第4話 巨木バイオーム

今日は巨木バイオームで木材の採取だ。


通常の木材と違って、巨木バイオームで採取出来る高級木材は強度が高い。高級木材は後々の様々なレシピで必要となるので確保しておいて損はない筈だ。

それにジャイアントスパイダーは蜘蛛の糸をドロップする。この糸からはスパイダーシルクと呼ばれる布を作る事が出来、様々な装備品や調度品をクラフトする事が可能だ。

蜘蛛の身も食用なので、すっかり舌が慣れてしまった狼肉のステーキと違った味で食事にバリエーションが出来るのではと期待もしていた。

そして何より、もしここにフィールドボスのクイーンジャイアントスパイダーが居れば、技術ツリーのアンロックに必要な条件を1つクリアする事が出来る。


技術ツリーの研究を進めるためにはクラフトや採取による経験値を稼ぐ事が必要だが、他にも一定以上技術ツリーの研究を進めたり、独自なツリーを開発する為には実績を解除する必要がある。

クイーンジャイアントスパイダーを討伐すれば、スパイダーシルクが必要な装備系統のツリーをアンロック出来るし、何よりメインの技術ツリーを次の段階に進めるために必要な実績の1つとしても数えられる。狙わない手は無いだろう。


巨木バイオームへの移動の際には、これまで手付かずだった草花の採取も行った。草花の採取には鉄製の鋏か草刈り鎌が必要になる。これらがクラフトする為にはそれなりにクラフト経験値をためて技術レベルを上げる必要がある為、クラフト出来る様になったのは昨日になってからだった。色とりどりの花からは染料が。また一部はポーション類の材料にもなる。他にも繊維や綿花も見つける事が出来た。


ついつい採取に熱が入ってしまった為、巨木バイオームに辿り着いたのはもうじき太陽が真上に差し掛かる位になってだった。

さて、巨木バイオームのエリア内に居ればその内ジャイアントスパイダーがやってくるだろう。俺は登録しておいたタレットを3基、手じかな木の周辺に手早く設置を行った。


拠点ともなれば小さくとも一定範囲を整地する必要がある。だがタレット程度であれば1mの平らな場所があれば設置が出来る。不思議なもので、リアルなら多少は傾斜や凸凹がある地面でも、クラフトモードにすれば全て50cm四方のキューブに置き換わるので、傾斜やでこぼこが其れ以内に納まるなら平らな場所と見做される。

だからタレットの設置はそれほど苦労する事は無かった。


因みに坂の角度が30度以内なら、2面は平面として見做される。実際に30度の坂ともなればかなりの傾斜になるので、逆に言えば余程の坂道、それこそ山の麓とか丘とかでも無ければ、クラフトモードで見ればほぼほ平らに見える。


タレットを設置すると、次はタレット3基の中央部分に当たる巨木の根本に、同じく登録しておいた収納箱を設置する。矢玉供給用で中にはタレットに設置している大型クロスボウ用のボルトが数千本納められている。これだけあれば弾切れになる事はまずないだろう。こうなればむしろ早くジャイアントスパイダーに襲って欲しいと願うのだから我ながら現金なものだと、つい笑いが溢れた。


さて、巨木ともなれば根元で斧を振るだけでは伐採は出来ない。これを伐採するには2つの方法がある。

1つ目は上部に至る迄足場を組んで、上の方から徐々に伐採を行う方法。巨木はブロック分けされていて、だいたい10箇所ほど段階的に伐採を行える様になっている。まぁ幹に直接足場を設置して、螺旋の階段状にして登ればいいだけなのでそこまで手間ではない。

2つ目の方法が、自動の伐採装置を設置する方法だ。採掘や伐採の自動化装置は技術ツリーをアンロックする必要がある。その為にはいずれかのフィールドボス3体の討伐実績が必要だ。今回選択肢は1つしか無いので地道に足場を組んで、上部から伐採を行う。

伐採はともかく採掘の自動化は早くしたいから、狙えるならフィールドボスは積極的に狙っていこう。


1時間もすれば1本目の伐採が完了した。戦利品は上質な樫の木が多数。葉っぱも枝もクラフトモードで伐採すれば、全て上質な樫の木のブロックで獲得できる。ここから棒や板に加工して様々なレシピに使用する訳だ。


因みに1時間の間にジャイアントスパイダーの襲撃が2回あった。1匹倒すだけで大蜘蛛の糸が5つ獲得できる。

巨木バイオームでは無いフィールドで出現する可能性のある通常のスパイダー、通常サイズと言っても1m近くはあるのだが、なら2〜3匹で1個蜘蛛の糸をドロップする。ジャイアントなら1匹で5個も落とすのだからすこぶる効率が良い。しかも大蜘蛛のとあるように、実際は通常の蜘蛛の糸よりも品質が高い。クイーンを討伐して専用の技術ツリーをアンロックすれば、専用の加工機械、大蜘蛛用の糸車と大蜘蛛用の機織り機がクラフト可能で、上質なスパイダーシルクとそれを素材にした製品がクラフト出来る様になる。


とは言え流石にクイーンジャイアントスパイダーに正面から挑んで勝つのは現時点での技術レベルでは不可能だから、色々と準備も必要になる。今すぐに探して挑むと言う訳にはいかないだろう。出来ればタレットがもう何基かは欲しいし、ボスフィールドを囲う施設をクラフトする必要がある。木や石では強度が足りないだろうから鉄もまだまだ必要になる。


さて、夜は大体地下で採掘を行っているが、ならいつ寝てるのかと言えば今の所は日中だ。体感で1日3〜4時間も睡眠をすれば十分だが、流石にかなり疲労が溜まっているし、そろそろ眠たくもなってきた。


伐採が完了して辺りを手早く整地すると、拠点を設置。タレットも再配置した。現在は元々のタレット4基に加えて、レジェンド級のタレットが3基。正直クイーンジャイアントスパイダーが襲いかかって来てくれれば撃退出来るんじゃないだろうか。クイーンは専用フィールドからは出てこない筈なので、まぁ残念ながらそう言うわけにはいかないが。


因みに現時点でクイーンジャイアントスパイダーを討伐しようと考えるならば手順は次の通りになる。まず、ボスフィールドの周辺には数多くジャイアントスパイダーの巣があるので、これらを片づけて粗方木も伐採する。次にボスフィールドをぐるっと囲むように高い壁で強固な足場を作る。

クイーンジャイアントスパイダーの攻撃は建築物へのダメージもあるので木や石で作った足場では簡単に破壊されてしまう。その為、最低でも鉄製の壁が必要となる。

その上で鉄の壁を並べて上部に屋根を設置して作った足場に迎撃用のタレットを設置していく。ボスフィールドの内側には建築が出来ないので境界線にそって全体を囲って行く。当然結構な範囲だし、必要となる素材量も多い。ボスフィールドを囲う壁はクイーンジャイアントスパイダーが戦闘中フィールドの外からジャイアントスパイダーを召喚する為、その増援を防ぐ為でもある。


その上でボスフィールドへと乗り込み、あとはひたすらに逃げ回るだけだ。専用のフィールドと言えども戦闘中に隔離される訳では無いので、壁際を走り回ればフィールド外のタレットが攻撃をしてくれる。タレットに設置している大型クロスボウは俺が装備できるクロスボウの5倍位の大きさと破壊力があるので、確実に俺が攻撃するよりもダメージ効率が良い。


さて、そろそろ限界に近いので手早く本日ゲットした大蜘蛛の糸と上質な樫の木、そして綿花でクラフトを行う。

巨木バイオームで獲得出来る上質な樫の木と大蜘蛛の糸があれば、様々な家具製品のクラフトが可能になる。因みに課金で基本レシピは事前にゲット出来る。当然課金レシピは獲得済みだ。


そして、クラフトした家具を早速部屋の中に設置した。


豪奢な寝台!天蓋付きで、側面には精緻な細工が施された見事なベッドだ。普通に買ったら幾らするんだろうな、これ。そして上質なスパイダーシルクで作られた布団一式。現実でシルク製の布団に触れる機会なんて流石に無かったが、さっと撫でると何故これが最上級品と言われるのかが理解できる肌触りだった。

ちなみに、フィールドボスを倒して技術ツリーをアンロックした後なら同じ豪奢な新台を作る事が出来る。

だが、課金専用レシピの場合は、大蜘蛛の糸を上質なスパイダーシルクに、上質な樫の木を高級木材にそれぞれ加工しなくても、直接素材としてクラフトする事が可能になっている。

課金レシピにはこうした幾つかのステップがショートカット出来たり専用素材の必要数が少ない物が多い。

最初の頃は巨木バイオームに辿り着いて初めてクイーンジャイアントスパイダーを倒すまでに1ヶ月は掛かった記憶があるから、討伐前に専用家具を作成出来るのはかなりのショートカットだった筈だ。


さて、寝台が出来たのなら、する事は決まっている。俺は布団に潜り込むと、その肌触りを楽しむ事もなく一瞬で眠りに落ちるのだった。



◆Memo


用語集


技術ツリー:各種技術を習得する為の樹形図。技術レベルを上げる事で対応したレベルの技術をアンロックできる他、特定の条件を満たす事で派生ルートの技術をアンロックする事も可能。技術毎に幾つかのレシピをアンロック出来る。


技術レベル:敵を倒したり採取をしたりクラフトをしたりする事で経験値を獲得出来る。経験値が一定数蓄積する毎に技術レベルが上がる。技術レベルが上がると技術ツリーで新しい技術をアンロック出来たり、クラフトに掛かる時間が短縮される。


陳腐化:技術ツリーで習得できるレベルより、現在の技術レベルが10上回ると、その技術は陳腐化する。クラフトに掛かる作業時間の大幅軽減、必要素材の減少とメリットもあるが、技術経験値が獲得できなくなるデメリットも存在する。


アンロック:技術ツリーやレシピは、習得前は鍵の掛かった状態で表示される。鍵を確認すれば解除する為の条件は事前に確認が出来る。条件を満たせば、鍵を開錠、アンロックして技術やレシピを習得する事が出来る。

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