第98話 すれ違いラブコメはイチャラブ
「ねえどういうことかな? もしかして二人って、変な関係になってたりするの?」
「ち、違う! それは違う!」
黒木から愛莉への呼び方の件で問い詰められている俺。
(こうなった以上は仕方ない。全て話すことにしよう)
「み、海山がどうしても愛莉って呼んで欲しいらしくてさ、ちょっとした事と交換条件で愛莉って呼ぶことになったというか」
"ちょっとした事"の内容を話したら、ぶん殴られてもおかしくないので口が裂けても話せない。
なかなか苦しい言い回しだが、別に間違ってはないからな。
「ふーん。諒太くんの言ってることは本当なの? 愛莉?」
「うん! 諒太の言う通り!」
なんでわざわざ確認とるんだ。
さては俺、あんまり信用されてないな。
「まぁ、そうだよね。愛莉って彼氏いるんだし、諒太くんとやましい関係になることはないとは思ってたから」
「あたしも最初は二人が変な関係になったのかと思ったけど……愛莉は彼氏いるもんね。んじゃさ諒太、じゃああたしらのことも下の名前で呼びなよ」
「えっ!」
「わたしもそれに賛成。優里亜ナイスアイディア」
「でっしょ?」
優里亜め、上手いことこの流れに便乗して来たな……。
俺からしてもよく優里亜の呼び方を間違えそうになってたから、その方がありがたい気もする。
「諒太、分かった? あたしは優里亜で、瑠衣のことも瑠衣って呼び名ゆな」
「え、お、おう……分かったよ、優里亜と、瑠衣」
優里亜は慣れているから違和感がないが、黒木のことを瑠衣って呼ぶのは……なんか、むず痒いというか。
俺が照れていると、愛莉が夏服の袖をクイクイ引っ張って来る。
「諒太っ」
「な、なんだよ愛莉」
「むぅ……やっぱなんでもなーい」
なぜか愛莉は高校に着くまでずっと膨れっ面だった。
名前で呼んだのになんで不機嫌? や、やっぱり女子ってよく分からん。
とりあえず俺は、夢にも出て来た愛莉の胸元をじっくりと眺めながら、3人と登校した。
☆☆
テスト2週間前ということもあり、教室の雰囲気もいつの間にか真剣そのものになっていた。
俺が美少女3人衆と登校して来ても、誰も見向きもしないで単語帳や仲間内で回す対策プリントに目を落としている。
ついこの間までは文化祭だったのに、このスイッチのオンオフの切り替えの速さは凄いな。
俺も周りに流されるように、席に着いたらラノベではなく教科書を開く。
「ちょい諒太諒太」
「ん? どうした優里亜?」
「……少し"二人で"話したいことあるから、あたし先に屋上行ってるから後で来て」
優里亜は小声でそう言うと、教室から出て行った。
(ふ、二人で……? まさか黒木みたいに名前の件でお説教タイムじゃないよな?)
美少女たちに振り回されて朝からクタクタな俺だが、優里亜に呼ばれて仕方なく屋上へ向かうのだった。
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