第5話 剣を受け取る

 アイシアさんの勧めもあり、オークから手に入れた剣を研いでもらうため、ナイフを買った武器屋に預けようと、武器屋の扉を開けたんだ。


「らっしゃい!よう坊主、久し振りだな!生きていたのか!」


 20代行半のおじさん、ごほんごほん、お兄さんはスキンヘッドの筋骨隆々な元冒険者。

 足を喪って引退してその後父親の武器屋を継いだ変わり者なんだ。


「この剣を直して貰いたくて」


 僕は剣を差し出した。


「何だこれは!坊主、剣を何だと思っていやがる!」


 いきなり怒鳴られた。


「ちょっと待ってください。これは今日倒したオークが持っていた剣なんです。多分死んだ冒険者が使っていたのだと思うんですが、直した方が安ければ、ナイフからショートソードにしようと思ったんです」


「何だよ、早く言えよ。怒鳴って悪かったな。お詫びに安くしとくよ。どれどれ・・・」


 剣の状態と僕を交互に見ていた。


「安くと言っても、金貨2枚は欲しいが大丈夫か?僅かに魔鋼鉄を織り込んだ鋼だから明日には直るぞ」


「はい。お願いします。因みに買えばどれくらいなんですか?」


「これは新品なら金貨10枚だな。このまま売れば素材として金貨3枚の価値だ。魔鋼鉄の剣としたら入門編だからな。ほら、そこの駆け出し用の鉄のショートソードは金貨2枚だ」


 僕はフムフムと頷く。


「元の持ち主は9-8級だったと思うぞ。その次のランクの武器だと純度の高い魔鋼鉄を使ったので金貨30枚はするからな」


「ひえぇぇぇ!そんなのダンジョン潰さないと買えないじゃないですか!」


「まあそういうこった。この町の周りにも時折ダンジョンが発生するからな。まあ坊主も頑張れよ。でもな、坊主の身の丈にあった魔物を倒すようにしろよ。そうしないとこの剣の持ち主と同じ末路を辿るからな」


 お金が沢山入りウハウハだったのに、あっという間に金貨3枚の出費・・・


「どうせ止めても君は無理をするのでしょ?だったら今日の稼ぎはちゃんと装備に使いなさい。宿代以外使うつもりでね」


 アイシアさんからそう言われていて、結果そうなりそうなんだ。はあ・・・


 本日のリザルト。 

 収入

 魔物討伐素材 40000g

 依頼達成報酬 15000g

 計 55000g


 支出

 ステータスチェック費用 10000g

 剣の修理代 20000g

 回復薬 3000g

 剣帯 5000g

 左手用 手甲 10000g

 宿代 4000g

 食費 2500g

 53500g

 収支 +1500g


 一瞬でなくなったよ・・・


 食費はこれまで以上必要とし、ほぼ2人前となる大盛りを頼んだんだ。

 腹がはちきれんばかりに食べたけど、生まれて初めてかな。

  

 翌日は、朝から街の中を走り、宿の裏庭で腕立て伏せや、ナイフでの素振りをし、大目の食事をしいつもの下水掃除の仕事を受けた。


 相変わらず臭い!ひたすら臭い。

 いつも以上にはかどったけどね。

 パラメーターを上げたからかな?壁にへばりついた泥や中々取れない塊をシャベルで砕いていく。

 剥がした汚れは処理槽となる池に流れ着き、そのうちスライムが食ってくれる。


 ・

 ・

 ・


「早かったですね!」


 いつもの役人が桶に貯めた水を僕にぶっかける。

 これをやらないととてもではないけど、町中を歩けない。


「この前魔物を倒したらレベルが上がったようで、力が増えたからだと思います」


「おお!バンさんもついにレベルアップですか!」


「ええ。冒険者になって1年も掛かりましたが、ようやくです」


「となるとこれからはこの仕事も受けてくれなくなるのですね。バンさんがやった場所は丁寧に汚れが剥がされているので、蓄積するのに時間が掛かり助かっていたんですよ」


「ハハハ。確かに魔物を倒すことができるようになったらいつまでもやるべきじゃないですよね。成り立てで僕のようにパーティーを組めない人にとっては貴重な収入源ですから」


「でもね、1年も頑張った人は見たことないですよ」


「ハハハ。それだけ僕が大変から這い上がれなかったってことですから」


 依頼完了のサインと、道具を戻して武器屋に。 

 


 夕方に武器屋に行くと、他の冒険者もいたけど、臭いから睨んでそそくさと出ていったな。


「おう!坊主か!ちゃんとできてるぜ!」


 剣を受け取ると、まるで新品のように輝いていた。 


「す、凄いです!」


「そうだろう!少ないとはいえ、魔鋼鉄を使っているからな。坊主は今のランクは?」


「はい。昨日9に上がりました」


「そうか。剣に振り回されるなよ。下水掃除でもしてたか?それで坊主は臭いんだな?」


「ごめんなさい。臭いますよね」


「まあ、坊主のように嫌な仕事をする者がいるから町が回ってんだけどな」


 その後ギルドで依頼完了手続きをし、報酬をもらう。


 この日の稼ぎも宿代、食事代、消耗品や服代などで消えてしまう。

 そろそろローブがくたびれてきたので、予備に回し、中古で4000gのを買ったんだ。

 今までのは穴だらけだったから、だいぶ見違えると思う。

 生地も少し厚いから、多少防御力があるかも?


 今日も沢山食べた・・・っぷ・・・




後書き失礼します。


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