第3話 ステータスチェック

 僕は戦いの余韻に浸っていたけど、気配を探り、近くに魔物の脅威がないと判断したので魔核の抜き取りをすることにした。

 息を整えつつ1体、また1体とゴブリンの胸を切り開き、魔核を抜き取って行く。

 道具屋でそれ用の手袋みたいなのが売っていたので、その手袋を装着して剥ぎ取りをしていた。


 でも、オークの方は40kgほどあるから、今の僕の体力では、担いで帰るのは無理だ。

 少なくとも両手が塞がってしまう。

 そこで肉を削ぎ、削ぎ取った肉を食肉として買い取って貰うことにした。

 約15Kg。これなら何とか背嚢にいれて持ち帰れる限界だ。

 一通り解体を終えると、ゴブリンの死体を脇に退けて僕は持ってきた水筒の水で、手とナイフの血を洗い流し、その後帰路についた。


 ギルドに戻ると解体場に行き、オークの肉とゴブリンの討伐証明部位、魔核を出して担当受付の名前を告げた。


 受付でアイシアさんが僕を待っていた。金髪を肩で切り揃えた彼女は、いつ見てもキリッとした美人さんだ。僕はいつものように弟のように扱われるが、心の中ではいつかアイシアさんのような綺麗な人と結婚したいなぁと思っていた。

 実は最近、いや今日彼女の名前を知ったんだ。


「アイシア、オークの査定が終わったぞ」


 誰かがそう告げ、アイシアさんが返事をし、査定票とお金を取りに行ったから名前と顔が一致したんだ。

 今更聞けなかったからほっとしたよ。


「バンスロット君!君、また無茶をやらかしたの?」


 アイシアさんの声には心配さが滲んでいた。


「いや、その、オークとゴブリンが戦っていて、その、漁夫の利で・・・たまたま遭遇したわけでして・・・」


 僕は言葉を濁しながらも、オークとゴブリンの討伐に成功したことを伝えた。


 アイシアさんは一瞬怪訝そうな顔をしたけど、すぐに笑顔に戻った。


「まあ、無事で良かったわね。でも、気をつけて。あなたはまだ子供なのよ」


 そう言ってくれたけど、僕も立派な成人なんですけど!・・・

 それを言う雰囲気じゃなかったから、ハハハと誤魔化すしかなかった。


 買取査定はこうなった。


 ゴブリン

 魔核 1000g X 10=10000g

 討伐証明部位 1000g X 10=10000g


 オーク

 魔核 3000g

 討伐証明部位 2000g

 肉 1kgにつき1000g、15kg扱いで15000g

 合計40000gを手にすることができた。


「累計でゴブリンを10体以上倒したから、これで君のランクも上がるわ!おめでとう!10級から脱出ね」


 アイシアさんがニコリと微笑んで言った。


 僕はランクアップの話をアイシアさんから聞くなんて驚いた。

 そして、アイシアさんは僕の目を見て提案をしてきた。


「ステータスチェックをしてみない?オークを倒したのだからレベルが上がっているかもしれないわよ」


 そう勧めてくれた。


 注)ステータスチェックは専用の部屋で行われる。

 その場で本人はギフトの有無を含め見えるのと、冒険者カードの裏に表示されているステータスも更新される。ただ、そこにはギフトは表示されないがスキルは記載されている。

 ただ、表示面積の都合、スキルは4つまでしか記載されないが、受付カウンターにあるカード読み取り器では冒険者カードに記録された全てが見える。

 ただし、冒険者カード内容の更新は、ギルドにある魔道具にてのみ行われる。


 ・

 ・

 ・


 僕のレベルは3に上がっていた。

(ステータスはこの話の最後に記載)

 そして、新たにスキルを得ており、それも確認できて僕の冒険者カードをアイシアさんは目を見開いてみていた。


「これは・・・驚いたわ。君、スキルを得ていたのね。ひょっとしてギフトも得たの?」


 アイシアさんの言葉に僕は照れくさくなりながらも、嬉しさを隠せなかった。

 これからが、本当の冒険の始まりだ。アイシアさんとのこれからの関係にも、少し期待してしまう。


「えっと、言わないと駄目ですか?」


「ううん。マナー違反ね。大丈夫。無理に聞かないわ。君が何かのギフトを得たことだけ分かれば良いの」


「えっ?得たなんて言っていないですよ」


「君の反応がギフトを得ていることを物語っているの。もちろん私は言わないわよ。だから秘密にするならもう少し態度に出ないようにしなさい!それと【見切り】は君にぴったりね。資料室にスキルやギフトについての書物があるから見てみなさい。見たら別の項目をしばらく開いてから閉じなさい。最後に見ていたところは分かりやすいから、前に見た人が調べたギフトだと思われるから」 


「あ、ありがとう。うん。僕、確かに得たよ」


「こら!簡単に引っ掛からないの!私はカマを掛けただけなのよ!あれだけの数を倒したのだからひょっとしたらとは思ったけど、気を付けなさい。君が何を得たのか教えて貰えるよう、私も信頼されるように頑張るから」


 目をうるうるさせてそんなことを言ってきたのでつい話し掛けた。


「僕の得たギフトは「ストップ!」」


 アイシアさんの手が僕の口を塞いだ。  


「言ってるそばからもう!君、女の子耐性無さ過ぎよ!今のってわざとなのよ。これほどとは・・・いいこと、こうやって言われても、心から信頼し、背中を預けるに値する相手以外に話しちゃ駄目よ!よくあるのは、お前のギフトを教えなきゃ仲間にしてやらないぞ!って言う人が多いのよ!そんな人に知られたら最後、いいように使われたり使い潰されたりするだけよ!分かった?」


 僕はぐうの字もでなかった。

 こんなに怒られるとは思っていなかったので凹み、シュンとなった。


 そんな僕の手をぎゅっと握ってくれた。


「きついこと言ってごめんなさい。昔知り合いがギフトを簡単に周りに話して、最後は死んだの。だから君にはそうなって欲しくなくて。コホン。それはそれとして、レベルアップおめでとう!」


 僕は女の人に手を握られ、恥ずかしくて顔を真っ赤にしていた。

 そうそう、ギフトについて調べるついでに、ギフトの下にある【ポイント】についても調べたい。

 これを今聞いたら、何のギフトを得たのか話したも同然だと思う。

 アイシアさんになら話しても良いんだけど、今話したら正座させられる自信がある。

 今は大人しく言うことを聞いておこうと思う。



 一年前冒険者になった時のステータス

 名前 バンスロット

 身長 160cm

 体重 50kg


 職業 冒険者

 レベル 1

 ランク 10

 力  20

 体力 22

 知力 26

 魔力 50

 敏捷 50

 スキル 

 なし


 ギフト

 なし



 今回のステータス

 名前 バンスロット

 身長 165cm

 体重 54.2kg

 職業 冒険者

 レベル 3

 ランク 9

 力  27

 体力 29

 知力 34

 魔力 54

 敏捷 60

 スキル 

 見切り


 ギフト

 ステータス操作(体重)

 ポイント 30


 注)ギフトより下の項目は冒険者カードに記録されない。


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