第8話 ドワーフは侍に憧れるらしい
「うほほほほほほほい!」
「「え?」」
「い、いや、ごめんなさい、つい興奮してしまって……ってキリコさんもリンさんもドン引きしないでください!」
幸運は続く。
「拙者に何が視えたでござるか?」
本人は遥か西方の島国『
名前 :リン・アンバライト
種族 :エルダードワーフ
年齢 :96歳
職業 :軍人
階級 :上等兵(工兵)
適職 :鍛冶師/鉱夫/細工職人
婚姻 :ナシ(未通)
ギフト:“創作手”
強み :錬金、鍛冶、酒
弱み :エルフ
HP/710 MP/450
STR/74
VIT/78
INT/45
DEX/97
AGI/16
LUK/77
ERO/68
love/♥♡♡♡♡
B116-W78-H112
「えっと、その刀はあなたが打ったものですか?」
「刀を知っているとは! これはな、師匠が打ったものでござるよ。ほれ」
袴差しから鞘から抜き、鑑定を行う。
銘 :歌仙兼定
種 :刀(打刀)
STR/+2
なかなかの
「ここで鍛冶はしてないのですか?」
「見ての通り、そんな余裕はないでござる。せいぜい皆のナマクラを研ぐ仕事ぐらいで……」
鍛冶場は絶対に必要なものだが、窯をつくる技術や鉱石もないらしい。
彼女は刀匠に憧れ、多くの時間を刀鍛冶に使ってきたそうだ。
「農作業に鉄器は必須です。よい道具や武器を持たせることができれば狩りの効率も段違いになりますし、生活は劇的に変わります。ただ……問題は炉と燃料と材料ですね……」
「……全部でござる」
「いえ、結局は鍛冶師がいなければ意味がありません。一緒に考えてもらえますか?」
「もちろんでござるよ」
僕は森の入口に散乱する黒い物体を思い出した。
石炭なら最高だ。
幸い森の密度は濃いので木炭でもいい。
探索リストに露天の鉱床を乗せよう。
「ミューさんに探索をお願いしています。鉱石が見つかるまでの間は、引き続き岩塩の採掘とその精製を二人以上に指導してもらってもいいですか?」
「わかったでござる!」
最悪、木炭でも越冬しやすくなる。冬を越すために半歩前進した。
あとは農夫と建築士、医者はできるだけ揃えたい。
特に畑は早めに種を蒔かないと間に合わなくなる。
「キリコさん、この4人を探検隊の隊員にする予定です。通達をお願いできますか? 僕は探索リストを作ります」
「はい。……え?」
彼女は驚きの表情で手を止めた。
隊長 :ミュー 探索/調査
副長 :キリコ 斥候/補佐
戦闘員:イライザ 守衛/戦闘
輜重兵:ユウ 管理/運搬
衛生兵:アレクサンドラ 衛生/治療
「私が……メンバーですか?」
「はい!」
全員VIT(スタミナ)が70以上の体力自慢を集めた。
ユウさんは牛族の獣人でVITは92、そのうえ兵站の管理能力に長けている。
アレクサンドラさんはドライアドで貴重な治癒魔法を使え、癒し系だ。
労働力の四分の一がしばらく居なくなってしまうが、リターンは大きいはず。
2週間を目途に1回目の探検隊を組織した。
ほんとうは
「チュール殿、このような重要な任務に私が同行しても宜しいのでしょうか?」
キリコさんは無表情ながら困惑しているようにも思えた。
「重要だから最高の人材で固めたんですが……」
「……重用されるような種族では……」
実はこっそりとエレナさんにキリコさんの事情を聞いていた。
五百年ほど前、半妖精族のエラドリンは魔族と組み、多くの獣人やエルフ、ドワーフなどを見殺しにした。さらに漁夫の利を得た人族が多くの土地を支配することになったが、その責任もエラドリンにある、という。
『私たちは当時のことを知らない世代ですのよ。それでも種族の記憶には刻まれていますわ。彼女が有能なのは誰もが知っているけど……あまりお近づきになりたくありませんわ』
完全に忌み嫌われている種族。
正直、子孫の彼女には関係ないし、逸話が正しく伝わっているとは僕は思えなかった。
「キリコさんの過去じゃありませんよ。ご先祖の過ちです。それをいうなら狡猾で抜け目ない人族こそがもっとも嫌われていますから。……どうします? 嫌なら外しますが……それでも僕にはあなたが適任だと信じています」
彼女の
無表情かと思っていたが、意外とそうでもないらしい。
「……わ、わかりました。お任せください」
うん、彼女なら大丈夫!
。
「では、いってくるニャ!」
見送りは全員でおこなった。
不安な表情を一切みせないし、常に明るいミューに隊長は適任だったと思いたい。
「キリコ少尉は……よかったですの?」
エレナさんが小声で訊いてきた。
相変わらずいい香りとエルフ特有の清潔感が浮いている。
「ん……わかりません」
「はぁ?」
「きっと彼女なら大丈夫です。あのメンバーなら気兼ねも必要ないでしょうし」
「知らないですわよ……イライザは親の仇ぐらいに思っているのに、キリコ少尉のこと」
「ええええーー! もっと早くいってくださいよ!」
「だって聞きに来なかったじゃありませんか!」
「そんな……」
背中に冷たい汗が伝わったころには彼女たちの姿は見えなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます