クラフター。異世界に紛れ込んだ俺はクラフト能力で立身出世を目指す？でも好きに生きて良いと言われたので、好きなクラフトをして過ごす事にします。

第32話 クイーンジャイアントスパイダー討伐

拠点を大幅に改修した翌日、食事の後に朝から日課のジャイアントスパイダーの採取を済ませると畑をチェックした。見事な程に全部の畑で立派な芽が生えていた。

普通なら、さすがに種を植えた翌日に全部の芽が出る何て事は無い筈なので、これなら恐らく5日後には色んな野菜が収穫出来るだろう。

拠点の防衛はレジェンド級に更新した事も有り4角のタレットだけで十分だから、4基は撤去してボスフィールドを囲う壁の上に改めて設置を行う。最初は一旦拠点をしまおうと思っていたが、よく考えたら拠点を収納すると折角植えた野菜が全部パーになってしまう。

レジェンド等級の必要素材が200倍なのは伊達では無いのだ。例えばピッケルのレジェンド等級なら、必要素材はコモン等級のなんと200倍だ。鉄が幾らあっても足りない。尚、ピッケル等の採取ツールや武器、防具の類には耐久度が設定されている。耐久度の回復には素材が必要だが、その為の必要素材は等級が変わっても変動はしない。

まぁ単純に全ての必要素材が200倍と言う訳でも無く、希少素材なんかは多少調整がされている。ただ採取が容易な鉄や木材などで有ればしっかり200倍になる。

先日作成したダマスカスのピッケルは課金レシピで、直接鉄鉱石と木炭からクラフトが可能だったが、修理する為にはタングステンのインゴットが必要になる。当面はクラフトする事が出来ない。そうそう壊れる物では無いがクラフトに時間が掛かるので、その内予備を2〜3本位は作ろうと思う。

因みによくよく考えてみればダマスカスのピッケルは元々要求される技術レベルが高いだけあって経験値が凄まじい。今はレベル上限が20でカンストしているので先日クラフトした時は気付かなかったが、大型アプデ以降はレベルがカンストしていても内部では経験値がプールされていて、ツリーをアンロックしてレベル上限のキャップが外れればプール分の経験値が加算される筈だ。それに気付いてからは素材がたまり次第クラフトする事にした。

さて、ボスフィールドを囲う壁の足場は、広さに余裕を持たせてクラフトしている。フランシーヌには、この足場の上から弓で攻撃を加えて貰う。この高さから落下すれば怪我では済まない可能性もあって心配だが、そこは大丈夫との事なので信じる他ない。高さが10mは無いとボスの攻撃が届いてしまうので低くする訳にもいかないからだ。

ボスフィールドは凡そ直径500mの円周上のフィールド。クイーンジャイアントスパイダーは全長10m近くの巨大さなので、結構狭く感じてしまう。一度戦闘に入れば、クイーンジャイアントスパイダーも多少は戦闘フィールドから出て行動する事が可能なので、壁で囲う事でボスの動きを制限する。

通常の設置型クロスボウなら射程150mとカバー出来る範囲が狭いので、目安としては等間隔に16基設置を行う。勿論素材に余裕があればそれ以上でも良い。

レジェンド級なら射程375mで、4基設置でも常に3基はボスを射程に捉える事が可能だ。

攻撃力も射撃間隔も大幅に改良されているので、実質的な火力ならレジェンド等級4基で、コモン等級16基を大幅に上回っていた。

クイーンジャイアントスパイダーの行動パターン、及び攻撃方法はそれ程多くは無い。

近くなら巨大な足で攻撃をしてくる。離れると、力を溜めるモーションの後に飛び掛かってきて、のしかかり攻撃をしてくる。もしくは硬質な糸による射撃攻撃だ。

のしかかりには一定範囲に衝撃ダメージが発生し、硬質な糸にも結構なダメージが設定されている。建築物へのダメージもあり、普通の石で作った壁位なら簡単に破壊されてしまう。強化木材を鉄で補強した現在の壁であれば、そうそう壊れる事は無い。

戦闘が始まれば何もしなくても俺を標的に攻撃をしてくるので、攻撃を避けながらぐるぐると壁伝いに回るだけの簡単なお仕事だ。後は自動迎撃装置が勝手に倒してくれる。今までに何度と無く繰り返してきた作業だから、エターナルクラフトの中でなら万に1つも負ける事は無い作業だ。

不安要素はフランシーヌの存在位だ。フランシーヌの腕前なら、弓による攻撃でも敵の注意を惹きつける可能性がある。ゲーム中はあの高さには判定が無いのか、タレットを攻撃目標に定められた事は無かった。今回は予想出来ない部分もあるので、万が一にもフランシーヌが狙われた際に注意を惹きつけられる様、クロスボウを装備して準備しておいた。

まぁ、終わってみれば全くの杞憂だったが。

クイーンジャイアントスパイダー戦は、非常に呆気ない物だった。俺がボスフィールドの中へ足を踏み入れると、中央の寝床からクイーンジャイアントスパイダーがその姿を現す。

フィールド内に敵は俺1人なので、何もしないでも敵の視線は俺を捉える。すぐさまその巨体を沈み込ませる。跳躍からののしかかり攻撃の兆候だ。恐らく結構揺れるので、フランシーヌには注意をする様に伝えている。

跳躍体勢になった時点で目標の座標が固定されるので、俺は足早にその場から離れる。跳躍後は次の動きを警戒する。このモーションは糸だな。

クイーンジャイアントスパイダーから何本かの糸が飛んでくる。この糸はかなり硬質で、俺の背面にある壁に突き刺さる。しかも粘着力もあり、当たってしまうと絡めて取られてしまう。糸は5秒は消えずにその場に留まるので、避け方が悪いと退路を断たれてしまうので注意が必要だ。

壁伝いに時計周りに走って避ける。次々と糸が飛んでくるが、フィールドをぐるっと囲う事で敵の動きは制限される為、避ける事自体はそう難しい物では無い。

事前準備なしに挑むと、この攻撃に加えて周囲からわらわらとジャイアントスパイダーが押し寄せてくる為、その対処に追われる内にクイーンジャイアントスパイダーの糸に絡め取られてしまう事が多い。

俺にとっては慣れ親しんだ作業だし、予想に反して特におかしな動きも無く、見知ったモーションばかりだから避けるのは簡単だった。その間に、ドスッ、ドスッっと次から次にクロスボウの矢が突き刺さっていく。

さすがにフィールドボスなだけあって、上部に表示されたHPバーの減少はゆっくりとしたものだが既に２割は削れている。この分なら5分も掛からずに討伐が出来る筈だ。それ位なら壁が破壊される事も無い。

フランシーヌの事も気にはなるが、さすがに慣れているとは言え他所見をして回避に失敗したのでは目も当てられないので目の前の敵に集中をする。それでも、位置によってはフランシーヌを視界の端に捉える事もあるし、弓で攻撃を加えているのも見て取れるので問題はないだろう。

そして予想通り5分を待たずにクイーンジャイアントスパイダーの討伐が完了した。

実際には数百本は矢が突き刺さっている筈だが、ボスモンスターはその様なダメージエフェクトは表示されないので綺麗なままだ。

さて素材の採取だが普通ならピッケルでの解体一択だ。剥ぎ取りなら良質な食材が入手出来るが、ゲームだと味は二の次だし性能は数でカバー出来るので、ボス素材の食材は大して必要にはならない。

だが、折角ならちゃんと食べてみたい！剥ぎ取りと解体を半々で行う事にした。

ダマスカスピッケルならレア素材が入手出来る可能性はあるが、必要となるレシピのアンロックは先なので、回数重視で鉄のツールを使用する事にしよう。

とは言え、採取を完了するとボスの死体は消えてしまう。どうせならフランシーヌに見て貰いたかったので、先に外のジャイアントスパイダーの採取を済ませる事にした。壁に設置している扉から外に出る。

「クイーンジャイアントスパイダーの討伐、おめでとう御座います！」

壁の外側に設置しているスロープから、丁度フランシーヌが降りてきた。俺の姿を認めると、走って来て満面の笑みで祝福の言葉をくれた。

「ありがとう。フランシーヌもお疲れ様。怪我は無かった？」

「お気遣いありがとう御座います。私は全く問題ありませんでした。」

ボス討伐に興奮してか、声は弾んでいて、フランシーヌの目がキラキラと輝いている様に見える。

「俺は周りのジャイアントスパイダーの片付けを先に済ませるから、良かったら中で見てて。」

「はい、お任せしてすいません。」

フランシーヌは一礼をすると中へと走って行った。討伐記録は無いとの事だし、あの巨体だ。一見の価値はあると思う。

フィールドの周りをグルッと一周すると、結構な数のジャイアントスパイダーの死体が転がっていた。手早く採取を済ませてしまう。

ジャイアントスパイダーなら戦闘エフェクトとして突き刺さった矢が表現されている。ボス戦では表示されないが、仮に全ての矢を表示すれば処理にそれなりの負荷が掛かり、遅延が発生する事もある。初期の頃は全て表示していたが、遅延によるクレームが頻発した為、表現が緩和されたと聞いた事があった。

処理遅延が発生すると、キャラクターの動きがもっさりとしたものになる事がある。ボス戦の最中に遅延が発生すれば、遅延が原因でボスの攻撃に当たり易くなるから、クレームも当然と言えば当然だろう。

中に戻るとクイーンジャイアントスパイダーに向かって、フランシーヌが祈りを捧げていた。

◆Memo

ダマスカスのピッケル

通常レシピ

ダマスカスのピッケル　技術レベル100　ダマスカスのインゴット×10 (武器作業台)

ダマスカスのインゴット　技術レベル100 鉄鉱石×100、木炭×50 (電気高炉)

電気高炉　技術レベル80 鋼鉄のインゴット×500、電子回路×100、銅線×100、コンクリート×1000

課金レシピ

ダマスカスのピッケル(レア等級) 　技術レベル110 鉄鉱石×500、木炭×250 (作業台)

必要素材の採取と作業台のクラフトだけなら最序盤から可能。

後発組の救済課金アイテムの為、あえて必要技術レベルが高めに設定されていて、これだけで技術レベルを120まで上げられる様になっている。

攻略サイトでは無課金勢でもこれだけは買えとおすすめされる課金レシピ。そのお値段980円。破格の性能の為、古参組からの反発も大きかった曰く付きのレシピである。

卓也はSNSや攻略サイトは見ない派で、かつ課金レシピは基本全部販売されれば即購入をしていたので、世間の騒動は気付かなかった。