れて僕が受け止めた。
セーフエリアで休むにしろ、2人の精神状態からあまり長居はしたくなく、僕がメリッサをおんぶして行く。
そのために戦闘はミンディーに任せ、僕の背嚢はメリッサに背負わせている。
つまりミンディーには背負わせていない。今回はミンディーとメリッサの2人の戦闘経験を積ませ、レベルを上げることが目的だった。最初こそ遠慮されたが、荷物を背負うのは慣れてからと諭したんだ。
帰路は階段付近でゴブリンやスライムが出たけど、明らかに動きの良くなったミンディーが危なげなく倒していた。
ダンジョンをサクッと出て一安心。
「メリッサ、歩けそう?」
「申し訳ありません。もう少しこのままという訳には行かないでしょうか?」
僕は恥ずかしかったけど、僕のミスで腰を抜かしたのもあり、そんなふうにお願いされたら駄目とは言えずダンジョンを出てからは、背嚢をミンディーに背負ってもらって、ギルドに急ぐ。
「バン様、そろそろ大丈夫だと思います」
ギルドの近くでようやく自分の足で歩けるようになったと言ってきたが、確かに足取りはしっかりしており一安心だ。
ギルドの建物が見えると、僕の心の中ではあの魔法書とスキルオーブについて、アイシアさんから少しは褒めてもらえることを期待していた。だけど、現実はまったく違っていた。
まだお昼前なので空いており、並ばずにアイシアさんのところに行く。
「あら?バン君、早かったのね」
「はい。今日は初日なので2階層に降りてすぐに戻ってきました。魔石の査定とアイテムの鑑定をお願いします」
ミンディーが背嚢から出した魔石を見て表情が険しくなった。あれっ!?
アイシアさんは僕たちが持ち帰った魔石を見るなり、顔を曇らせただけではなくいきなり怒られた。
「ちょっとバン君、君は何をしてきたのですか!」
いつも穏やかなアイシアさんの声には、これまで経験のないような怒りが満ちていた。僕たちは一瞬で状況を理解した。褒められるどころか、大きな失敗をしてしまったんだと。
「あの場所にランク5のケンタウロスが出るなんて知らなかったんだ・・・」
僕が小さな声で言い、ミンディーもメリッサも僕の裾を掴んでいて、ビクビクしている。でも、アイシアさんは僕のそんな言い訳に貸す耳を持っていなかった。
「ダンジョンは予測不可能な危険がある場所ですよ!それを甘く見てはいけません。今回はたまたま生きて帰れたけど、次はないかもしれませんよ。どうせ隠し扉でも見付けて、お宝がないかなとノコノコ入っていったんでしょ?なんでですか?」
アイシアさんは厳しい口調で僕たちに言い聞かせた。その場に居合わせた冒険者たちはクスクスと笑っている。
「あいつこの前北西潰したやつだろ?なにやらかしたんだ?」
「どうもルーキーが2階層入口にあるトラップに引っ掛かったらしいぞ」
「あのケンタウロスが出るやつか?」
「確か前回発生してから1年だから、そうだろうぜ」
「まあ、主を殺れるなら何とかなるか。でもあの様子じゃ、知らずにノコノコ入った感じか?クックックッ」
そんな会話が見ている者が、しているのが聞こえてきたものだから、僕は恥ずかしくて穴があったら入りたかった。実は有名な話だった。資料室にある古のダンジョンの注意事項にしっかりと書いてあるそうなんだけど、僕はその存在を知らず見ていなかったんだ。
その後、ハッとなったアイシアさんの提案で場所を移し、僕たちはアイシアさんと一緒に自分たちの行動について深く反省する時間を持った。アイシアさんはダンジョンでの行動には常に注意が必要で、安全第一で進むべきだと教えてくれた。もっともなことでぐうの字も出なかった。また、未知の場所に踏み込む際は、より慎重に行動するよう促された。
反省会が終わった後、僕たちは心を新たにした。アイシアさんの言葉は厳しかったけど、それは僕たちが成長するための大切な教訓だった。今回の経験を生かし、これからの冒険をより慎重に、でも積極的に進めていくことを心に誓ったんだ。
お説教タイムの後は4人、つまりアイシアさんも一緒に昼食を食べに行き、戻った後は資料室に籠もることにしたんだ。
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