第7話 拠点改修

豪奢な寝台に寝る様になってからは、朝の目覚めが心地良い。すっと目が覚めて思い切り深呼吸をしながら腕を伸ばす。澄んだ空気が肺を満たして全身に活力が漲っていく。

毎日結構な時間を採取や採掘に費やしているからか、心なしか筋肉が付いてきた気がするし、体力もついた様に思える。適度な運動と快適な睡眠ですっかり健康的になった気がした。


3日ほど大樹の伐採に精を出したお陰で高級木材のストックは結構な量になった。日が暮れれば眠くなるまで地下を掘り採掘をしていたから、鉄鉱石も結構なストックになった。それ以外にも様々な資源を確保しているが、今は使えなくても今後技術レベルが上がれば様々なレシピで使用する予定がある。

高級木材のお陰で等級の高いピッケルを作れた事もあり、採掘量も飛躍的に増大した。


窓から光が差し込んでいるから夜は明けたのだろうが、差し込む光の強さを見ればまだ明けてそれほど時間が経っていない事が解る。ゲーム内ならいつ寝ても夜明けに目を覚ますので、ゲームと同じなのかも知れない。とは言え早起きは健康に良さそうな気もするし、特に睡眠不足も感じなかったから今の所問題は感じなかった。


昨日は拠点の更新を行ったから、今いる部屋は昨日までとは随分と様変わりをしている。

拠点の周囲には鉄で補強したバリケードを二重に設置して、拠点を囲う壁も鉄で補強した高級木材製に置き換わっている。

拠点内の床はモザイク模様のレンガを敷き詰めておいた。染料を獲得したので、レンガに着色が出来る。幾つかの色のレンガをクラフトすれば、それを原料としてパターン柄のレンガをクラフト出来る。

地面にパターン柄のレンガを敷き詰めて幾つかあるパターンから選択するだけで、簡単にモザイク模様のレンガ床の出来上がりだ。


拠点の四角のタレットはそのままだが、それぞれの壁の中間ポイントにレジェンド級の大型クロスボウを搭載したタレットを追加した。その内四角の迎撃用クロスボウもレジェンド級にアップグレードをする予定だ。

とは言えフィールドボスの討伐を行うなら一定量鉄資源が必要になるので、残りのアップグレードは後回しにしている。


家は豆腐ハウスを卒業し、高級木材を使用した家屋に作り替えた。

中は実用性重視なので二階建ての二層構造にし、一階は主に作業台や皮のなめし台などのクラフト用装置を順に設置している。

家の中央部分に階段を設けて、2階部分には床にスパイダーシルク製のカーペットを敷き詰め、豪奢な寝台やダイニングテーブルを設置してある。


通常なら作業台の横に素材を取り出しやすい様に収納箱を設置する。だが俺はアイテムボックスの容量には余裕があるから、クラフト用の素材は出し入れをする必要が無かった。その為、屋内に収納箱の設置は不要なので自動迎撃装置の矢玉の充填用に、屋外にのみボルトを詰めた収納箱を設置している。


高級木材には余裕があるから、その内装飾用の家具を色々とクラフトして内装に拘ってみたいが、今の所はそれ程必要性を感じなかった。内装に拘りのあるクラフターも多いが、俺はどちらかと言えばひたすら素材を収集したりクラフトしたりしてる方が楽しい。不安は懸念事項は多々あるが、仕事の事を気にせずに心ゆくまでクラフト生活が出来る現状は俺にとっては天国の様だった。


朝食を取り出して食しながら今日の予定を考える。さすがに何食も同じ食事が続くと飽きが来るから、現在は狼肉のステーキと大蜘蛛の茹で足をローテーションしている。とは言えレパートリーが2種類では流石に飽きが来るから、そろそろ新たな食材をゲットしたい。


森の奥に進んでクイーンジャイアントスパイダーに挑むのも良いだろう。どの道実績解除の為に討伐は必要だ。


そろそろ、この世界の集落を探したい気持ちもある。この世界は俺の知っているゲームとは細かい点で差異がある様に思える。そもそもリアルモードは本当に現実寄りでゲームとは色々と違いすぎる。

大狼と大蜘蛛を素材としたユニーク級の装備を揃えたので、早々ダメージを負う事は無いと思いたい。レジェンド級のレシピもあるからレジェンド級で揃えたい気持ちもあるが、なにせレシピは等級が上がる程に飛躍的に必要な素材数が増える。

大蜘蛛素材なら何日から籠れば必要な素材が溜まると思うが、大狼はレア個体なので出現数はそれ程多くない。ユニーク級までなら固有素材はそれ程要求されないから一旦はユニーク級で揃えてみた。

この世界の文明レベルがどの程度かが解らない。ユニーク級だから開拓初期の装備レベルとしては最高峰だが、万が一にも上位装備で等級が高い装備が相手では防御力が不足するだろう。技術ツリーの先にある上位の火器や化学兵器が相手ならそもそも相手にならない。

なるべく早く最寄りの集落にでもアクセスして、どの程度の文明レベルにあるのかを確認する必要があった。


何はともあれ、まずは夜の内に撃退したジャイアントスパイダーの剥ぎ取りを行う必要がある。それから、今後の方針を考えるとしよう。


拠点から外に出ると、周囲には夥しい数のジャイアントスパイダーの死体が散乱していた。これまでで一番数が多い気がする。手近な死体へと近付くと鉄の肉切り包丁を取り出して剥ぎ取りを行う。

剥ぎ取りといってもクラフトモードなら、死体に肉切り包丁を突き立てるだけで勝手に剥ぎ取りを行ってくれる。肉切り包丁を突き立てる度にアイテムボックスに素材が追加されていく。

剥ぎ取り回数は1匹当たり5~10回。肉切り包丁もレジェンド級にアップグレードしているので、ランダムに剥ぎ取り回数が増加する。その為、回収できる素材もかなり増えた。

因みに素材やモンスターにも等級があって、上位の等級の素材を入手しようと思えば、上位の採取ツールをクラフトする必要がある。まぁ恐らくはまだまだ先の話だろう。


そんな事を考えながらも手は勝手に動き、次々と剥ぎ取りを行っていく。ずっと繰り返して来た作業だからすっかりルーチン化していて、殆ど意識をしなくても身体が動くので、ぼんやり考え事をしている内にジャイアントスパイダーの死体も残り3体になった。


次の死体へと向かうと、ふと遠くからガチャガチャと金属が擦りあう音が聞こえてくる。そちらへ向き直ると、様々な装備に身を包んだ5人組がこちらに歩いて来るのに気が付いた。


図らずも、現地人と初の接触が出来そうだ。

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