第65話 4日目、大型自動採掘施設他

エターナルクラフトは、自分の手で掘るのも楽しいが、やはり各種拠点を自動化してからが本番だろう。木材の大量獲得は既に出来る様になった。次は採掘の自動化だ。


初期の頃なら、たとえ自動化が出来てもこれ程の資材を確保する事は困難だった。アイテムのスタック数の上限が99個なので、あっという間に収納箱が一杯になったからだ。持ち運べるアイテムの枠数も限られていたので、大量の資源を獲得する為には拠点に山の様な収納施設を設置する事が必要だった。

恐らく拠点を一番占有していた設備は倉庫だろう。だが、今ならスタック数の上限が999999個なので、溢れる様な事は無い。

しかも初期の頃には無かった仕様で、採取施設の共有化機能がある。

例えば伐採装置なら採取された木材は伐採装置にスタックされる。共有化機能の追加前なら5km×5kmに設置した25ヶ所の伐採設備を全て回ろうと思えば、30km以上移動をしなくてはならなかった。とてもじゃ無いがいちいち歩いて回収できる距離では無い。俺は転移門があったからマシだったが、それでも結構な手間なので今ほど手軽に資源を集められる訳では無かった。


共有化機能が追加されてからは、同一拠点内の同一設備であればどこからでもアイテムボックスにアクセスが出来る様になっている。自動伐採装置のアイテムボックスの枠数は10個。拠点内に25ヶ所設置しているので、伐採装置のアイテムボックスを開くと共有化されて250枠の1つのボックスとして表示されるのだ。トータルで60万個でもソートをすれば1枠に収まる。それをワンクリックで自分のアイテムボックスに移すだけで回収が完了出来るのだから、時間も殆ど掛からない。昔なら1日作業なので、昔と今では雲泥の差だと解る。多分初期の仕様なら、資源の回収速度は桁が2つは違った筈だ。


さて、大型自動採掘施設は、伐採施設の4倍位のスペースを占有する。設置する事で、これもどうやってかは知らないが、一定時間毎に施設の収納箱に素材を放り込んでくれる。伐採は周囲の木を見れば木材の供給元が一目瞭然だが、採掘施設を設置しても地下を掘っている様子は無い。因みにこの施設は500m四方に同様の施設を設置出来ない。元々この施設を設置する事を想定して、伐採装置を設置した飛び地にはスペースを設けているので、後は順に設置をしていくだけだ。


大型自動採掘施設のビジュアルは、直径5mはある採掘坑にエレベーターが3基ほど並び、地下から土砂を汲み上げる機構が備わっている。それを大きな小屋が覆っていて、小屋の外には土砂を運び出すベルトコンベアが設置されており、ベルトコンベアの脇には鉱石の選別装置が設置されている。

採掘坑は遠目には底が全く見えないが、そもそもこれ自体が巨大なオブジェクトで、小屋を中心とした10m四方がオブジェクトの範囲なので、その範囲内には立ち入る事が出来ず実際に近づいて見る事が出来無い。


因みに興味本位でリアルモードに切り替えてみた。リアルなら入れない事は無いので中に入って見てみる。自動設備は設置して直ぐに採掘を始めてくれるので、今この瞬間も鉱物資源が収納に納められている筈だ。だが、別にベルトコンベアが動いたり、エレベーターが動いたりする訳では無い。採掘坑を覗き込んでみると、上から見れば結構深いが底が無い訳では無い様だ。それでも、多分10mは有りそうなので落ちれば怪我では済まないだろうから、近づかない様にしよう。


この採掘施設は、石、砂、硅砂、粘土、土、石炭、銅鉱石、鉄鉱石、銀鉱石、金鉱石を採取してくれる。残念ながらそれよりも上位の金属鉱石や宝石類は採取出来ない。だが、この装置があれば今後石や鉄で困る事は無くなる。


そう言えば、伐採施設も採掘施設も、昔と今では採取スピード自体が違った筈だ。確か5倍位にはなっていたと思う。


初期なら1分あたり1個。1時間で60個、1日で1440個。

採取割合は石20%、砂10%、硅砂3%、粘土4%、土25%、石炭10%、銅鉱石10%、鉄鉱石15%、銀鉱石2%、金鉱石1%

収納枠は10枠で、それぞれが1枠ずつなので、丸1日放置をすれば鉄が99個集まる位だった。それを複数箇所設置して、せっせと回収をするのだ。初期の仕様なら、正直そこまで効率が良いとは思えず、転移門があってようやく実用に耐える位だ。

だが今なら、その5倍の速度で採掘を行ってくれる。

25ヶ所に設置したので、1日あたりの採掘量は18万。鉄鉱石は15%なので2万7千が期待値になる。

因みに金鉱石も1日あたり1800は採掘出来る計算なので、当然売りに出せば大変な事になるのは間違いが無い。しかもこれ、資源が枯れる事も無いのだ。


採掘施設の設置は昼過ぎには終わったので、午後は居住スペースの拡張を行う。

そう言えば、衛生環境の構築には風呂も欠かせない。さすがに1軒1軒に風呂を設置するのは難しいので、まずは汚れを落とせる場所を作る事にする。季節は夏だから、前に考えた水風呂の規模を拡大してみる。川側の区画に石ブロックで2m程土台を作る。広さは10m四方も有れば十分だろうか。1mは流石に高いので、久々にハーフブロックを使う事にした。滅多に使う事は無いのだが、建築に拘るなら50cm角のブロックではどうしても作れる物が限られるので、高さ25cmのハーフブロックと高さ12.5cmのクォーターブロックが存在する。石材加工台で加工が可能だ。

75cmなら簡単に乗り越える事が可能だろう。川側にはスリットを設け、水が排水出来る様にする。そのまま用水路を川にまで伸ばす。枠が完成したら、あとは中に4ヶ所噴水を設置すれば、あっという間に水が溜まって水遊び場所、もとい水風呂の完成だ。


風呂は風呂で別に用意をする。体力が低下している人なら、むしろ風呂にゆっくりと浸かる方が癒やしになる筈だ。

住居区画と少し離れた場所に、風呂専用の建物を設置した。拠点に設置しているものと同じ大浴槽を4つ並べる。


ところで、この浴槽には一応排水用にパイプを接続する必要はあるのだが、こちらもどうやってお湯を沸かして、排水をしているのかは全く解らない。常に適温のお湯が、ちょうど良い湯量で張られた状態が維持されている。

俺とフランシーヌが2人で入っても溢れないし、お湯の温度が下がる事も無いし、何ならお湯が汚れる事も無い。物理法則を完全に無視している代物だ。だが、これがあれば避難民はいつでも清潔に保てる筈だ。

避難民は最大で2万5千人になるので、さすがに交代で利用をするにしても全員が利用するのは難しいだろう。その辺りのルールをどうするかは、避難民の代表に任せるつもりだ。


今なら高級木材に余裕が有るので、同じ様な入浴施設も50戸設置した。一応中には仕切りで外から浴槽は見えない様にしているし、脱衣所も用意している。流石に藤の籠を必要数揃えるのは難しいので、戸棚だけ設置している。トイレも忘れずに設置済みだ。


大分住環境も出来てきたのでは無いだろうか。ここに来て、ふと大切な事を思い出す。そう言えば、薪をどうしようか。


拠点なら、燃料は直接アイテムボックスから必要な量を設備に投入すれば問題は無かった。例えば調理竈なら、木材を入れておけば常に薪が投入された状態で使える様になっている。


そう言えば、最初の頃はリアルモードで堀った坑道に設置した松明の煙に巻かれた事があった。だが、どうやら拠点内ではリアルモードでもエターナルクラフトの仕様に従う様で、拠点内、もしくは自動化装置を設置してからは恐らく100m以内で有れば松明も煙を出さなくなった。


竈に投入した燃料もゲーム仕様で燃焼をする。調理竈なら、燃焼時間は高級木材で6時間、石炭なら4時間だ。明日以降なら石炭も必要な量を確保出来るから、石炭か高級木材を投入しておこう。でも、さすがに今後もずっと俺が燃料を用意するのは面倒だ。既に建築した建物は1000に迫る勢いで、それぞれに燃料を投入したら、それだけでも1日仕事になりそうだ。そこで、住民が自分の手で燃料や資源を調達出来ないか考えてみた。


その結果、町の直ぐそばに巨大な樫の木の苗を植える事にした。


木を採取すると、一定確率で苗を入手する事が出来る。景観を整える為に自分で木を植える事はよく有る事だ。巨木ツリーの苗は採取しても獲得は出来ないが、代わりにクイーンジャイアントスパイダーから、一定確率で採取をする事が出来る。幾つかストックがあるから城壁から50m離れた場所に100mおきの10個苗を植えて見た。5日経てば立派に成長するので、そうなれば避難民の手で切り倒して貰おう。そうすれば木材としても薪としても利用が出来る。


今後も5日おきにクイーンジャイアントスパイダーを討伐する予定なので、その度に植えれば多分困らないと思う。


余談だが、一部の消耗品は流石に使えば減る事が解った。トレイのトイレットペーパーや、風呂場に設置されているボトル入りのボディソープやシャンプー、コンディショナー等。どうもオブジェクトアイテムとして設置されるものはリアルの状況をちゃんと反映するらしい。見えない部分はゲームの仕様に準じる様だ。


◆Memo


巨大ツリーの伐採量の話


幹が直径3m程。高さは15m程。

高さ50㎝あたり下記の通り24ブロック。高さ15m30段で720。枝葉を含めると約1000ブロックになります。


エターナルクラフトでは設置していない建造物やブロックはロストするので、枝葉を根元から採取すると、枝はバッサリと落ちて消失します。その為、手作業で採取を行う場合は枝葉の先から採取するのは非常に面倒なので、実際の採取量は目減りします。

自動伐採装置なら先から伐採してくれるので、余す事無く採取が可能な親切設計です。


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