クラフター。異世界に紛れ込んだ俺はクラフト能力で立身出世を目指す?でも好きに生きて良いと言われたので、好きなクラフトをして過ごす事にします。
髭
第零話 銀河戦争
長かった。俺はここまでの道のりに思いを馳せる。
俺のは前は
オープンワールドのクラフトゲーム、エターナルクラフト。このゲームが人気を博してから既に10年は経っていた。
最初は良くあるサバイバルクラフト系のゲームと思われていたが、蓋を開けてみるとそう単純なゲームでは無かった。
裸一貫でスタートして、草や木、石と言った手近な素材収集から始めて、徐々に鉄鉱石や石炭、溶鉱炉で鉄を作り、そうやって素材を揃えながら様々な設備や装備を整えていく。
クラフトを行うと技術経験値を獲得する事が出来、技術レベルが向上すると技術ツリーの研究が進み、段階的にレシピが解放されていく。
周辺には様々なモンスターが生息しており、定期的に生活拠点を強襲してくるので、それらのモンスターから身を守る必要もある。
技術ツリーの研究を進めていくと、次第に設備は自動化が出来る様になる。そしてこの辺りから、ちょっと想像していたゲームとは毛色が違う事に気が付く。
モンスターの襲撃は時間の経過と共に大規模になり、守るべき拠点も巨大化し、自動化した防衛兵器により拠点は要塞化していく。剣と盾を構えて敵を倒すのではなく、拠点を整備して襲い掛かる敵を倒すタワーディフェンス要素の方が強い。
オンライン要素もあり、他のプレイヤーと時には協力をしたり、時には攻め合ったりする様になる。そして大陸を統一出来る頃になると、何と次のステップとして宇宙船が作れる様になるのだ。そしてゲームは更に次のフェーズ、宇宙開拓編へと移る事になる。
それからは様々な星を開拓し、更なる資源を獲得し、技術ツリーの研究を推し進める。
プレイヤー同士の交流も大規模な物になり、ついには星間航法を獲得し、大規模な宇宙開拓時代へと発展する。
俺はと言えば、日本で10本の指に入る廃課金プレイヤーとして有名だった。恐らくゲーム内に存在する課金レシピは全て押さえている筈だ。
当然サーバー有数の戦力を有している。そんな俺が参加しているクランは世界的にも有名なクランだ。なにせ銀河統一、つまりサーバー統一を果たした2つのクランの片割れなのだから。
そして2つのクランがサーバーを統一した事を記念して、銀河間統一を目指すクラン同士の銀河戦争が運営により催される事となった。運営主催の一大イベントとして大々的に開催されており、この戦いにより事実上の宇宙の支配者が決定する。そんな戦いだ。
この戦いの為に、俺は1年かけて惑星の開発を推し進め、資源を蓄え、数多の宇宙船をクラフトしてきた。クランは1000人規模で、この戦いには最新鋭の宇宙船が100万隻以上参加していて、今まさに開戦の時を待っていた。
廃課金アイテムの宇宙戦艦や宇宙空母も数多く参加している。因みに俺もボーナスをはたいて超ド級宇宙空母を3隻用意した。
課金で用意出来るのはレシピのみなので、結局クラフトをする為の膨大な資源は自前で用意する必要があるのだが。課金である程度効率化を図る事は出来るのだが、それでもこのクラスの空母を用意できるクラフターは数える程しかいない。俺の自慢の船だ。
このゲームはエターナルクラフトと言うだけあって、俺は稼働当初からずっと何かを作り続けて来た。それが、この戦いの結果を問わず一区切り着くのだから感慨深いものがある。
因みに戦い自体は始まってしまえばほぼ自動で処理され決着がつく。大まかな作戦はクランの首脳陣により立案されてはいるが、これだけの規模での戦いともなればスパイなんて幾らでもいる。作戦なんてあって無い様な物で、最後に物を言うのは物量と火力だろう。そもそもクラフトゲームだから戦闘が主目的では無く、宇宙船の操作もAI任せだ。この辺は最初の頃から一貫している。
アクション性や戦略性が皆無な点は一部では評価が分かれるが、その方面が苦手な俺でもこつこつと採取とクラフトを続けていれば、こうした世界の命運を決める戦いに参加出来るのだからやっぱり神ゲーだと思う。気が付けば10年、ほぼほぼ途切れる事無くのめり込んで続けてきたのだし。
さぁ、いよいよ開戦だ。クランマスターの号令が響き渡る。
画面中を埋め尽くした宇宙船がゆっくりと進撃を始め、戦端が開かれる。その光景を、俺は旗艦の艦橋から眺めていた。
画面中を光が埋め尽くす。そこかしこで弾ける光。1つ瞬く度に1隻以上の船が失われていく。
戦況図に目をやると、幾分俺達の陣営が押している様に思える。いよいよ佳境、主力である俺達の元にも敵からの砲火が届き始めた。そして視界一杯を輝きが埋め尽くした時、俺の意識は唐突に途切れるのだった。
この日、2つのサーバー間で行われた統一戦争は、俺が所属するクランの勝利で幕を閉じた。最終的な消耗率は9割を越えた。クラフター達が心血を注いで作り上げた宇宙船の数々は、その大半が宇宙の藻屑となって消えたのだ。
俺が有する超ド級次元航行空母ベヒモスは、昨年の10周年イベントで世界の課金ランキング上位50名を対象として限定販売された特別レシピだ。
正直とてもでは無いがここでは言えない価格となっている。流石にレシピ1つにその値段を出す訳にはいかず、運営会社の株を購入する形で優待権として付与されている。運営会社は上場しておらず株は非公開で普通に買う事が出来ないので、コアなファンにとってはレシピ以上に株こそが垂涎のアイテムとなっていた。
そんな特別レシピ製の宇宙船だから、この戦争でも動員された数はそれ程多くは無い。両陣営を合計してもその数20隻。その内3隻を俺が所有しているのだからなかなかのものだと言えるんじゃないだろうか。
この日、俺のベヒモスは1隻として沈む事は無かった。大半のベヒモスは轟沈したそうだが、3隻を集中運用する事による圧倒的な艦載機による火力とその防御力もあって多大な戦火をあげ、ついに沈む事は無かった。
俺はこの戦いで最優秀プレイヤーの栄誉を得る事が出来た。だが、残念ながら俺はその結果を知る事が出来なかったのだ。
Memo
物部卓也は、身長179cm。年齢は35歳。休みはもっぱらVRゲームをプレイ。流石にそれだけでは体力が維持できないので、週2ペースでフィットネスジムに通ってはいる。
健康維持程度の運動量なので、やや細身。ちゃんとした身なりをしていればそれなり、外資系証券会社勤務で当然収入もあって一見持てそうだが、女性には今の所興味が無い。女性に限らず人付き合いが苦手でプライベートはほぼ一人で過ごしている。
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