第3話 ダークエルフは面倒くさい
「邪魔なのは当たり前だろう。あれを置いたのは何をかくそう私だからな」
胸をはって偉そうにしているが、あんな大木にしなくてもいいのに。
とにかく彼女のステータスをいそいで鑑定する。
名前 :アストリッド・ゴルヴァル
種族 :ダークエルフ
年齢 :197歳
職業 :軍人
階級 :上等兵
適職 :粉引き屋/操舵手/重戦士
婚姻 :ナシ(未通)
ギフト:“悪手”
強み :悪環境に順応
弱み :弓矢、魔法が苦手、馬に乗れない
HP/750 MP/2
STR/93
VIT/90
INT/17
DEX/12
AGI/26
LUK/27
ERO/64
love/♥♡♡♡♡
B89-W64-H88
軍人? 彼女も先遣隊の隊員なのだろうか。
呪術や弓が得意なダークエルフとは思えない脳筋ステータス。
ここは相手をしないほうがいい、と直感が警告している。
「おい! 貴様! どこへいく!」
「別のルートから行きます」
「それでは塞いだ意味がない。ここを通れ」
「でも塞がっていますよ」
「だから、私を倒して……ははん。さては貴様もヤツらの一味だな?」
「一味?」
仰け反るように僕を見下ろしている。器用な人だ。
「害なすコソ泥どもだ。他の奴らはオメオメと逃げたがな」
「こんな辺境にコソ泥ですか?」
「ははは。貴様もここにくるまでに見ただろう? 偽装した奴らの残骸を」
あれ? 偽装?
ギルマスがいっていた物資や人材が開拓地に届かない……って、まさかだよね?
「因みに彼らは馬車に乗っていませんでした? 資材をたっぷり積んだ」
「資材? 略奪品か。ほれあっちにあるぞ」
木々の合間に山積みの木箱がみえる。
「……上官に報告はしていないんですか?」
「コソ泥程度の撃退は誇れるような戦果ではない。戦利品はそろそろ持って帰るがな。ははは!」
「はぁぁぁぁぁ……」
「何をしているコソ泥。さっさと掛かってこい!」
「いいですか、このままでは討伐隊が派遣されますよ! ほんとうにさっきからなにイキっているんですか……アホすぎて……今すぐ上官を呼んでください!」
「なんだ貴様! 急に吠えやがって。なにが来ようと返り討ちにしてくれるっ!」
だめだ、こりゃ。
「えっと、あの……」
「なんだ。私はアストリッド。アスタでいい」
「ではアスタさん、ここに何回か、資材を乗せた馬車や商人が来ているはずですが、どうやってコソ泥だと判別したんですか?」
アスタさんは自慢げに手を広げた。
馬車の面影もない残骸が散らばっている。
「勘だな」
僕が睨むと少しだけ真剣な表情になった。
「ちゃ、ちゃんと用件を訊いたが……どいつもこいつも
だれだ、この人を見張りにしたのは。
……とたんにお腹が痛くなった。
「か、開拓村へはどうやって物資を運んでいたんです?」
「物資とはなんだ?」
「……なんだじゃありませんよ! 外から物資や必需品がこなければ成り立ちません!」
「ははは。そのための戦利品だ」
嘘だろ……。
まるで盗賊だ。
噛み合わないにもほどがある。
その後、小一時間ほど説明し、やっとマズいことをしでかしたことに気が付いたのか、急に黙り込んでしまった。
倒木を二人でどかし、アスタさんを乗せ、馬車に鞭うつ。
「こ、殺される……」
「さっきから何小言をいっているんですか」
「なぁ、チュール。私は殺されると思うか?」
「僕が上官なら半殺しですね」
「ひぃぃぃぃ!」
「……」
しばらく走ると急に森が開け、倒れそうな木柵と大きな天幕がバラバラに建てられている場所にでた。
集落というには粗末で、開拓村を名乗るには五十年は早そうだ。
彼女に責任者を呼ぶように伝えると集落に消えた。
しばらく待っていると僕を手招きしているようなので馬車はそのままにアスタさんを追う。
小さな広場のようなところを抜けると遠くに誰もいない荒れた畑のようなものがみえ、手前には水気を感じない作り途中の井戸のようなものがあった。
ひときわ大きな天幕に案内される。
「……今、部隊長がここへくる。中へ」
僕はなぜかこの村がすでに自分のことのように感じていた。
「待たせたな」
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