第22話 家を借りる。契約をする。

と言う訳で、適当な家を借りる事にした。物件について拘りは無い。むしろ町の外周付近の安い家なら、家の作りも簡素で家の中が半分くらいは土間だったりするので、掘り進めるのも簡単だろう。空き家も直ぐに見つかるだろうし、契約も何だったら直ぐに出来るとの事。そもそも収入が安定しない層の人達が住んでるらしく、人の入れ替わりが激しく短期契約も多い為だ。その辺りの土地は領主の管理になっていて、町指定の不動産屋が管理をしているので対応もちゃんとしてて話が早い。


問題と言えば治安位なものだが、こう見えてフランシーヌさん、むちゃくちゃ戦える。ジャイアントスパイダーと戦う時は牽制役だが、ジェロームが体勢を崩した時に援護をする事もあるそうで、小型の盾で攻撃をいなす位は出来るとの事。

身体を強化する奇跡、もとい魔法もあるそうで、ポールやジェローム相手でもある程度は戦えるそうだ。つまりこの町でなら有数の実力を有している。

むしろこれで回復魔法まで使えるのだから、総合的にはポールやジェロームを上回っているんじゃ無いだろうか。

フランシーヌがパーティーを離脱する事で殆ど悩む事なく解散を選択したのは、タイミングもあったのだろうが単純に戦力の低下が著しい事も要因の様だ。


さすがに多人数に囲まれれば解らないが、相手が2〜3人位なら恐らくこの町で相手になる奴は居ない。そう言われて安心出来る訳でも無いのだが。うーん、不安で仕方無いが、そこはちゃんと信頼をして任せないと俺のフランシーヌへの依存が進む可能性があるから要注意だ。


昼前にはフランシーヌ主導で早々に家の契約を済ませる事が出来た。賃料も1ヶ月で40銀貨。安く感じるが木賃宿なら一泊10銅貨、1月で3銀貨だからむしろ高い位なのだと。治安は思ったよりも良い場所でそこそこの広さが有り、家の周囲は塀でちゃんと囲まれている。行商人や冒険者が短期で契約する事が多く、家自体もそこそこの広さがある。土間も炊事場兼用なので結構広さがあった。家具も最低限揃っているので、手ぶらでも今日から生活もできる。至れり尽くせりだ。


早速採取を始めようと思う。その間フランシーヌは調べ物をしてくれる手筈になっている。前に検証した通り、リアルでの採掘作業は危険が伴う為フランシーヌを連れて行く事は難しいし、今後の為にも並行してフィールドボスのあたりを付けておきたかったからだ。


ちなみに宿はそのままにしてる。ただ、ここなら豪奢な寝台を設置できるので、寝泊まりはこっちでしようと思っている。夜、声が漏れる事を心配する必要が無いしね!

幸い家から宿は10分位の距離なので、夕方は宿で夕食を食べた後蒸し風呂を利用して、その後はこちらに戻って朝まで過ごす事にした。


っと、その前に装備について試してみなければならない。実の所、勝算が無かった訳では無い。

エターナルクラフトは施設の巨大化に伴い1人ではカバーが出来ない部分が増えてきた。特に文明レベル2以降は施設は巨大化するし、大規模なPvP要素があり、全ての兵器を自動化で対応するのは困難だった。採取やクラフトの自動化施設や兵器の自動化は通り一辺倒の事しか出来ず、融通が効かなかったからだ。その為文明レベル2以降はNPCを雇用する事が出来る様になっている。むしろ大型設備になると自動化しても、稼働する為には一定数NPCを配置しなければならない。


手続きは簡単で、友好度を上げて親密な関係になって、NPCメニューから契約を選択するだけだ。契約関係になると装備品を渡して装備を任意に変更する事が出来る様になる。


フランシーヌのネームカラーはオレンジで親密。久々にクラフトモードへ切り替えててフランシーヌのネームを意識する。よし、NPCメニューが選択出来る!


・プレゼントを贈る

・契約を行う


プレゼントは贈る事で友好度を上げる事が出来るが既に親密な状態だから今回は迷わず契約を行う。契約完了のエフェクトがフランシーヌを包み込む。ネームカラーは無事契約状態にある紫色に変化した。


因みにネームカラーの種類は次の通り。


赤色 エネミーカラー。敵対的な状態。

水色 中立状態

青色 友好的な状態

オレンジ色 親密な状態

紫色 契約状態


「フランシーヌ、どう?変な所は無い?」


「凄いです。ご主人様の事をはっきりと感じる事が出来ます。」


頬に手を当ててうっとりとした表情でそう答える。感じるとはどう言う事なのか聞いてみると、神の奇跡を行使する時は神の気配を身近に感じられるとの事。その時と同じ様に、俺の気配を身近に感じ取る事が出来るらしい。


聖女は特別な奇跡を行使する事が出来るが、その奇跡が神託オラクル。聖女は直感に優れていて、時々予兆を感じる事がある。その時に神託を使う事で、より具体的な指標を授かる事が出来るのだそうだ。

この町の教会に拠点を置いたのも、幼馴染のポールと再開した際にパーティーに誘われた時、要求を請けたのも神託があったからで、正に神の導きだったとの事。そして神託を使う時は濃密な神の気配を感じ取る事が出来るのだと言う。

契約後はずっとその時と同じ感じで、それこそ俺と離れても常に俺の存在を感じる事が出来るのだそうだ。その気配自体神の気配と変わらないとの事で、やはりご主人様は神の現身たるお方だと確信を深めた様だ。


嬉しくも有るけど、何それ、怖い。うん、契約をする相手は慎重に選ぶ様にしよう。。。


そう言う訳で無事に契約を結ぶ事が出来たので、メニューから装備品をドラッグしてフランシーヌを選択する。

すると、予想通り一瞬で装備を切り替える事が出来た。因みに渡した装備を取り外す機能はないので、装備を外す時は手作業で行う必要があった。


動きを阻害しない様に、俺が元々装備していたユニーク級の魔獣の硬革鎧をフランシーヌに装備させる。序でに魔獣の大牙の首飾りも渡しておいた。

獲物については片手剣でも問題は無いとの事だったので、同じくレジェンド級の鉄製の片手剣を渡す。鎧は動きを阻害するどころか軽微だが行動速度を早めてくれる。加えてレジェンド級の片手剣なら攻撃速度がかなり上昇するので、その事を伝えた。

早速、軽く動いて身体の動きを確認するフランシーヌ。

フランシーヌが踏み込み度に床がキュ、キュっとなるが、ぶっちゃけ早すぎて目で追う事が出来ない。剣も軽く振っている事は解るが、ぶれた剣先が辛うじて見える位で、何が何やらさっぱりだった。え、リアルってこんなにヤバいの?まるで勝てる気がしないんですが。


俺がドン引きする横で、フランシーヌがさすがですご主人様と喜んでくれたのは何よりだ。


因みにリアルモードに変更をすると、革の鎧はフランシーヌの豊かな胸を殆ど圧迫しない見事な立体成形になっていた。魔獣の革をここまで体型に合う様に加工する事はよほど熟練した職人でも難しいらしい。強調された胸のラインはお世辞抜きで素晴らしい。幸いな事に昨日購入したワンピースは胸元をしっかりと隠してくれている。これで胸元が開いた服を着ていたら多分胸の谷間が素晴らしい事になるだろう。


だが、俺がそれを愛でるのは大歓迎だが、それを他の奴らが目にする事は何となく許せない。ワンピースがしっかりと隠してくれるのは幸いだった。

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