第82話 フランクフルトを食べたい(意味深)
優里亜と二人で、海山たちが待っているC組のメイド喫茶へ向かう。
「てか諒太ってさ、田中とはどうなん?」
「どうって?」
「中学の時から仲良いんでしょ? しかもオタク仲間だし……なんつうか、やっぱ付き合ったこととかあんのかなって」
隣を歩く優里亜は横目でこっちを見ながら訊ねて来た。
「お、俺と田中か付き合う? ないない。田中は夢女子兼腐女子だぞ? そもそも俺たちは中学の時からオタク語りする親友ってだけで」
「親友……」
親友というワードに反応した優里亜の顔が少し曇った。
「どうした、優里亜?」
「いや……あたしも中学の時に同じギャルグループに親友って呼べるヤツがいたんだけど、あたしがオタクなのがバレたら、疎遠になったことあって。ちょいそれ思い出しちゃって」
「そ、そう、なのか」
「だから……ちょっぴり諒太と田中が羨ましかったりもするかな。気の合う奴と好きな趣味を共有できるって……なんか羨ましいから」
優里亜は前に、オタク関連で昔何かあったようなことを濁して言っていたが……この事だったのか。
ギャルの親友に自分がオタクだとバレて、それで距離を置かれたから、オタク趣味を徹底的に隠すようになった……と。
だから最初に会った時、わざわざ隣町のゲーセンにいたのか。
「て! てかさ! 諒太的には、あたしってどれくらいのポジションなん?」
「優里亜のポジション?」
「ほら、友達〜とか、親友〜とか」
「そう、だな……」
そう考えてみると、俺と優里亜ってどんな関係値なんだろう。
親友とまでは言わないけど、クラスメイトというのも距離を感じるし。
やはり友達というのがしっくり来るが……なんか友達とも違うような気がするんだよな。
「あ、待って。冗談でも『オカズ』とか言ったらぶん殴る」
「そんなこと言うかよ!!」
「言うじゃん! あたしの恥ずかしいメイドのコスプレ見たいとか平気で言うし! 太腿とかいつも見て来るし!」
「ぐっ……」
日頃の行いが悪すぎて反論できないんだが。
いつもの自分(エロガキのすがた)を憎むぜ……でも太腿見るくらいよくないか?
「で、どうなん?」
「そ、そうだな……優里亜は俺の理解者、とか? 俺が太腿見てても怒らないし、俺の性癖も理解してるから話しやすいし」
「……じゃあ、あたしが諒太の一番の理解者?」
「あ、ああ。優里亜とはオタ友でもあるし、なんでも話せるからさ」
「一番……ふふん」
優里亜は口元を緩ませる。
よく分からないけど「理解者」で正解だったみたいだ。
「んじゃ、あたしは諒太の一番の理解者として、諒太にそこのフランクフルトを奢らせたげる」
「奢らせ? って、俺が払うのかよ! 理解者とか関係ないし」
「諒太お願い〜」
優里亜は2年A組の教室内縁日の中にあるフランクフルト屋を指差してねだってくる。
「あたしがご褒美でキスしてあげたんだから、諒太もあたしにご褒美くれてもよくね?」
ご褒美云々以前に、優里亜のキスとフランクフルトじゃ価値が釣り合ってないだろ。
(優里亜のキスの価値とか、フランクフルト100000000本あっても足りないくらい貴重だと思うが……)
でもそう考えると……一本くらいなら、いいか。
「分かった。買おうフランクフルト」
「っし! 言ってみるもんだね」
優里亜のキスに比べたら安いもんだ。フランクフルトの一本くらい。
俺はフランクフルトを買うと、優里亜に手渡す。
「あんがとね諒太っ」
優里亜は嬉しそうにフランクフルトを咥えていた。なんかエロい。
「あ! 諒太やっと来たー!」
俺たちが廊下を歩いていると、なぜか一人の海山が俺たちの方へ来た。
「あっ、優里亜ずるーい! フランクフルトいいなぁ」
「それよりメイド喫茶で集合じゃなかったのか?」
「実はね、C組のメイド喫茶が超人気で長蛇の列になってて。瑠衣ちゃんが『並んでてあげるから愛莉はA組の縁日行って来ていいよ』って」
それでこっちに来たと……なんか姉妹みたいな会話だな。
「そのフランクフルトもA組の縁日にあったの?」
「そうそう。諒太に奢ってもらった」
「えー! いいないいな!」
優里亜が余計な事を言うから、海山が物欲しそうな目でこっちを見て来る。
「ったく分かったよ。ほら200円。優里亜、これで海山にフランクフルト買ってあげてくれ」
「ん? 諒太は?」
「俺は黒木と並ぶの代わって来るよ」
「え、でも諒太も」
「いいから。頼んだぞ優里亜」
俺はそこまで文化祭を楽しめない生き物だ。
俺が黒木と変わってあげて、三人で楽しめばいい。
俺は黒木が並んでいる列へと急いだ。
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フランクフルト食べてる優里亜を見たい(切実)
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