第109話 テストの結末!新しい恋の行方?
教室に着くと、いつもみたいな騒がしさは全くなく、黙々とシャーペンを走らせる音と教科書のページを捲る音だけがする。
一緒に来た俺と瑠衣もその空気を感じ取り、言葉を交わさずに教室に入って勉強を始めた。
(やっぱみんな集中力が違うな……教室の空気もなんかピリピリしてるっつうか)
意識高い系の生徒も多いが、全員が全員そうであるわけではない。
中には優里亜や愛莉のように赤点回避に燃えている人間は多い。
そもそもうちの高校の赤点は各教科の平均点の半分の点が基本的に赤点ラインとされておって、進学校ということもあって必然的に赤点の
それもあってか、入学してから勉強をサボりがちだった愛莉や優里亜は、毎回逆張り出し組として赤点を取りまくっていた。
(でも今回は頑張ってたし、きっと良い点を……って、あれ? そういえば優里亜と愛莉はまだ来てないのか?)
俺は左隣と前の席を見ながらそう思ったが、ちょうどその時、廊下から2人が教室に入って来るのが見えた……のだが。
(な、なんだありゃ)
二人ともテストをやる前から疲れ切った様子で、目の下にもクマが出来ていた。
あれは……間違いなく徹夜したな。
「お、おはよぉ〜、諒太ぁ〜」
残りライフ10くらいの、ヘニョヘニョな声をした愛莉が挨拶して来た。
「お、おいおい大丈夫なのかよ」
「大丈夫大丈夫〜愛莉元気だもん〜」
「元気って、どこが」
「おはぉ〜、諒太ぁ」
「ゆ、優里亜……まで」
俺の背後を通って、左隣の席に向かう優里亜の声も色んな意味で終わっている。
なんつー声出してんだこの二人!
「ふ、二人ともそんなんで大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。あたしら二人、朝まで電話繋いで勉強してたから」
「朝までって」
それくらいやる気があるのはいいが、本番でこのコンディションって。
右隣に座る瑠衣も呆れた様子で肩をすくめていた。
「てかマジ、このテスト終わったら遠慮なく諒太でストレス発散すっから。ね、愛莉」
「いーねー、承知のすけー」
「おい待て。いつから俺はお前らのストレス発散グッズと化したんだ俺は」
「とりあえずテスト終わったらさ、みんなで駅前のカラオケチェーン全店舗巡りしよ!」
「回るわけないだろ! カラオケは1店舗で事足りる!」
俺がツッコんだ瞬間、大声でツッコんだからか、周りから「うっせえ! ●すぞ!」と言わんばかりに殺気の籠った視線が飛んできた。
(ひょえっ、すみません……)
俺は萎縮しながら教科書で自分の顔を隠す。
「てかあたしら二人、昨日やった確認作業で既に好成績だったから赤点は取らなさそうだし」
「諒太、覚悟しておいてねー?」
逆貼り紙の2人は、赤点を取るわけにはいかないとかなり意気込んでいる。
まあ特に愛莉の場合はバイトの件もあるし、絶対に赤点は回避したいだろうけど。
(やけに自信がありそうなのがフラグになりそうなんだよなぁ……)
一抹の不安を胸に、二日間に渡る期末テストが始まったのだった。
☆☆
——期末テストから数日が経った週末。
ついに今日は待ちに待ったテスト返却日。
全教科のテストが当日中に返却されるのだが……なぜか結果は放課後に一気に見せ合うということになっていた。
こうして放課後に教室に残った優里亜、愛莉、瑠衣の3人は、俺の机に「これを見よ」と言わんばかりテストの結果を叩きつける。
「どうだ諒太! あたしらの実力は!」
その自信満々な表情から分かるように、心配されていた優里亜と愛莉の2人とも、赤点ラインはクリアしていたのだ。
今回のテストは意外と赤点ライン高めだったのに……。
「すっ、凄いな二人ともっ!」
「当たり前だし。あたしらめちゃ勉強したんだから」
「いやいや、赤点回避もそうだけど、よく見たら愛莉の数学は70点だし! 優里亜も英語80点!? マジで凄いじゃないか!」
「あ、あんま褒めんなし」
「愛莉たちは本気出せばこんなの楽勝だもんっ、これでバイ、じゃなくて諒太を好き放題できるねっ!」
一瞬バイトのこと口滑らせそうになっていた愛莉だったが……ま、一件落着ってことで良いとしよう。
「ねえ諒太くん? わたしは全科目98点以上、ほぼ100点で学年ダントツ1位だったんだけど?」
「え? ああそうなのか? また1位……か」
「い、ち、い、だったんだけどなぁ〜?」
瑠衣はジトっとした目つきで、やけにしつこく言ってきた。
も、もしかして……わたしも褒めろ、的なアレか?
……よ、よく分からないが、そういうことなら。
「す、凄いな瑠衣! またダントツで1位だなんて! きっと今ごろ田中の奴は悔しがって」
「ふふっ……褒めるなら他の女の名前出さないでもらえるかな?」
「え? あ、はい……すみません」
褒めたのになぜか怒られる俺。
な、なんだよ。黒木瑠衣は1位しか取ったことないに今さら1位褒められても別に嬉しくないだろうに!
「ふーん、なんだ。瑠衣も諒太に褒められたいん?」
「別に? わたしは褒められたいなんて言ってないけど?」
「もう瑠衣ちゃん素直じゃないなぁ。愛莉は諒太に褒められたくて頑張ったもん! これで夏休みはみんなで遊べるし!」
ああ、そういえば。赤点回避に驚いてて、夏休みのこと忘れてた。
「とりま、テストの結果は前提条件に過ぎないっしょ? とりあえず誰が最初に諒太を好き放題にできるのか……今からじゃんけんで決めるよ——」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます