クラフター。異世界に紛れ込んだ俺はクラフト能力で立身出世を目指す?でも好きに生きて良いと言われたので、好きなクラフトをして過ごす事にします。
第116話 バスティアン一行トウカ訪問2日目 アマテラスの案内
第116話 バスティアン一行トウカ訪問2日目 アマテラスの案内
翌日は、朝から皆をアマテラスに案内する事にした。
転移門はあえて使わず、歩きで案内をする。トウカの西側は何ヵ所か城壁を撤去して中間地点への出入りを可能にしている。中央には石畳を敷いてトウカとアマテラスを結ぶ広い道を引いているので、その通りを歩いてアマテラスへ向かう。
城壁から50m程離れると、城壁と平行に等間隔で巨大ツリーが並んでいる。アマテラスに向かって左側には一面の綿花畑。右側には領民が自ら開墾した畑が広がっている。更に進むと、今度は樫の木と油椰子の木が生えた人工の林が広がっている。
朝も早くから綿花を摘む子供、畑を手入れしたり樫の木を伐採したりする人々と、みな勤勉に働いているのが見える。
カコーン、カコーン、ドーンと、驚く程あっと言う間に木が伐り倒されたのを目敏く見つけたバスティアン殿下が、驚愕の余り目を大きく見開いた事に卓也は全く気が付かなかった。そもそも、トウカやアマテラスで目にするアレやコレやを考えれば些細な事だったが。
2kmに渡る中間地点を抜けると、いよいよアマテラスを大きく囲む城壁だ。アマテラスを幅1kmの外堀が囲い、外堀を更に高さ3mの城壁がぐるっと囲っている。通りに接続する形で幅10mはある橋を架けている。
橋を架けるに当たって1つ問題があった。それは、エターナルクラフトでは緩やかな傾斜をクラフトする事が出来ないと言う点だ。アマテラスは周辺から見ると3m高く造成をしている。つまりこの中間地点からアマテラスまでは高低差が3mある。理想はこの2点を結ぶ1㎞を緩やかな傾斜の橋で接続する事だが、あいにくエターナルクラフトではそんな丁度良い傾斜のブロックを置く機能が無い。
そこでハーフブロックを混ぜた緩やかな階段を設置してアマテラスに高さを合わせて、後は石橋を均一の高さで掛ける。階段部分の左右には、手作業で傾斜を作成して貰った。見た目は階段脇に設置されたバリアフリーのスロープだ。中央部の階段が幅6m、両脇のスロープがそれぞれ幅2m。大き目の馬車だと通れない幅だが、転移門を通過出来る幅なら大丈夫なので問題は無いと考えている。
橋から落下しない様に欄干、もとい石の柵を設置している。橋から下までは6mの高さがあるので、誤って落ちれば怪我では済まないだろう。その為、安全性を考慮して柵は1.5mの高さで設置した。
まだ水を入れておらず空堀だが、かなり見晴らしが良く景観が良い。
「この橋を渡ると建造中のアマテラスとなります。外堀は今は空ですが、近い将来水を張る予定です」
因みに、外堀は今は雑草が生い茂っている。ここはぐるっと城壁と迎撃装置が囲っていて安全な為、なんと家畜の放牧場として利用されている。今も草を食んだり寝そべったりしている様々な家畜の姿が見て取れる。山羊、馬、羊、牛と、その種類も様々だ。
ちゃんと下に降りる為のスロープも何カ所かに作られている。ああやって領民が世話をしている家畜と比べて、俺が飼っている家畜はずっと柵の中。果たしてどちらが幸せかは判断が難しい所だ。
「ここに水が入れば、随分と素敵な眺めになるでしょうね」
「そうなれば良いなと思って頑張りました」
「これもタクヤさんが?」
「はい。中々大変でしたよ」
そう尋ねたのはマリーズさんだ。その会話を聞いた役人の内何人かは、顔を顰めていた。
トウカですら想像の埒外で、僅か2カ月足らずで建造したとは信じられない。だが、それと比べてもこれは別物だ。聞けば中央部分は5㎞四方。それをぐるっと囲む外堀も1㎞の幅が有る。これだけの規模の土木工事を行おうとすれば、どれだけの時間と工費が掛かる事か。ここにいる役人は、皆それを想像出来る程度には知識もあったし計算も出来た。それは侯爵家の三男坊であっても同じ事。苦虫を嚙み潰した様な顔をしているが、それでも明らかに人外の力の持ち主だと理解せざるを得なかった。
その想いは当然アマテラスへと足を踏み入れても覆るどころか、一層彼らに影を落とした。どうすれば、これだけの事が出来るのかと。
重厚な城壁とそれに繋がる城門をくぐり抜けるとアマテラスが一望出来る。見渡す限り何処迄もまっさらな土地。
「トウカは一時的なものですので、今後こちらを本格的に開発して、町機能を移す予定にしています」
「素晴らしいですね。しかし、何故これ程巨大な町を?」
バスティアンは思わず尋ねた。
「何となく、ですね」
「え?」
「この広さにしたのは、別に何か基準があってでは無いんですよ。ただ、これ位あれば後々どの様な形で町を造るにしても困らないかなと思って」
そう言って、卓也はちょっと照れた様に顔を背ける。
バスティアンは嫌でも気付かされてしまった。つまりタクヤは、何となくでこれだけの町の土台を作れるだけの力が有るのだと。そして彼にとってはその程度の事なのだと。
彼の力がどの様な方向性を持って居るのかは正直解らない。見た目はどう見ても戦いには向いているとは思えないし、知略に長けた人物と言う怖さも感じない。どちらかと言えば平凡、印象としては何処までも普通なのだ。だが、改めてそう感じる印象が逆に恐ろしくてならない。
成る程、アデマール伯爵が絶対に敵に回してはならないと警告を発するだけの事はある。彼の力は決してこれだけの筈がない。土を盛って、土地を造成する。それだけの筈が無いのだ。そう、聖女の出現と共に予見された英雄なのだから。
大陸は、今現在非常に危うい情勢に傾きつつある。急速に力を付けた帝国が、周辺国を次々と吞み込んでいる。大陸全土を戦火が覆うのもそう遠く無いと思われていた。
その時、彼がどの様な立ち位置に居るかが恐らくは戦局を大きく左右するに違いないと、バスティアンは考えた。何としても、彼をこちら側に繋ぎとめねばならない。
その日の午後、改めて交渉の場を設けると、タクヤの意向を確認する。不自然にならない程度で、意向に沿う形にする。余り譲歩をし過ぎると、逆に勘ぐられるだろう。信頼関係を構築するのだ。そう考えると、父の判断は適切であったと今は思う。8等級の認可に、専売品の取り扱い許可。結果的には同じ判断を下した可能性はあるが、あれ程迅速に許可を与える事はいずれも本来であれば考えられない事だ。
「と言う訳で、我々としては移民を受け入れたいと考えています。ただ、今後アマテラスの開発を本格的に進めるので、可能であれば技術の保護や育成に力を入れたい。その交換条件として、この条件で規定数迄の穀物の輸出を請け負いましょう。また、これらの品々は、王家との直接取り引きに限定をさせて頂けないかと考えています」
「そうですね。昨夜振る舞って頂いた酒類はどれも素晴らしい物でした。それに砂糖も。これ程上質なものであれば、今後周辺諸国との交易においても重要な価値を見出す事が出来るかと思います」
トウカの人々が纏めた資料には、今年輸出が可能な品目。想定される市場価格。それに対してトウカが提示できる卸値が非常に解り易く纏められていた。魔物の襲撃の影響で、王国ではこれから冬に向かって食糧が不足し、餓死者が増える事が予想されている。非常に厳しい冬が来る事は解っていた。だが、トウカが提示しただけの穀物が実際に供給出来るのであれば、恐らく耐える事が出来るだろう。
しかも、各地で抱えるには難しい領民を、移民として受け入れる事も提案されている。その交換条件として提示された穀物の価格は破格だった。人身売買とも取れるが、トウカの人々の暮らしを見れば決して悪い話では無い。王国全体で見ても、非常に理に適った申し出である事は間違いが無かった。
しかも、一番の懸念である移民の移動についても、トウカで請け負うと言うのだ。その為に使用すると言うゴーレム馬車を見せて貰った。魔石を動力源として動くゴーレム馬が2頭。引くのは6人がゆったりと座れる広さのある箱馬車だ。後ろには小さめの荷台を連結してあり、行きは穀物を輸送してくれるのだと言う。しかも護衛の人員もトウカで用立ててくれるとの事。
ゴーレム馬車の説明をしながらアマテラスの開発には人手が入りますからね、と笑いながら言うタクヤに、バスティアンは肩をすくめる事しか出来なかった。
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