第21話 今後の予定
朝は夜明け前に目が覚めた。フランシーヌはお疲れの様で、俺の隣で気持ち良さそうに寝息を立てている。
俺は起こさない様にそっと抱きしめると、フランシーヌの美しい髪を手で漉く。フランシーヌと出会えただけでも俺はこの世界に来て良かったと、俺をこの世界に連れてきた誰かにしみじみと感謝をする。
フランシーヌが起きるまでの間、これからの予定について考える事にした。
まず預けた素材については、今日か明日位にはその処遇が決まる筈だ。領主が買うのか、それ以外の貴族が買うのか、はたまた商会が買い上げるのか、王都でオークションに掛けるのか。
王都でオークションに掛けると、どうしても結果が解る迄に更に時間を要してしまう。その場合はオークションよりも価格は下がるが商会に買取をお願いする事も出来る。実際冒険者は即金を好むそうで、買取を希望する事も多いそうだ。
その後はポール達の依頼が正式に完了するので、それをもってパーティー解散の運びとなる。今日・明日中には関係者にその旨を伝えて、明後日の夜に解散を祝う宴会を行うとの事。つまり明後日迄は大きく動く事は出来ない。
その後であればクイーンジャイアントスパイダーの討伐が最優先だろう。今後の為に他のフィールドボスの情報収集も行う必要がある。そこはフランシーヌに相談をしてみよう。
エターナルクラフトと同じであれば、フィールドボスは次の通り。
森林バイオームのタイラントボア(暴君猪)
沼バイオームのギガントトード(巨大蛙)
火山バイオームのファイアーサラマンダー(炎オオサンショウウオ)
凍土バイオームのソードトゥースタイガー(剣牙虎)
草原バイオームのストレイシープ(迷える羊)
砂漠バイオームのアーマードキャンサー(装甲蠍)
古代墳墓のデミリッチ(出来損ないの死霊の王)
巨木バイオームのクイーンジャイアントスパイダー(巨大女王蜘蛛)
この内の3体を倒す事で、技術レベル20以上の技術ツリーをアンロックする事が出来る。アンロックが出来れば鋼鉄系のレシピが解放されるので、鋼鉄系の採取ツールに更新する事で採取出来る素材が格段に増える。
タイラントボアやギガントトード等は徘徊型なので、調べれば目撃情報が出てきそうな気がする。フィールドへの立ち入りが容易で出現条件も特に特殊なものでは無いからだ。
火山は熱対策が必須なので難易度が高いが、専用ポーションを作れば良いだけなので何とかなるだろう。課金レシピでショートカット出来るので火山にさえ行けば必要な素材は揃う。近くに火山があるなら目指すのも手だ。凍土も同様。対策必須だがこれも課金レシピで対処が出来る。火山や凍土なら地図を確認できれば特定は容易だろう。
砂漠も比較的簡単ではあるが、ボスが地中に潜航するので地形やクラフトを利用した討伐がし難く難易度が上がる。
因みにフィールドボスで一番の難敵はデミリッチだ。日本語だと出来損ないの死霊の王と呼ばれるが、魔法により遠距離から飽和攻撃をしてくる上に物理攻撃が利かない難敵だから出来れば避けたい。
そうなんだよな、クラフターは魔法が使えないのに、敵には魔法を使う奴が結構いる。まぁスケルトンなんかも普通に居るので、よく考えれば結構ファンタジーな世界だなと思う。
因みにデミリッチを倒す為にはどうするかと言うと、後々クラフトが可能になる属性付与をされた武器が古代墳墓でたまに見つかる宝箱から発見できるので、それを装備して戦う事になる。他のボスと違ってフィールドギミックや自動化による攻撃では対処が出来ずガチンコになる為、ただひたすらに面倒臭い。
それ以外としては今後の拠点をどうするかだ。町から離れた場所に拠点を改めてクラフトするのも手だ。一度作った拠点は簡単に持ち運びが出来る。色んな野菜の種も手に入れたから栽培をすれば作れる料理も格段に増える。
出来れば鉄のストックも増やしておきたい。町中でも地下に穴を掘れるなら一番だが、面倒毎を考えるとやはり町の外で採取を行うのが一番簡単な気がする。これも相談をしてみよう。
そして何より、フランシーヌの装備を揃える必要がある。俺の鎧なら勝手にサイズを合わせてくれるがフランシーヌ用ともなればそうもいかないだろう。
クラフターと言えどもクラフト自体はシステム任せで、実際に俺自身の手で何かを作れる訳では無い。俺が作った防具をフランシーヌが装備出来るのならそれが一番だが、何か手はあるだろうか。フランシーヌを傷つける訳にはいかないから、これも優先事項だ。
どんな装備を作るのかも含め、早急に考える必要がある。手持ちの素材とレシピでは作れるものは限られるからそもそも選択肢は少ない。昨日武具屋に並んでいた装備の中で一番良い物を揃えるのも手だが、恐らくは俺の等級が高いレシピで作った装備の方が格段に性能は勝る筈だ。クイーンジャイアントスパイダーを討伐出来れば専用素材も手に入るのでそれが一番の近道だと思うが、さすがに万全を期す前にフランシーヌを連れてボス戦に挑む訳にはいかない。
いっそ拠点で待ってて貰う方が良い気もするな。待つ様に言えば、恐らくは拠点で俺の帰りを待つ筈だ。だが、俺としては出来ればフランシーヌと2人で成し遂げたいと思っている。俺がどんな風に戦うのかを、ちゃんと見て貰いたいからだ。
結局どうするかについてはフランシーヌが起きる迄に結論を出す事が出来なかった。
フランシーヌが起きるのを待って、食堂で皆を待つ。今日はそれ程待たずに6人が揃ったので、食事をしながら情報を共有した。
ジェロームとアンヌは正式に解散をしたタイミングでジェロームの故郷に戻って結婚をするとの事。
ポールとアメリーも解散を待って結婚をするが、住まいをどうするかについては悩み中。この町を拠点にして新しく家を建てるなら、俺が家をプレゼントすることにした。
アメリーは1日ポールと過ごした事で大分落ち着いたみたいで、昨日ほどポールにベッタリとはしていなかった。アメリーと言えば勝ち気な性格故か、何時も小難しい顔をしていた印象だったが、今はニコニコと笑みを浮かべていて幸せなんだなと解る。何よりその笑顔はとても可愛い。
俺とフランシーヌについてはどうするかは未定。これから改めてどうするかを決める。ただ解散前に町を出るつもりはないので、解散後にクイーンジャイアントスパイダーを討伐する事を宣言した。
朝食時だから食堂にはそこそこの人が居て、この町一番の冒険者パーティーが解散するとあってか注目を集めていた。このテーブルの話に耳をそば立てて居たのだろう人達が結構居た様で、俺がクイーンジャイアントスパイダーを倒す予定だと言うと周囲が俄かにざわつく。とは言えポール達は既に慣れた感じで驚く事も無く、気を付けろよと軽いノリで応援をしてくれた。
フランシーヌと朝食前の待ち時間と食後に話をした結果、優先順位を考慮して今日明日の動きは次の通りにした。
1 家を短期で借りて拠点を作る。
2 装備品の検証を行う。フランシーヌの装備を一式揃える。
3 地下へ掘り進める、素材の採取を行う。
4 俺が採取を行っている間、フランシーヌはギルドで聞き込みと図書館で資料のチェックを行う。
まず、町の外には出ず1ヶ月程短期で家を借りる事にした。町中には近くの川から引き込んだ水路がある為、上下水道は特に整備をされていない。領主の城の近くなら地下を掘り進めれば秘密の地下通路に当たる可能性があるかも知れないが、地下通路なんて噂程度のものだし、城の近くは貴族街で早々家は借りれないので、地下に掘り進めても問題は無いだろうとの事だった。
町の外に拠点を作る事も考慮したが、むしろ気にせずに好きにすれば良いと言われてしまった。恐らくケチをつけるとしたら領主位なものだが、クイーンジャイアントスパイダーを討伐出来る様なご主人様に誰が意見を言えるのかと言われてしまった。
そう言えば教会を出る迄はタクヤ様呼びだったが、正式にお仕えするのだからとご主人様呼びを固辞されてしまった。俺はフランクにタクヤとかせめてタクヤさんと呼ばれたいが、まぁ神様呼ばわりよりはマシかも知れない。
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