第8話 知りたいこと
「いっ! イイコトって、一体……?」
生唾を飲み込みながら緊張した面持ちで聞き返す。
「それはねぇ……優里亜のヒミツかな?」
「ヒミツ?」
ヒミツって……スリーサイズとかか?(変態脳)。
そのヒミツってのを知ったら、朝言われた『覚えたから』の意味が分かるのか?
「優里亜ってさ、高校だと基本、愛莉たちと一緒にいるでしょ?」
「え? ……ああ、そういえばそうかも」
学校で市之瀬優里亜を見かけた時は、いつも美少女グループの海山や黒木の誰かと一緒にいるような気がする。
逆に一人でいるところはあまり見たことないような……。
「それって校内だけじゃなくて、下校の時とかもずっと一緒なんだよ?」
「それって3人の仲が良いからじゃないの?」
「それはもちろんなんだけど、実は優里亜って……寂しがり屋さんなの」
「さ、寂しがり屋さん!?」
あの市之瀬優里亜が、寂しがり屋だと?
ダウナーギャルで、いつもダルそうにしてるのに?
「優里亜ったらね、一人だといつもしょんぼり顔になるの。寂しいからか放課後遊びに誘って来るのもいつも優里亜からで、休み時間に愛莉たちの席に近づいて来るのも優里亜からだしー。1年の時から愛莉たちにベタベタっていうか」
なんだよそのギャップ……反則級に可愛いな。
流石の俺でも市之瀬にギャップ萌えしてしまう。
まさかダウナーギャルの市之瀬に寂しがり屋な一面があったとは……。
「でもさ、それだと優里亜に朝のことを聞きたい諒太にとっては不都合だよね?」
「そう、なのかな」
「だって愛莉たちが近くにいたら、諒太は朝の話を切り出しづらいじゃん? 優里亜も優里亜で愛莉や瑠衣ちゃんが隣にいたら、諒太と話しにくいっしょ?」
「そ、それは……確かに」
「そこで! 諒太が優里亜と話すためにも、優里亜が一人でよく行くとある場所を愛莉が教えたげる。諒太はそこに行って優里亜に直接聞いてみたら?」
な、なるほど……イイコトってそういう。
仮にそれを聞いたとして、俺みたいな最底辺陰キャがギャルと1on1で会話するのはハードル高いって。
(こんなことなら、ヒミツじゃなくてスリーサイズの方が良かったかもなぁ……)
「あー! 話すのは無理って顔してるー!」
「だって現に無理だし」
「諒太は朝言われた『覚えたから』の意味が知りたいんでしょ? それなら優里亜と1on1で話すしかないよ」
「そ、それはそうかもだけどさ……それを知るのと市之瀬と一対一で話すのじゃ、あまりにも割に合わないというか」
「はぁ……」
弱気になる俺を見て、海山は大きなため息をこぼす。
「もーっ!! これ以上つべこべ言うなら、もう二度と口を利いてあげない!」
「べ、別に俺はいいけど」
「いや、そこは反論しろし!!」
ご乱心の海山愛莉。
海山は何か勘違いしているようだが、俺は別に美少女たちと友達になりたいわけではない(海山の胸は性的に見ているが)。
「諒太さぁ、せっかく近くの席になったんだし、皆んなで仲良くしようよー?」
「で、でも。俺は海山たちみたいな存在とは真逆で」
「……諒太はどう思ってるか分からないけどさ、少なくても愛莉は昨日、諒太と話して諒太と仲良くなりたいって思ったよ?」
「み、海山……」
「諒太は根暗でオタクでちょっと視線がキモいけど、本当は誠実な男の子だって分かったから」
褒められているように思えて、なんか悪口の割合の方が多いのが気になるな。
「だ、だから優里亜にもね、諒太と仲良くして欲しいっていうか……とにかく険悪な関係には絶対になって欲しくない、から」
海山の言葉が俺に重くのしかかる。
あの海山がそんなことを気にしていたなんて……。
「それならなおさら海山が俺と市之瀬の仲裁に入ってくれればいいんじゃ」
「それはつまんないからイヤ」
「は、はあ?」
「さあ諒太! 優里亜と仲良し大作戦するよ!」
「ええ……」
なんか海山に遊ばれている気がするのは俺だけだろうか。
☆☆
その日の放課後。
俺は電車に乗って海山に教えてもらったとある場所に到着する。
「ここが……市之瀬が一人でいるという隣町のゲーセンなのか」
隣町の駅内商業施設にあるゲームセンターに俺は足を踏み入れる。
この時の俺は油断していた。
ここで待っていた衝撃の事実を知るまでは——。
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