第64話 3日目、城壁と家の設置

次の日は、夜が明ける位には目が覚めた。手早く食事を終えると早速作業を開始する。まずは普段の日課に加え、前回畑の手入れをしてから5日経ったので、作物を収穫する。今回はフランシーヌが居ないので全てアイテムボックス行きだ。

同様にクイーンジャイアントスパイダーもリポップしているので、流れ作業で討伐する。伐採装置のお陰で巣の周りの木は全て伐採済み。そのお陰でボス討伐前の間引きも必要が無い。討伐に必要な設備も整っているから、ふらっと行って流れ作業で討伐をするだけの簡単な作業だ。


今日は安全な拠点環境を確保する為に城壁を建造する事にした。


城壁は魔獣の侵入を防ぐと言うよりも、拠点化の条件を満たす為に設置する意味合いが大きい。正直、迎撃装置を十分に設置してしまえば、このエリアの魔物に後れを取る事は無いからだ。

資源を考慮して、直ぐに設置が可能な石積みの城壁を採用する。厚さも1ブロック50cmを4段積みで高さ2m。城壁の上には歩哨が立てる程のスペースは確保していないし、むしろ城壁で目線が遮られるのが不安なので、内側には50cm1段の足場を作り、更に定期的に石戸を設置して出入りが出来るようにする。


リアルではどうか解らないが、クラフトモードでは魔物が拠点や施設に攻撃をするので目を離すと城壁の耐久値が削られてしまう。どうせ後々必要になるので迎撃装置の設置も50m置きに行っていく。城壁で囲う迄は弾薬の補充を一元化する事が出来ないので、タレットの足元には収納箱を設置して矢も入れて置く。これは後々撤去する予定だ。


城壁の設置は昼位には完了した。自動化装置を設置して、拠点化を行う。これでひとまずは安心だ。

次に設置を行うのは畑だな。ここは比較的なだらかな地形なので整地を行わなくても実際にはそれ程高低差は無い。昨日整地を行ったのは、どちらかと言うと素材を採取するついでだった。あと、やっぱり整地して均一の高さに整えられた地面を見るのは楽しい。鉄鉱石が大量に必要になるから地下へと掘り進める方が早かった気もするが、実はその点については解決策がある。それはまた後々考えるとしてまずは畑だ。


畑は食糧の供給を行う為に必要となる。この世界の種をリアルに手で植えても、クラフトで設置した畑ならゲーム仕様で僅か5日で収穫する事が出来るのは確認済みだ。それに肥料も自動で撒いてくれるし、水やりも自動。雑草も生えず、連作による土壌の悪化を心配する必要も無い。しかも、収穫は俺が行わなくても住民の手で行う事が出来る。


実は、この住民の手で収穫出来る事が一番大事な要素だ。ゲームの仕様だと資源の大量供給が難しい事に対する俺なりの解決策だった。


アイテムボックスに入れてしまうと、ボックスや収納箱から取り出す事は俺にしか出来ず、一個ずつ設置してオブジェクトアイテムとして表示する事でしかリアルでは活用が出来ない。だが、畑に実った農作物を直接収穫すれば、そんな手間を掛ける必要が無い。種さえ植えて貰えれば5日経てば収穫出来るのだから、最初の5日さえ乗り越えてしまえば食糧問題は解決する筈だ。


そう言う訳で、川側のエリアには大規模な畑を設置していく。何面か毎に井戸を設置して、散水装置を設置。肥料を入れる堆肥箱も設置していく。肥料は、大量に余っている骨をクラフトして作成した物が山の様にあるので問題なし。

最初の種まきは流石にアイテムボックス経由で行う。畑で収穫した農作物は、収穫の時に一定数種も収穫出来る。これも等級の高い鎌を使えば採取数が増加するので、これだけの広さでも最初の種蒔き分位の数はストックしてあった。

各種野菜、特に小麦を中心に植えて行く。収穫の手間はあるが、流石にそれ位は住民に任せてしまっても問題は無いだろう。


畑の整備が終わると、次に家畜を囲うスペースを作る。ブルゴーニは畜産が盛んだと聞いたので、多少は家畜を持って来られるのではと期待をしている。牛や鶏は何としても手に入れたい。生活が困窮する中で家畜の世話はどうしても二の次、三の次と後回しになる。食料が枯渇すれば、解体されて食肉にされている可能性もある。モーリスさんには最優先で保護をして貰うようにお願いをしているので、何頭かだけでも確保出来る事を願うばかりだ。


牧場予定地を柵で囲い込む。そして家畜小屋と厩舎を設置する。

家畜小屋は小動物の家畜化をする事が出来、厩舎は牛や馬と言った大型動物を家畜化する事が出来る。ゲーム内では家畜の世話も全自動。厩舎と家畜小屋に餌を入れておけば勝手に繁殖して、一部の家畜は一定期間毎にアイテムを産み出してくれる。鶏なら鶏卵、牛なら牛乳。他に馬や豚、山羊等が家畜化出来る。


しかも2頭以上同じ囲いに放しておけば、ランダムに子供が生まれて増えてくれる。普通なら妊娠して産まれるまでには時間が掛かるし、産まれてから大きく成長する迄に更に時間が掛かる。だが、ゲーム仕様ならその時間を大幅に短縮できるので、その内数が増えるだろう。


一旦家畜化をしてしまえば、避難してくる人達の中には家畜の世話を専門にしている人達も居る筈だから、任せてしまえる筈だ。そうして家畜が殖えたら、何匹かを譲り受けて拠点で改めて飼おうと思う。


次の日は居住空間の建造を行った。雨露が凌げる最低限の住環境があれば当面は大丈夫との事なので、高さ2.5m、幅8m、奥行き4m。土間には調理竈を設置して、奥にはトイレを設置する。衛生的な環境を維持する為には汚物の処理をどうするかは最大の問題となる。だが、ゲーム仕様のトイレなら、その後の処理を考える必要が無い。


何と言うか、凄まじい能力だなと改めて思う。俺とフランシーヌ、2人が住む環境だけをゲーム仕様で作る快適にする事は便利だなぁ程度で済むが、流石に万単位で人が住む環境をこうしてゲーム仕様で構築する事には一抹の不安があるのも事実だ。

せめて仕組みについて説明が出来れば、そのうち自分達の手で作り出す事が出来るが、何一つ説明が付かないのだ。ただ、俺にはその力があるのだから、今更出し惜しみするつもりは無い。何か問題があるのだとしたら、それは俺をこの世界に連れてきたであろう神様が考えるべき事だ。


家の3分の2は板張りで床を設置してベッド4個設置する。本当に最低限の生活だけをするスペースだ。この4軒を1区画として中心には井戸を設置して家の中に引き込む。後は同じ間取り、区画割でひたすらに家を建てて行く。

因みに木材は巨木バイオームで採取できる上質な樫に木を加工した高級木材だ。


先日設置した自動伐採装置のお陰で、木材は困る事が無くなった。何せ5日毎に60万個程木材が入手出来るのだから。


ざっとした概算だが、巨木バイオームに生えている巨大ツリーは、1本から木材ブロックが1000個程採取出来る。木の生えている密度は概ね200m×200mに1本、つまり4万㎡あたり1本。現在伐採装置がカバーしている範囲は5km×5kmなので、ざっと600本の木が生えている計算になる。これが、5日もあれば全て伐採されるのだ。そして、それだけ巨大なツリーも5日でリポップをする。つまり、今後は5日おきに60万個の上質な樫の木が、ひいては高級木材が獲得出来るのだ。


それだけ木材があっても、さすがに簡素とは言え家を建てると1000軒分位にしかならない。逆に考えれば、町を1つ作る、それを人の手で行うにはどれ程の資材と労力が必要になるのか、ちょっと想像が出来なかった。


その日の晩も遅くまで作業を行う。疲れたら拠点に戻って風呂に入って食事を取る。1人で食べる食事に寂しさが溢れてくる。もう俺にはフランシーヌが居ない生活なんて考えられなかった。早く会いたい。


その日、高級木材を材料に山ほどクラフトしたからか、次の目標となる技術レベルに達する事が出来た。ついに待ち望んでいた、大型自動採掘施設が設置出来る!

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