第19話 ミスティックさんたちの自己紹介
北西ダンジョンの深淵からの脱出後、僕はミスティックという名の冒険者グループに助けられたんだ。いや、ダンジョン討伐後に魔核を寄越せと絡まれたところを助けられたんだ。男女3人ずつで皆20代後半と思われるベテランで、初対面にも関わらず、僕が絡まれているところを助けてくれた。
女戦士風で銀髪をポニーテールにまとめている闊達なオネェさんが先頭を歩く。
「少年、アタイはシンディー。見ての通り大剣使いだ。宜しくな!一つ言っておくが、ネエサンに色目を使ったらただじゃおかないからな」
いきなり脅されたが、見た目に反してリーダーさんを大事にしているようだ。
ポニーテールででかい!何がでかいかって?身長は僕と同じくらいだけど、ビキニアーマを着ていてすんごい!
「自己紹介がまだだったな。私はミスティックを率いるルセリアだ。獲物はブロードソードを2本使う」
凛々しい美人女騎士って感じ?眩しい程の美人さん!
「次は私ね。オシーリスっていうの。トラッパーね。で、獲物はこれよ。もちろん投げナイフも得意だし、私、年下も行けるから!」
軽くウインクをするショートカットの美人さんは、腰に巻いたひもを指差したけど、グリップがあるので鞭のようだ。
年下も行けるからって何が行けるのかな?
次はルセリアさんの斜め後方に常にいるひょろ長く、繊細な感じのイケメンさん。
「私はサブリーダーのベッカルだ。見ての通り黒魔術を得意とする」
あまり多くを語らない人のようだ。
見ての通りか分からないけど、魔法使いというのだけは分かる。黒魔術を使う人特有の何かがあるなら教えてください!
「次は俺だな。タンクのゲイリーだ。回復役を担っている。坊主、宜しくな!」
僕の背中をバシバシ叩いてくる。痛い・・・
「俺はいいや」
「駄目だ。真面目にやれ!」
「ヘイヘイ。ローグのゾーイだ。なあ、この町のお勧めの娼館って有るか?」
僕は首を横に振る。
「使えねぇなぁ」
「ゾーイ!少年を変な道に引き込んだらチョン切るからな。次は少年だな」
あっ!大剣使いのおねえさんが頭を叩いてい黙らせた。
「えっと、僕はバンスロット、15歳です。ショートソードを愛用し、ソロでやっていて、この前ランク8になったばかりです」
「先ほどから気になっていたが、やはり1人なのか?」
「バンスロット君?1人でダンジョンをクリアするなんて、相当な覚悟があったのだろう?」
ルセリアさんに続いてシンディーさんが聞いてきた。彼女の声には好奇心と同時に、冒険者としての深い理解が感じられた。
僕はこの人たちに真実を話そうと思った。
「実は、奴隷として売られる少女を助けるためにお金が必要で、6日以内に500万g必要なんです。用意できなかったら性奴隷として売られてしまうんです。それが僕をダンジョンに駆り立てている理由です」
「ほう!?奴隷に入れ込んでるってか?相当な美人なんだろうな?女なんて知りませんって面しといて、性奴隷を買ってうっふんあっはんと、しっぽりやろうってか?」
ゴツン・・・
ゾーイさんがルセリアさんからげんこつを食らった。
「こいつのいうことは話し半分に流してくれ。それはともかく、その女性は知人なのか?」
「いえ。たまたま彼女が奴隷商に連れてこられた時、馬車から引きずり下ろされているところに出くわしたんです。その時泣き叫んでいて、あの涙を見たらどうしても助けたいって思って、奴隷商さんに聞いたら何故か7日待ってくれることになり、お金を用意できたら原価で売るとまで言われたんです」
彼女は一瞬、驚いたような表情を見せたが、すぐに温かい笑顔に変わった。
「君はお人好なのだな。でも、その純粋さが君の強さなのかもしれない。奴隷商は普通そのような提案はしないのだがな」
「そうなんですか?僕を試しているようなことを言ってはいましたが」
「何と言われたのだ?」
「はい。何でもギフト持ちと言うのは見込みがあるから、お金を用意できるのなら先行投資とか言っていました。僕にはギフトがあるだろうと、そう言っていましたから」
「少年、ギフト持ちだと知られたのだな?」
「えっ?」
「奴隷商に簡単に引っかかるなと言われなかったか?顔に出ているぞ」
「そ、そんな!やっぱり僕って分かりやすいんですか?」
「僕はギフトを持っています!と札を掲げているかのようだぞ」
「そうなんですね。奴隷商さんにカマをかけられて引っ掛かっちゃいまして、気をつけるように言われたんです。でもまあ、無理そうなので、逆に大々的に伝えているんです。なので大丈夫なんですけどね。金策の関係でギルドの受付嬢さんたちに伝えているので、それなりに広まったはずなんです」
「そ、そうなのか。ちなみに聞いてもよいのだろうか?」
「あっはい。僕の力は女性の味方で、ずばり!体重を減らすことが可能なんです。僕の金策の1つはこの体重を減らしてお金を得るということなんです」
「ちょっと君、詳しく話をきかせなさいよ!」
オシーリスさんが即座に反応し、僕は窒息しそうになった。
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