第145話 装備更新の話
「卓也さん、これって通常種の魔物なんですよね?」
そう尋ねるフランシーヌの前には、フランシーヌが切り伏せた体長が5mはある魔物が横たわっている。名称はヘルハウンド、地獄の猟犬。魔導アーマー越しなら見た目はドーベルマン。口から吐息に交じって炎が漏れていて、火こそ吐かないが噛みつかれると炎上効果が発生する。
俺たちはついに最上級エリアの進出に成功した。
格段に魔力の濃い地域だからだろうか。出現する魔物は更に大きく、強くなっている。
基本ステータスが、兵器や魔導アーマーを用いて対する事を想定していている為か、上級エリアと比較すると格段に高くなっている。その為、これ迄の様に迎撃装置で一撃と言う訳にはいかなくなる。
拠点もある程度の規模や、魔物に対する十分な対策が必要になってくる。
まず、射程の長い設置型の大型ライフルや、速射砲の設置。各種属性に対応する為の魔導タワー。そして射程は短いが弾の供給が容易な大型魔導弓。そして火力に勝る対地ミサイル等を、各種織り交ぜて設置していく。射程や属性の異なる迎撃兵器を取り揃える事により、柔軟に対応をしていく訳だ。
火器はどうしても火薬や燃料の消耗がネックになるので、その点が難点だ。
上級エリアなら、10m四方の簡易拠点でも平時なら十分に対応が可能だった。だが、最上級エリアでは最低でも50m四方の城壁で囲わないと、攻撃の密度が足りない事がある。なにせ、最上級エリアに出現する魔物は通常種でも容易にドレイクに勝るからだ。
鉱床自動採掘設備で採取できる資源の量が上級エリアの10倍になるが、何せ採掘施設を防衛する為に構築する拠点の手間も10倍位にはなるから、効率と言う意味ではそこまでは変わらない。ただし、ドラゴンの討伐さえ行う事が出来れば技術レベルの上限がアンロックされるので、迎撃装置の更新が可能になる。そうすれば効率が一気に跳ね上がる。
と言う訳で、最上級エリアでは、まずはドラゴンの討伐を目指す事になる。
まぁ、鉱床自動採掘設備自体は地下でも設置できるし機能もする。だから、昔から採取の基本は地下での活動になる。
到着したその日のうちにリヴァイアサンの解体まで完了したので、その日の内に装備更新の為、魔導アーマーのクラフトをセットした。今日中には作成が完了する。
今の兵装でも問題は無いだろうが、安全マージンはしっかりと確保しておきたいので、今日は拠点周りの整備と久々に地下へと掘り進める事にした。
コモン等級のレシピしか無かった頃、ドラゴンを目指して内陸へと歩を進めるのは結構大変だった記憶が有る。少し進んでは新しい拠点を構築して。魔導アーマーで一気に駆け抜けると、魔物に囲まれて死んでしまうのは何時もの事だった。
結局単騎で戦うよりも、十分な迎撃装置を用意した拠点出迎え撃つ方が簡単なので、迎撃装置で討伐した魔物の素材を採取したり、鉱物資源を採取したりして装備を調えつつ、徐々に歩を進めて行くのだ。
最上級エリアに出現する大型種の魔物からなら、レベル60迄のアンコモン~レア等級迄のレシピなら低確率でドロップするから、徐々に装備を更新する事が可能だ。
だから、ドラゴン討伐はレア装備一式を揃える位が目安になる。
今はレシピも揃っているから、そんな手間を掛ける必要は無い。
それに地下なら魔物の襲撃は殆ど無いから、資源探査装置で周辺の採掘地点を走査し、地図のマーカーを目印にして地下を掘り進めて行く。該当箇所に辿り着いたら、地下に十分な空間を設けて大型自動採掘施設を設置する。これをひたすら繰り返して行くのだ。
エターナルクラフトでは、地下に掘り進めると、深度に応じて採掘出来る資源に確率が変動する。一方で、鉱床自動採掘設備の様な採取系大型設備は、深度による影響を受けない。ただし、探査装置は地上で使う必要が有るが、1回の走査でざっと300カ所のマーカーが発見出来るので、地上で探査装置を使用する頻度はそこ迄高く無い。
今日1日位ならある程度地下へと掘り進めて、マーカーを目指して横に掘り進めるだけで問題は無いだろう。最上級エリアともなると、希少鉱石の確率も結構高くなるから、オリハルコンもたまに掘る事が出来た。運よくミスリルの鉱床も発見する。埋蔵量は上級エリアの10倍だから、1000~10万の間。俄然期待が出来る。
因みに最上級エリアでは地下でも魔物の襲撃が発生する。防衛設備を設置せずに鉱床自動採掘設備を設置して後日成果を回収しに行くと、設備が破壊されている事がそこそこの確率で発生した。犯人はワーム系の魔物だ。こいつらは地下を好んで出現するし、いきなり床下や壁から出現するので迎撃装置による対処が難しい。
だから、今日は採取自体が目的と言うよりも、何が採掘出来るのかを確認する事がメインの目標となる。破壊されなければ御の字。破壊されたとしても何が採掘出来るのかは確認済みなので、ドラゴン討伐を完了した後に迎撃設備を更新して地上で改めて採掘を行うつもりだ。
装備の更新と言えば現時点でクラフト出来る最上位の武器は、魔石(大)をはめ込んだミスリル製の魔剣だ。魔石が大きくなるからか、両手持ちの大剣になる。
コモン等級の必要素材は、ミスリルのインゴット×20、魔石(大)×1
これをレジェンド等級でクラフトするなら、ミスリルのインゴット4000、魔石(大)×20。
総ミスリル製だけあって、ミスリルが稀少枠では無いので必要数は200倍きっちりと要求される。因みにミスリルのインゴット1個で鉱石が5個要求される。
これを、今クラフト中の聖騎士級サイズでクラフトしようと思えば、16倍。ミスリルのインゴットが脅威の64000。鉱石なら32万個必要だ。
レジェンド等級の魔導船に必要なミスリル鉱石が10万個だったので、剣1本に必要なミスリル鉱石はその3倍強。ちょっと笑いが出る量が必要になる。
だから、さすがにドラゴン退治にはそこ迄労力を掛けずに挑もうと思っている。
リヴァイアサンのお陰で聖騎士級の魔導アーマーがクラフト出来るので、基礎ステータスでレジェンド等級の魔導アーマーを上回るから、仮にコモン等級で装備を固めても十分な安全マージンを確保する事が可能だ。
それに、最初にドラゴンを討伐した時と違って、今の俺はNPCの助力が頼める。しかも、エターナルクラフトで連れ歩けるNPCは1人だったが、ここでは制限が無い。
レジェンド等級の性能は、コモン等級の2.5倍。数字上はたったの2.5倍だが、実際には基本値が違えばダメージ係数も変化するので、最大で10倍まで性能差が生じる。
裏を返せば、損害を考慮しなければ同等クラスのコモン等級でも10人集まれば同じ位の火力は出せる事になる。数は暴力だ。1人が2人、2人が3人になるだけで、実際の戦力は何倍にもなる。流石に聖騎士級の魔導アーマーを10騎クラフトするのは無理だが、それでもフランシーヌとマリーズが加われば心強かった。
因みに、実際には火力だけでは無く速度も相応に早くなるから、フランシーヌ程の実力者がレジェンド等級の魔導アーマーを駆れば、恐らくコモン等級の同じクラスの魔導アーマーが100体居ても相手にならないのでは無いだろうか。
魔導アーマーの性能に加えて、ぶっちゃけ乗っている俺がコモン等級の搭乗者だとするなら、フランシーヌ自身がレジェンド等級の搭乗者だと思う。その性能差は、少々武器の等級を上げた所で覆る物では無い。
翌日、ついに聖騎士級の魔導アーマー3機のクラフトが完了した。
フランシーヌとオデットが今まで使用していたDLCの重騎士型魔導アーマーのモデルとなったアニメで、2期に登場した上位モデルだ。
「それじゃぁ、フランシーヌとマリーズは今までと同じで良いよね?」
「ありがとう御座います。私が何としても仕留めてみせますね!」
「護りは任せてください!」
アタッカーはフランシーヌ。マリーズはディフェンダーを担当してくれる。ドラゴンの属性自体は無属性なので属性による有利・不利は存在しないが、最大の攻撃手段であるブレスは火属性を帯びている。マリーズの得意な魔術は氷で五行における属性は水。相剋関係で水は火に対する相性が良い。ドラゴン戦ではもう1つ秘密兵器を投入する予定なので、懸念のある防御をマリーズにお願いした。
そして、もう1機。
「本当に、私がこれを頂いても宜しいのでしょうか?」
重騎士級魔導アーマーで体高が6m。聖騎士級は8mなので、迫力は俄然増している。
初めて見る聖騎士級の魔導アーマーを見上げて、呆然とした表情でオーギュストさんがそう尋ねる。
「勿論です。頼りにしてますよ、オーギュストさん!」
魔導アーマーは搭乗する人によって性能に差が生じる。なら、大陸でも有数の戦力であるオーギュストさんを、何時までもアマテラスで遊ばせる理由も無かった。
こう言っちゃなんだが、アマテラスの正騎士どころか准騎士であっても、同じ性能の魔導アーマーに搭乗して対戦したら、俺が勝つのは難しいのでは無いだろうか。
まぁ実際にはクラフトモードで戦えば俺にはゲームの強制力が働くので、第三者から見ると超人的な動きをしているらしい。だとしても、どうしたって限界はある。なら、俺よりも戦力に勝るオーギュストさんにもう1機を任せるのは最善では無いだろうか。
メインアタッカーのフランシーヌ、ディフェンダーのマリーズ、戦場の経験が豊富で柔軟に立ち回れるオーギュストさん。この完璧な布陣でドラゴン討伐を目指す!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます