第9話 初最古のダンジョンの戦い

 深呼吸を一つするとドロップを回収し、ホブゴブリンの魔力残滓を後にしてさらに奥へと進む。


 僕の使っているメインウェポンである魔鋼鉄の剣について、少し説明しておこう。


 まず、鋼鉄の剣と魔鋼鉄の剣の違いは、魔法耐性の違いにある。

 鋼鉄の剣だと魔法を弾けず、受け止めてしまうことにより折れてしまう。しかし、魔鋼鉄の剣は魔法を弾く事ができるので、魔法を使う相手に対しては必須だと言われた。


 武器屋のお兄さんにダンジョンに入る相談をしたところ、僕の剣は魔鋼鉄の剣なので、3階層の入り口辺りまでならこの装備で行けるとのことだった。そのため、2階層に来ているのだ。アイシアさんは僕がソロでダンジョンに入るのを絶対に反対するから、まだ話していない。




 しかし、そんな歴史の断片に心奪われている場合ではない。このダンジョンは危険に満ちており、油断は禁物だ。


 2階層に入ると、空気が一変した。湿度が高く、視界を遮る霧が漂い始めた。音も鈍く響き、足音さえも不気味なほどに響き渡る。


 2階層に足を踏み入れるとこのダンジョンがなぜ最も古いとされるのか、その理由の一端に触れたような気がしていた。壁には古代文字が刻まれ、時折見かける壊れた兵器や骨は、かつてここで何が起こったのかを物語っている。実際には、戦争の跡地にダンジョンができたため、その時に転がっていた物がダンジョンに取り込まれたという説が有力だ。


 この層は、より強力なモンスターが潜むと聞いていた。


 その話を裏付けるように、突然魔法の光が闇を切り裂き、僕の方へと襲い掛かってきた。反射的に身をかわし、放たれた方を見ると、そこには人間の形をした魔物が立っていた。見た目は魔法使いのようだが、その目は生気を失い、ただ闇に仕える存在と化している。


 人にそっくりな魔物だと分かっていても、抵抗を感じる。しかし戦いは避けられない。僕は剣を構え、相手の動きを見極める。奴の魔法は強力で、一瞬の隙も許されない。しかし、僕もただ立ち尽くすわけにはいかない。何度目かの魔法を剣で逸らすと、チャンスと見て一気に間合いを詰め、全力で剣を振り下ろす。【見切り】が反応して攻撃を避けて致命傷を与えることができた。


 一瞬の静寂の後、魔法使いのような魔物は倒れて消えていった。


 息を整えると同時に、この勝利が僕に自信を与えてくれる。しかし、これはまだ序章に過ぎない。ダンジョンはさらに深く、未知との遭遇が待ち受けている。僕は剣を握りしめ直し、未知への一歩を踏み出す覚悟を固めた。それは冒険者としての僕の使命であり、この謎多きダンジョンの奥深くへの挑戦でもあった。


 古のダンジョンでの挑戦は、想像以上に厳しいものだった。このダンジョンの最到達階層は12階層で、何階層まであるか分かっていない。他のダンジョンでは15階層が最到達との記録があるが、攻略不可能と言われている。


 しかし、僕は僅か2階層目で自分の限界を既に感じていた。ここでの魔物は、質より量で襲い掛かってくる。ランク8に相当する魔物たちが、あらゆる方向から一斉に襲い掛かってくるのだ。魔核やアイテムを拾っている最中にも関わらず、次々と新たな敵が現れる状況は決して楽なものではなく、その日はまだ3階層の入り口に到着する前だったが、撤退を余儀なくされた。


 ギフトでほとんどステータスを上げず、ほぼ本来のステータスで挑んだ結果だった。もう少し先に行けるかと思ったが、これ以上はステータスを上げざるを得ず、万が一の危機に備え、命の危機に陥らない限り宿の部屋で落ち着いた状況で行うことを決めた。


 街に入りギルドへ向かっている時に、ふと目に入ったのは奴隷商の馬車だった。その馬車から降りてきたのは、いや、引きずり出されていたのは1人の美しい少女。彼女は明らかに嫌がっており、「嫌!誰か助けて!」と泣き叫んでいた。僕はその様子に衝撃を受けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る