第27話 金は出来た!

 日付が変わる少し前に奴隷商に着いたけど、まだ明かりが灯っていた。

 僕は扉をドンドンと叩こうとしたけど、手がドアに当たる直前にドアが開き、人の頭をコンコンとしてしまった。


「バンスロット様、私の頭をノックしても何も起こりませんぞ」


 暗くて顔がよく見えないはずなのに、僕だと分かったようだ。


「ご、ごめんなさい。ドアをノックしようとしたらドアが開き、止められませんでした」


「フフフ。からかっただけにございます。お待ちしておりました。さあどうぞ中へお入りください」


 僕は奴隷商さんの服がこの前と同じ、仕事着である趣味の悪い燕尾服であることにあれっ?と思った。

 多分居住スペースと繋がっているか、敷地内に居住スペースがあると思ったんだ。

 なので寝巻きや部屋着で出てくることを想像したんだけど、僕が日付が変わる直前に来ることを分かっていたようだった。


「あの、こんな時間にごめんなさい」


「なに。期限について時間を区切らなかった私の落ち度です。それにバンスロット様はきっかりお金を持って来るのだと理解しておりましたから」


 そうして応接室に促され入った。

 奴隷商さんは僕を座らせると、直ぐに来ますと出ていった。


 すると奴隷商に伴われ、銀髪を綺麗に肩で切り揃えたメイド服の美少女が現れた。


 ちらりと僕の方を見るが、その顔に感情はない。

 ただ、涙を流したのか、目が少し赤い。


 どうぞとお茶を差し出された。

 そう言えばどことなくシンディーさんに雰囲気が似てなくもない。


 僕は早速お金をテーブルの上に出した。


「流石でございます。確かにお代を頂きました。これにより889号はバンスロット様のモノにございます。ほら、お前のご主人様となった方です。ごあいさつなさい」


 彼女は抑揚のない声を発した。


「ご主人様。889号でございます。お仕えさせていただきます」


 表情がない。僕を見る目は冷めた目だ。

 奴隷はこうなのかな。


「では着替えてきなさい」


 彼女が出ようとしたので待ったを掛けた。


「あの、ちょっと待って!どのような服に?」


「バンスロット様。通常の奴隷服ですよ」


 僕は彼女の腕を取り、止めた。


「それは嫌です。この服のままか、せめて町娘のような服に出来ませんか?お金なら払いますから」


「希望されるならこのままお渡しいたしますが、奴隷服を着せるのは彼女が奴隷であることを本人に知らしめるためなのですがな。まあ良いでしょう。元々引き渡す服ですのでこのままお引き渡ししましょう」


「その、彼女の首輪って外せませんか?」


「それならば10万g頂ければ奴隷紋を刻みますがいかがいたしますか?ただ、今日は出来ませんので、明日の施術となります」


「そうじゃなくて、純粋に首輪を外せないのかって思ったんですよ」  


「ふむ。取り敢えず今日のところは彼女を客人として客間で休ませましょう。少々バンスロット殿と2人で話をしたいので、お時間を頂けますかな?その前に少し失礼いたします」


 そう言うと奴隷商は一旦部屋を出た。


「えっと、僕はバンスロット。君の名は?」


「889」


「そうじゃなくて・・・それはここでの仮称でしょ?」


「言っとくけど、私の体を好き勝手に蹂躙できるからって、心はあんたの自由にできるとは思わないで!あんたに抱かれながら自由になったら殺してやるって、それを心の拠り所にするんだから。そうそう、私を買っていただきありがとうございます!この腐れ変態ご主人様」


 僕はこの綺麗な顔から発せられた言葉に少なからずショックを受け、腕を組んでそっぽを向くこの子とどう向き合えば良いのか、想像がつかなかった。


 そうしていると奴隷商が現れるとすぐに、少し失礼しますと彼女を応接室から連れ出し、何かを話していた。

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