第26話 光明
奴隷商から言われた500万G【標準家庭が必要とする年収は100万G】を用意する期限まであと4日。
これまでに集めることができたのは300万Gで、あと200万Gも足りず、かなり焦っている。
そんな中、ゾーイさんに娼館に連れられ、そこにいる人をターゲットにして体重操作で稼ごうとしたんだ。
しかし、僕は見てしまった・・・あの子は泣いていた・・・。初床を7日後に控え、700万Gの身請け金がなければあの子は名実ともに遊女となり、見知らぬ男たちの慰み物になる。
ただただ、そんな理不尽な状況から救いたいと思った。
下心なんてない。
なんならその場で解放し、バイバイすることも厭わない。
でも、もし助けられたのならば、生活の糧を見つけるまで面倒を見るつもりだけど、現実は厳しい。
まだ奴隷商から少女を救えてさえいないのに、別の女性も救いたいだなんて、ゾーイさんに言われた通り僕は御し難いバカだ。
時間さえあれば間違いなくお金はできる。
あの剣がオークションで売れたら万事解決も、次回オークションは1ヶ月も先なんだ。
だから当てにはできない。
あの大剣はシンディーさんに丁度よいし、そろそろ武器を替えたいようなことをちらりと言っていたけど、買ってくれないよね・・・流石にあの子たちを救うだけの額、持ち合わせがある訳ではないだろうし、虫の良い話だ。
体重操作は娼館でもあまり食いつかなかった。つまり手詰まりになりつつある。
宣伝と口コミがあれば徐々に稼ぐことが可能になっていくと思うけど、残念ながらそれを待つ時間的余裕はない。
僕は皆に黙って古のダンジョンに賭けることにし、翌日、朝早くからダンジョンに入った。
ギリギリまで粘り、多くの魔核とアイテムをゲットし、先ずは残り200万Gをと焦っていたんだ。3階層までは問題なく進んでおり、本来ソロだと厳しいが、無理に下へ下へと向かう。
そして僕は5階層でオーガに囲まれた。
僕はオーガたちに囲まれ逃げることもできなくなり、1人で立ち向かざるを得なくなった。奴らは巨大で力強い。
僕の剣はただの鉄の塊に過ぎなかったけど、生活魔法のファイヤを剣に纏わせることにした。
僕の使える魔法は生活魔法のファイヤとウォーターのみ。
これを付与魔法の代わりに使う。
炎は僕の剣を包み込み、オーガたちに対する僕の攻撃を強化した。しかし、生活魔法をこのように使う場合、燃費がすこぶる悪く、1秒に1の魔力を消費する。僕の魔力は急速に減少していったが、それでも僕は戦い続けた。
僕は短期決戦を図り、オーガたちに立ち向かった。炎を纏った剣はオーガたちの肉を焼き、彼らの動きを鈍らせた。僕は彼らの隙をつき、一撃ごとにオーガを焼き、1体、また1体と倒していった。
戦いは激しく、僕の体力と魔力は限界に近付いていた。
最後のオーガが倒れた時、僕はほとんど魔力を使い果たしていた。しかし、僕は勝利し、オーガたちが落としたアイテムを集め、ギルドに持ち帰ることができた。それらのアイテムを売れば目標に達するだろう!そう確信した。
僕は最終日の夕方、意気揚々とギルドに行くも、総買取額は140万G・・・あと60万G足りない・・・
高額になると思ったアイテムのレア度が低く、予測を大幅に下回り僕の頭の中は真っ白になる。
夕方にも関わらずお金が足りず、金策に走らざるを得なくなり、貴族街や商店等の商会主の屋敷を回る。
時間が遅く、夕食の時間に差し掛かってからだったのもあり、用が有るなら日を改めろと相手にされなかった。
話すら聞いてもらえず、扉や門は僕には開かれなかった。
何の成果もなく、ただただ無駄に時間だけが過ぎていく。
23時頃ギルドに行くと、この4日間会うことがなかったミスティックさんの面々がおり、疲れ果てた表情を浮かべてテーブルに腰掛けていた。
大剣使いのシンディさんは、申し訳なさそうに僕に話しかけてきた。
「ごめんよ・・・アタシらも何とかしようとしたけどさ、1000万Gしか用意できなかったんだ・・・」
僕にはその言葉の意図が分からなかった。
どういうことかと聞いたら、彼女はオークションでいくら安く見積もっても1500万G以上で売れると言われている大剣を買い取るため、不足しているお金を何とかすべくダンジョンに挑んでいたとのことだった。
「何でそんなことまでしてくれるんですか?僕もその額で買って頂けるならありがたいですが・・・」
「相変わらずこまけぇこと気にする奴だな。てめぇは助けたいのか?助けたくないのか?金が惜しいのか?どうなんだ?」
「助けられるなら一文無しになるのは厭わないです」
「だったら四の五の言わずその女を助けてやれよ!つう訳だからよ、シンディーも大丈夫だな?娼館の方もよ、明日駆け引きしたいんだが、これで身請け金は出来んだろ!俺もついてってやるからさ」
「ではシンディーさん、取り敢えず60万Gあれば500万Gになるので、残りは明日で良いので頂けませんか?」
すると、夜中なのにアイシアさんとギルドマスターが現れた。
「ほら、これが預かっていた武器と金だ。引き出すんだろ?」
僕は大金貨5枚を受け取った。
「残りはこいつらからの金をお前さんの残高に入れておくから行って来い。儂も初回無料で良いんだな?もちろん明日で良いぞ」
なぜか事情を知っているギルドマスター。
ウインクをするアイシアさん。
多分ギルドマスターに、『お腹を引っ込めるチャンスですよ』とか言って残って貰ったのだと思う。
疑問はなぜミスティックの面々が協力してくれたかだ。
「お前よぉ、何で俺等が協力してくれるのかな?とか思っていないか?俺の理由は別だが、まあ、シンディーがお前さんの武器を欲しがったから皆で金策をしたということにしとけ!」
僕は深々とお辞儀をし、奴隷商に向かって全力で駆け出したんだ。ゾーイさんが密かに後ろをつけているのは分かったけど、何かあったら助けてくれるのに動いたようだった。
僕以上にお人好しだ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます