第108話 人工採掘場と伐採場。そして世界遺産
あれから1週間。あっと言う間だった。
基本は、とにかく資源の採取。クラフトと採取はエターナルクラフトの両輪なので、採取してはクラフトし、また採取。結局の所はこれをひたすら繰り返す事になる。
採取のメインは探査装置で発見できる鉱物資源の採取だ。1日に50ヶ所位は回った。ざっと300ヶ所は回ったんじゃないだろうか。アダマンタイトは発見できなかったが、ミスリルはあれから3ヶ所で採取が出来た。ただ、埋蔵量は1900、200、6100。3ヶ所で1万に届かないのは、流石にハズレでは無いだろうか。ちょっとへこんだのでフランシーヌに慰めて貰った。もとい、安息日にお休みがてら、何時もよりも時間を取ってフランシーヌといちゃいちゃしただけとも言う。
ミスリルの用途だが、今の所装備の火力は間に合っているので、必要に応じて魔導ユニットをクラフトする際に使用する。先々は魔導船の更新を考えている。
大型造成装置や資源探査装置、鉱床自動採掘設備はいずれも魔導ユニットを使用するので、ミスリル鉱石はそこそこの量が必要になる。まぁ、メインの魔導船に必要な数量と比べると微々たるものだ。
魔導船のレシピは次の通りだ。
⚫︎魔導ユニット×10、高級木材×2000、鋼鉄のインゴット×1000、水の魔法石×10
これに対してレジェンド等級の必要素材数はこうなる。
⚫︎魔導ユニット×2000、高級木材×400000、鋼鉄のインゴット×200000、水の魔法石×200
希少素材枠の水の魔法石は倍率が緩和されているので基本の20倍、まぁこれもそこそこ大変では有る。問題はむしろ魔導ユニットだ。必要数は基本レシピの200倍。魔導ユニット1つにミスリスインゴットが10個必要で、ミスリスのインゴットを1個製錬する為にはミスリル鉱石が5個必要になる。つまり魔導ユニットを2000個作ろうと思えば、ミスリル鉱石が10万個必要になるのだ。今のペースなら3ヶ月は掛かる事になる。
今の強襲魔導船でも、五分五分位でリヴァイアサンの討伐は可能だ。ただ、特効武器が装備できないのと、魔導船のレジェンド等級レシピも有るので、出来れば更新して勝利を確実な物にしたい。魔導船をレジェンド等級でクラフトしておけば、将来的に禁足地を目指す時にも活用が出来るので、きっと無駄にはならない筈だ。
最上級エリアは資源的にはそこまで目新しい物は無いが、探査装置で発見できる鉱石に属性宝石が追加される。それに埋蔵量も10倍に増える。それに現在のレベルキャップ60を解放するにはドラゴンの討伐が必要なので、準備が整えば最上級エリアを目指して討伐をしておきたかった。
この1週間で片手間にダマスカスのピッケルを山ほどクラフトして、既にキャップまでレベルを上げているのは勿論の事だ。その後も経験値キャンプまでクラフトを進めているので、ドラゴンを討伐出来れば直ぐにでもレベル70迄は上がるだろう。ダマスカスのピッケル様様だ。
まぁそう言う訳で最上級エリアを目指すにしてもまだまだ時間が掛かるので、アマテラスの建造も進める事にした。その一環で、今日は兼ねてより計画をしていた建造物のお披露目だ。
探査装置で発見した採掘ポイントの内、8割くらいは他の手段に比べると効率が落ちるので放棄済み。ミスリル等の使い道がある採掘ポイントは拠点化して、その周囲を造成装置による採石場とした。
鉱床自動採掘設備の周囲をぐるっと囲って転移門と迎撃装置を設置。城壁にそって階段上に20m堀下げて、あとは全方位を造成装置で造成、もとい採取をしていく。
そうして大量に採取した素材で、ついに大規模建築に手を出す事が出来る様になった。因みに余談だが、色々と検討した結果、トウカには幾つかの資源採取装置を導入する事にした。決定したと言うよりは、良い活用方法を思いついたが正しい。皆でこんな事出来ないかと色々と案を出して貰って、その中で実現が可能なものを形にしたものだ。
まずは町の一画に高さ1m、一辺5m四方の石と粘土、硅砂に石灰岩、そして石炭に大理石を設置した。これ、なんと人工の採石場だ。領民の手により手軽に採石が可能で、有る程度採石をすると造成装置により復元するので、造成装置にストックした資源が枯渇するまではずっと採石が出来る。
造成装置には万単位で在庫をストックしているので、向こう10年は枯渇しないんじゃ無いだろうか。しかも消費よりも俺が採取する量の方が明らかに多い。まぁその為に、火山群島には大穴が幾つも空いている訳だが。恐るべき環境破壊だ。
因みにその大穴だが、数十m掘り下げた後に造成装置で蓋をする様に天井部分に設置してしまえば、10日もすれば掘った穴はリスポーンして元通りになる。まぁ島の環境を破壊しても誰の迷惑になるわけでも無いので、そう言った選択肢もあるって程度のもので、今は絶賛穴掘り中だ。迷惑をするのは島に住む恐竜くらいのものだろうか。
もう1つは領民向けの伐採場だ。トウカとアマテラスの中間区画に100m四方の伐採場をいくつか設置した。
殆ど使い道の無い自動化装置に造園装置がある。一定範囲内に、自動で木を植えて育成し、伐採までしてくれる便利装置だ。苗もいらず、一度設置をすればずっと木材を供給してくれる便利装置だが、アプデで巨木ツリーバイオームが導入されてからは、木材の供給に限っては伐採装置を設置した巨木ツリーバイオームに効率で遥かに劣るので使わなくなった装置だ。
これを設置して作動させて、装置の収納ボックスにあえて不要なアイテムを入れておく。そうして収納ボックスが一杯になっていると、伐採した木材を収納できない為、木を育てるだけで伐採をしなくなるのだ。するとあら不思議。領民が手軽に伐採が出来る木々が簡単に手に入るでは無いか。今まで使った事が無かった装置を何か使い道がないかなと考えた結果だが、これまでに無い革新的な使い方では無かろうか。
そして、造園装置で生やす事が出来る木も、採取済みの中から選択が可能な点が領民向けには非常に有用だった。まずは建材としても薪としても非常に有用な樫の木。そして油を大量に精製可能な油椰子。油椰子は火山群島で採取したばかりだが、油を大量に採取出来るので採用した。今後は調理用や石鹸の材料に利用する事を考えている。因みにたっぷりの油を使った揚げ物料理を早速試したところ、非常に好評だった。
ついでに、ミスリル製のピッケルと斧を試して貰った。結果、驚く程簡単に採掘や伐採作業が進む様になった。今では巨大ツリーの伐採もミスリル製の斧を使用している。巨大ツリー専用の大型斧に比べると小さく心許ないが、効率は段違いだった。何せ太い物は普通の木の幹位はある枝が一振りで落とせるのだ。今までの鉈を使った枝打ちなら10回くらいは刃を入れる必要があった。それが余り力を入れなくてもストンと刃が通るのだから驚きだ。少々切れすぎるので、扱いが慎重になった程だ。最初はミスリル製なので、斧として使うには上等すぎて皆気後れしていたが、切れ味を試してからは我先にと使う様になった。
後、ピッケルはわざわざミスリル製を作らなくても、アイテムボックスに山の様にダマスカス製のピッケルが有る事を一瞬忘れていた。直ぐに思い出したので当然これも皆に使って貰う。これにより、アマテラスの建造は一気に加速する事になる。
なにせ燃料も資源も簡単に調達が出来るのだ。粘土でブロックや陶器類が作れるし、硅砂からガラスの製造も可能になった。燃料も木材に困らなくなった事に加えて石炭も容易に入手出来るようになったので、高い火力を簡単に使えるようになった。
しばらくして、同じ方法で鉄鉱石も提供できる事に気が付いた。インゴットに製錬する手間は必要だが、インゴットも一度溶かさないと使えないので手間は変わらない。それに必要な燃料に困る事が無くなったので、むしろ諸手をあげて喜ばれた。かくして人工採石場に鉄鉱石も加わった。
硅砂からガラスを作るにしても、鉄鉱石から鉄を精製するにしても、俺がクラフトで一次加工を行い用立てる事は可能だが、量を確保しようと思えばどうしたって手間も時間も取られてしまう。
今はまだ俺が用意した方が質も良いし簡単だが、皆に一次加工を行って貰う事で技術を習熟する事が出来るし、今後もアマテラスの人口は増え続ける予定だから長期的に見れば、皆に任せてしまった方がどう考えても良かった。
石灰岩を主原料にモルタルやセメントを作る事も出来る様になった。この辺りの建材は俺なら簡単にクラフト出来るのだが、実際に手作業で作ろうと思えば、かなりの手間と技術が必要になる。ただ、そうした技術はこの世界でも充分に成熟している。単に資源の調達が難しいだけで、むしろ限られた資源を有効に扱う知識や技術は研鑽されていた。
こうして建材も全く困らなくなった。後は決定的に足りないのは人の手だけだろう。その点は移民の話が進んでいて、もうじき第一陣が到着する予定になっている。
そんなこんなで1週間を忙しく過ごした俺は、完成したばかりの建築物を皆に実際に見て貰う為にアマテラスに招待をした。
転移門をくぐり抜けた先はアマテラスの中央部。その転移門を、世界的に有名な建築物が取り囲んでいる。今回クラフトした建物は4種。ベルサイユ宮殿、姫路城、モンサンミシェル、ケルン大聖堂。
当然、出来上がった建築物は、トウカからも遠目に見える。ただ、アマテラスは3m盛り土をしている事に加えて3mの城壁を既に完備しているので、ベルサイユ宮殿はトウカからだと殆ど見えない。姫路城とモンサンミシェルにケルン大聖堂は下側は少し隠れるがトウカからでも、ほぼ全容が見て取れる。ただ皆が実際に全景を観るのはこれが始めての事で、しかも遠目に見て想像した姿と、近くでみた威容は結構印象が違う様で、皆唖然としている。
皆しばらくの間、呆然と目の前の建物を見上げていた。
ぱっと目を引くのは、モンサンミシェルとケルン大聖堂だろう。DLCの建築物パッケージは基本は上物だけなのだが、モンサンミシェルは特徴的な土台部分も再現されているのでかなりの高さが有る。
ケルン大聖堂は、ニコラさんと約束をしていた教会施設として利用してみてはどうかと思っての事だ。特徴的なゴシック調の尖塔は、流石にある程度デフォルメされて簡素化されてはいる。現地で直接見た事が無い俺としては、こうしてリアルで見る分には写真で見た記憶の中の姿と比べてもそれ程遜色は無い様に思える。つまりは俺から見ても荘厳な雰囲気を漂わせていた。
姫路城は、何となくチョイスした。日本人だから、日本が誇る世界遺産をちょっと皆に見せて見たかったのだ。
「ささ、ここで見るだけじゃ無くて、中も色々と見て検討して欲しい」
用途については、教会の聖堂、領主屋敷、行政府としてだ。皆の背中を押す様に進めて見ても、誰も動こうとしない。まぁ俺もリアルモードで見るこれらの建築物に興奮を隠せなかったので、皆の気持ちも解る気もする。結局俺が音頭を取って、順に案内をする事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます