第117話 愛莉のお風呂♡


 田舎の長い1日が終わり、辺りはすっかり夜になっていた。


 俺と愛莉が家に帰って来ると、元爆乳おばあちゃんことBBが夕飯を用意してくれていた。


「わぁ! 愛莉の大好きなキノコの混ぜご飯に牡蠣の天ぷら! めっちゃ美味しそう!」

「いやぁね〜。愛莉がを連れてきたって、村の会合で話したら村中の人が色々くれてねえ」


 オホホと笑いながら食卓に料理を並べていくBB。


 牡蠣の天ぷらに、キノコの混ぜご飯、あさりの味噌汁、納豆、アボカドのサラダ……か。


 田舎といえば煮物ばかりのイメージだったが、それとは裏腹にやけに小洒落た夕飯だ……が、妙だな? 俺の知識が正しければこのメニューの素材はどれも食べ物……のような。


 俺がBBの方を見ると、BBはニヤリと口角を緩ませる。


(なるほど……もしかするとこれは、ってことでいいのか?)


 精力をつけて夜に何が起きても止めない……と?

 確かに思い返すと、俺たちが屋根裏部屋で一緒に寝ることを話しても何も言ってこなかったし、これって……。


「美味しそう! いただきまーす!」

「コラ愛莉! お客様の前でガッツいちゃダメだよ」

「はーい」


 BBに注意された愛莉は大人しくご飯を食べ始める。


「ほら諒太くんもぉ、食べんさい」

「あ、はい。いただきます」


 BBに促され、俺も愛莉の隣に座って夕飯をいただくことに。


「諒太くんも遠慮せずたくさん食べてるんだよぉ? はぁ。早くひ孫の顔が見たいわぁ」

「むしゃむしゃ、ん? ひ孫? おばあちゃんどゆこと?」

「なんでもないわぁ」


 BBは俺の方にウインクしながら誤魔化す。


(やっぱこのBB……確信犯か)


 そりゃ俺だって、もし仮に愛莉とできるなら大大大大大歓迎ではあるが……愛莉は子どもっぽいし、俺と一緒に布団を並べて寝るのも、ちょっとした林間学校くらいにしか思っていないだろう。

 だから、どれだけ精力のつく牡蠣を食っても俺が悶々とするだけだ(もちろん家に帰るまで我慢するが)。


「ごちそうさまでした! あー美味しかったー!」

「いや、もう食べ終わったのかよ! 食うの早いな」

「諒太が遅いだけだよー! それじゃ、さっきは愛莉が1着だったから、愛莉が一番風呂ね! 行ってきまーす」


 相変わらず忙しない愛莉は、ドタバタとその爆乳を揺らしながら風呂場の方へ向かった。


「ほんといつも愛莉がごめんねえ」

「い、いえいえ! 大丈夫です。慣れてますから」


 必然的にBBと二人きりになった俺は、夕飯を食べながらBBと会話を交わす。


「ふふっ。まさか、愛莉とこんなに仲が良い男の子がいるとはねえ」

「な、仲良く見えますかね?」


 ここに来てからずっと愛莉と二人でいたから、こうやって愛莉のおばあちゃんと二人きりにされるとなんとなく落ち着かない。


 ただでさえ内弁慶の陰キャに、このシチュエーションはキツイ。

 な、何を話せばいいんだ?


「愛莉はねえ」


 俺が黙々と夕飯を食べていると、BBが口を開いた。


「物心ついてない頃にお父さんを亡くしてねえ。しばらくの間はここに住んでいたけど、やっと母親の仕事が決まったと思ったらすぐに街へ出て行ってしまったんよ」

「そう、だったんですか?」

「そうよぉ。ほんとっ! あの子の母親はアホでねえ。あたしと祖父じいさんがなけなしの金で都会の大学入れてやったのに、グラビアとやらを始めて1年で大学中退したり、そしたら今度は知らない間に子供作ってたり。ほんと、親として恥ずかしいばかりよぉ〜」

「へ、へぇ……」


 BBによる娘disりが始まってしまい、完全に部外者の俺は困惑しかない。

 てかグラビアって……愛莉の母親って元グラドルだったのか? ちょっと後で愛莉にお母さんの名前聞いておこう……。


「でもねえ。あんな馬鹿な娘でも、旦那が死んでからは愛莉のために必死になって働いてるんよ。貧しくてもちゃんと愛莉を素直で真っ直ぐな子に育てて……」


 そう話すBBの目には涙がにじんでいた。


「あ、あの。大丈夫ですか?」

「大丈夫よぉ。それにしても愛莉がこんな好青年を連れて来るなんて嬉しいねえ」

「こ、好青年? 俺が、ですか?」

「そうよぉ。死んだ祖父さんによく似ちょる」

「へ、へぇ……」


 俺に似てる人間って。

 こちとらただの陰キャ童貞オタクなんだが。


「愛莉のこと、幸せにしてあげてねぇ」

「え、あ……はい」


 別に付き合っているわけではないが、空気を読んで俺はそう答えるしかなかった。


 ☆☆


 夕飯後、俺は愛莉が風呂から出るのを屋根裏部屋で待っていた。

 別にリビングにいても良かったが、あのBBと二人きりになると、また反応に困る話をされそうで気まずかったのもあり、俺は屋根裏部屋に戻ったのだ。


「はぁ……それにしても愛莉のやつ、長風呂だな」


 それだけ愛莉のエキスが風呂に……と思うのは流石にキモすぎると思ったが、やっぱりそのことばかり考えてしまう。


 同級生女子の後風呂に入れる機会なんて、普通に生きていたら味わうことはない。


 愛莉の出汁湯……や、やばい、そんなことばかり考えてたら下半身が……っ!


「諒太ー! お先にお風呂いただいたよー」


 梯子を登ってひょこっと屋根裏部屋に顔を出した愛莉。

 下半身が盛り上がっていた俺は、刹那的に母親の顔を頭に浮かべ、一瞬で下半身の血流を落ち着かせた。

 これが刹那的下半身鎮静術を極めし俺の生業ワザだ。

 散々親フラを味わって来た分、その辺の男たちとは経験値が違うんだよ。


「諒太? 早くお風呂に」

「お、おう! それじゃあ俺もお風呂をいただこうかな?」


 若干内股になりながらも、俺は澄ました顔で対応する。


「あ、あのね、諒太っ」

「ん?」

「あの、さっき、おばあちゃんと話してた……あ、愛莉のことを、その」

「おばあちゃんと? ああ、なんだよ愛莉。盗み聞きか?」

「ち、ちがっ! 着替え用に持って来てたブラのホックが壊れてたから、別のブラ持って来ようと思ったら、たまたま聞こえてたっていうか!」


 愛莉はやけに慌て気味にそう言う。


 なんだ愛莉のやつ、俺とBBの話を……って、ちょっと待てぃ!

 ぶ、ぶぶ、、だと!?


(や、やっぱ胸って、デカ過ぎるとそういうことが日常茶飯事なのだろうか……ごくり)


「ち、ちょっと諒太? 聞いてる?」

「……へ? 何が?」

「だ! だから! あ、愛莉のことを、しあ……も、もう! やっぱりなんでもない! 諒太のバカ!」

「なんでさっきからそんな怒ってんだよ。もしかしてブラのホック壊れたからピリピリしてるのか? そ、それじゃあ俺がそれ直してやるから、そのブラをぜひ俺に」

「さっさとお風呂行って! 諒太のバカ!」


 普通に怒られた。

 もしかしてブラのこと考えてたのバレたからあんなに怒ってたのか……?


 俺は多少反省しながらも、内心スキップしながら風呂場へと向かうのであった。

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