第60話 伐採所と指輪のクラフト
昨日は、拠点の畑で2度目の収穫が出来た。野菜の収穫までのサイクルは5日なので、最初に種を植えて10日は経過した事になる。一緒に植えた果物の最初の収穫に掛かる日数は10日なので、今回は野菜に加えて果実の収穫をする事が出来た。
採取出来た果物はリンゴとブドウの2種類。野菜と比べると種類は少ないが、この22種類の果物は色々と使い道がある非常に有用な素材だ。折角なので今日はこれを有効に使える施設をクラフトする予定だ。
まずは朝の日課として、拠点周辺で自動迎撃装置に撃退された魔物の採取を行う。
次に、拡張した拠点内のスペースに、新たな施設を2つクラフトする。
1つ目は醸造蔵。まずは樽をクラフトして樽とリンゴを材料にすれば、リンゴのお酒のシードルとリンゴ酢が。ブドウからは同じくワインとワインビネガーをクラフト出来る。
これらのレシピはフィールドボス討伐による2段階目の技術ツリー解放前からクラフト自体は可能だ。その場合は醸造樽をクラフトして仕込みを行う。クラフトした醸造樽とブドウ、もしくはリンゴを素材としてクラフトして、醸造樽を準備状態にする。
その後、本来なら発酵、熟成させようと思えば年単位で時間が必要だが、そこはゲーム仕様。僅か1日で完成する優れ物だ。技術レベルが上がれば更に時間は短縮される。そして酒完成後もそのまま放置すると酢になる。
醸造蔵なら発酵管理を自動で行ってくれるので、クラフト段階で酒か酢かを選択する事が出来る。他にも醸造蔵なら小麦からエールのクラフトも可能なので、一緒に仕込んでおく。
醸造蔵は面白い仕様がある。醸造蔵で一部の酒類をクラフトした場合は、クラフト完了後も取り出さずにそのまま保管をして置くと、時間経過と共に熟成をするからか等級が上がっていく。この熟成に必要な時間は技術レベルによる変動は生じない。
コモンからアンコモンには5日、アンコモンからレアには15日、レアからユニークには30日、ユニークからレジェンドには120日。そして、醸造蔵1つにつき2枠まで仕込みをする事が可能だ。
普通ならクラフトが完了した時点でアイテムボックスに移すので、この仕様が発見される迄には多少時間が掛かった。だが、発見された時はお祭り騒ぎになった。
他の製品と違って、醸造樽、醸造蔵はクラフト完了後も時間表示がされるのだが、醸造樽が時間経過で酒から酢に変化する事もあっても、稼働当初はそれ程注目をされなかった。まさか醸造蔵に醸造樽とは異なる仕様があるとは。
まぁエターナルクラフトではどれだけ等級を上げても実際に味を楽しむ機能は無かったのだが、それでも時間さえ置けば等級が上がるのだから俺も手当たり次第にクラフトをした記憶がある。
その当時は醸造蔵の収納箱のストック数も少なかった。2枠しかなく、スタック可能数が99個なので、数を仕込もうと思えばその分醸造蔵をクラフトする必要が有る。
その為、拠点内に醸造蔵を幾つも設置する必要が有ったのだ。考えてみれば一番建築した施設って醸造蔵では無かったか。いや、そんな事は無いか。
いずれにしても、今はスタック数の上限が解放されている。それでも枠自体は2つだから、ブドウとリンゴ、そして小麦を仕込む為には醸造蔵が3つ必要になる。シードルとリンゴ酢、ワインとワインビネガー、そしてエールの計5枠。と言う訳で既に拠点には醸造蔵が3つ並んでいる。
元々余り酒を飲む方では無かったが、飲めない訳では無い。むしろ美味しいお酒をちびちびとやるのは好きな方だ。最近ではフランシーヌと一緒に飲む酒はとても美味しく感じるので完成が楽しみだ。なにせどんなに飲んでも、翌日二日酔いしても、フランシーヌがいれば直ぐに治してくれるのだから。
因みに、エールには長期熟成による等級の上昇は無い。他の製品と同様に等級毎にレシピが用意されている。一応レシピは揃っているので作ろうと思えばレジェンド等級のクラフトも可能だが、小麦の必要数が膨大な数になる。小麦は用途が多いので無駄に使用するのも考えものなので、まずはコモン等級で仕込んでおいた。畑の規模を拡大して余裕が出来たら、その内クラフトして飲み比べをしてみたいものだ。
次の施設は自動伐採所だ。
設置した自動伐採所は、加工した木材を収納する為の小さな倉庫、横には自動施設の用途を示す為か、オブジェクトとして積まれた丸太、木材を加工する為の丸鋸が設置されている。この設備を設置すれば、一定範囲内の木材を自動で採取してくれる。早速クラフトをして設備を設置すると、程無くして拠点の近くにある木が、上側から少しずつ削られて行く。何がどうなって伐採をしているのかは全く解らないが、時間が経てば木は伐採されて無くなり、代わりに自動伐採所の中に木材がストックされるのだ。
迎撃装置の矢の充填もそうだったが、ゲームの仕様なら過程をすっ飛ばして結果が現実に作用をする。改めて考えると、神様も無茶をするなぁと思う。こう言っては何だが、普通なら現実に置き換える為にもうちょっと現実と擦り合わせをするんじゃ無いだろうか。こう、何て言うか、もうちょっとリアリティを持たせると言うか、実際に現実に置き換えると、こうやって実現してたんだよって説得力を持たせると言うか。
だが、殆どの事象は説明や理屈抜きに、ゲームの仕様通りに現実へ結果を齎す。
フランシーヌの言葉では無いが、これが神の仕業で無いとしたら一体誰に出来るのだろう。
でもあれだな。良く考えたら、ドロップ品の挙動の様に現実へと置き換えが出来ない事象もあるので、何某かの基準はあるのかも知れない。どの様な基準があるのかは前に考えた事があるが、到底答えに辿り付けない気がしたから思考を放棄してたんだった。それこそ基準なんて神にしか解るまい。それとも検証好きな人なら喜んで答えを探し出すのだろうか。うーん、ダメだ全く解らない。
まぁ解らなくてもそれで俺が困る訳でも無いので、最大限利益を享受する。難しく考えてみても、少なくとも今のところはゲームの仕様を外れた事は殆ど無い。今後も仕様通りと仮定をすれば先々の計画も立て易いし、大きく外れた時にでも改めて考えるとしよう。
さて、自動伐採所の有効範囲は精々1km四方だ。大蜘蛛の森、もとい巨木バイオームはもっと広い。そこで、効率良く伐採を行う為に、少々強引な方法で拠点を拡張する事になる。
エターナルクラフトでは範囲を問わず塀にぐるっと囲まれた範囲が拠点と見なされる。だが、これには実は抜け穴が存在する。
その方法とは、拠点の塀を拡張するのでは無く、地下に連絡用の通路を作るのだ。
拠点内から地下に穴を掘り、そこから1km先を目安に水平方向に掘り進める。そして地上部分へと出口を設けると、十分なスペースを確保して塀で囲ってしまうのだ。こうする事で飛び地ではあるが同一の拠点内と見做される。
因みに伐採装置の横に、もう少し広めのスペースを確保してある。ここには後々別の設備をクラフトする予定だ。
この飛び地を塀で囲わなくても元々囲った範囲は変わらず拠点と見做されるのだが、飛び地を塀で囲った瞬間に地続きの拠点内と判定をされるのだ。飛び地を囲う前と後では、システムからは異なる処理をされている事になる。
トンネルで繋いだ先が元々地続きと見做されているのであれば、囲っていない場所が生じた時点で拠点の構成要件を満たさなくなるので、元々の拠点は拠点として見做されなくなる筈だ。だが、実際にはそうはならない。実際には飛び地を囲った瞬間に連なった同一の拠点として判断をされる。
例えば魔物の襲撃で壁が壊されて連続性が失われても、直ぐに拠点としての機能を損なう訳では無い。壁の耐久力が半分以下で破損状態になり、魔物は通り抜けが出来る様になる。この状態であれば資源を消費して修理を行う事が出来る。
耐久力が0になると完全に破壊される。壁の一部が破壊され、連続性が失われると拠点としての機能は失われる。
尚、拠点機能の消失には猶予期間が設けられている。襲撃イベント時は終了から1時間、通常時であれば壁が破壊されてから1時間。いずれかの拠点が攻撃を受けて壁が破壊されると、システムメッセージが【拠点が攻撃を受けています】と教えてくれるので、早急な対処を行う必要が有る。
大きな拠点の中に、更に狭い範囲を塀で囲うと、その中は独立した別の拠点として判定をされる。モンペリエの町で、自動化設備を設置した際に家を塀で囲って仕舞わなかったのは、それが原因だ。
これについては確か検証がされていた筈だ。
拠点の判定は、厳密には地面と接触した塀や壁が完全に囲う範囲を拠点として判定する。この地面として判定されるのは土ブロックや石ブロック、レンガブロックや各種土台等も地面として見做される。
例えば巨木バイオームで巨大ツリーを柱としてツリーハウスを建設した場合は一見地面には面していない様に見えるが、床の外周に壁を設置して囲えばちゃんと拠点として判定をしてくれる。この時大切なのは、連接している壁で囲っている事。
拠点から地下に掘り進んだ場合、何処まで拠点として見做すかだが、壁の接地面を基準として地下500m、もしくは設置した自動化設備を中心とした100m四方であれば拠点として判定をしてくれる。
トンネルや橋で壁の外まで道を結んでも、地続きとしては見做さない。拠点を上から見下ろしたと仮定をすると、壁を境界線として、境界線を越えた部分は拠点外と見做されるのだ。
ところが、二つの拠点をトンネルで繋いだ時だけは、何故か同一拠点として見做してくれる。ただし先程の地下500mの制限は受けるので、500mより地下にトンネルを掘った場合は同一拠点と見なされない。
恐らくは、トンネルの壁面も壁として認識をされるので、連接した壁として判定をされているのではと考えられている。想定された仕様なのかは解らないがシステム的な抜け穴では無いだろうか。事実、接地面より上に連絡通路を作ってみても、同一拠点としては判定されないのだ。あくまで設置面より地下をトンネルで結んだ場合だけに同一拠点と判定をされるのである。
戸や扉も壁の一種と見做されるので、トンネルの途中に扉を設置すると連続性は失われてしまうので注意が必要だ。
因みにトンネルを結んだ先と高低差があってもそれ自体は問題は無い。あくまで境界線を越える時に、設置面より下にトンネルが通っている事が条件となる。恐らくは飛び地を囲ったタイミングで拠点の判定が入り、その時に接続するトンネルがあれば同一拠点と見做される処理がされるのだろう。
さて、飛び地として設置した伐採拠点に迎撃用のタレットも新たに設置する。この飛び地を広い範囲をカバーする様にマス目上に四方に増やして行く。昼過ぎまでに、都合24箇所。凡そ5km四方をカバー出来る自動伐採所が完成した。
これで、5日毎に木が再生する都度、自動で伐採して木材をストックしてくれる様になる。特に高級木材は次のステップへと進む為には大量に必要となるから、幾らあっても困る事は無い。
ここまでの作業を終えてもう少し時間があるので、もう1つ作りたかった製品をクラフトする。
まずは金鉱石を精錬して金のインゴットを作成。フランシーヌはどんな色が似合うだろうか。フランシーヌの顔を思い浮かべる。その瞳は美しい青色、碧眼だから瞳の色と合わせよう。サファイア鉱石を細工台で加工する。次にゴールドインゴットから金の指輪をクラフト。加工したサファイアと金の指輪を素材に、金の指輪(サファイア)をクラフトする。
さて作っては見たものの、サイズは合うだろうか。メニューから装備させればサイズの補正をしてくれるのは解ってはいるが、出来るならあの指に嵌めたい。スマートに指輪を指に通したい所だが、まぁ自分でサイズを直せる訳では無いのでなる様にしかならないか。
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