第4話 探し物は見つかった


 高校から徒歩15分の場所にある駅前のアヌメイトに到着した俺は、すっと欲しかったラノベを探しに来ていた——のだが。


「誠に申し訳ございません。『異世界でS級美女のおっぱい吸いまくってチートスキルも吸い上げてやった』はご好評につき売り切れ状態でして」

「……はぁ」


 レジでアヌメイトの店員からそう言われて俺はため息をつく。


 俺が好きなWEB小説『異世界でS級美女のおっぱい吸いまくってチートスキルも吸い上げてやった』が、書籍化したので買いたいと思って来たのだが……まさかの在庫切れ。


 さすがWEBで人気だった異世界モノというべきか……数万フォロワーを誇る注目作だったから仕方ないか。

 俺は肩を落としながら帰路に戻る。


(アヌメイトには限定特典があるので、できればここで買いたかったが……はぁ)


「今日の俺、つくづくツいてないな」


 電子書籍という選択肢もあるが、本で買った方が続刊率が上がることもあると聞いたこともあるし……さぁ、どうするべきか。


(休み時間に読みたいし、やっぱ本で買いたいよな)


 俺はスマホを使って近くの本屋を検索する。

 アヌメイトの近くに本屋の『タツヤ』があるよな……ここならワンチャンあるかもしれないが。


 アヌメイトですら品切れだったんだ、タツヤも品切れの可能性がある。


(一応、電話で在庫確認してみよう)


 俺はアヌメイトを出ると、タツヤの方へ歩きながら電話をかける。


『はーい、タツヤ駅前店でーす』

「あ、すみません。ラノベの『異世界でS級美女のおっぱい吸いまくってチートスキルも吸い上げてやった』って本の在庫を知りたくて」

『あー、ラノベねー? りょーかいでーす』


 なんかやけにノリが軽い女性店員だな。

 それにどこか聞き覚えのある声質……気のせいか?


『えっとー、おっぱいなんたらって本なら残り4冊あるっぽいですー』

「分かりました。わざわざありがとうございます。これから向かいます」

『はいはーい』


 ブチッと電話が切れる。

 普通、お客様が切るまで待つものだろ。


(若い声だったし、きっと新人アルバイトなんだろう)


 俺はバイトしたことないからその大変さはよく分からないからあまり攻めないでおこう。


(そもそもうちの高校は許しが出ない限りバイト禁止だから、やりたくてもできないんだけどな)


「……っと、着いたな」


 俺はそのままタツヤに入った。

 ちょうどレジでは店員が何やら作業していたので、俺はレジへ向かう。


「あのー、今さっき電話した者なのです……っん?」

「ああ! お客さん『異世界でS級美女のおっぱい吸いまくってチートスキルも吸い上げてやった』あります……よ゛」


 白いブラウスの上に紺色のエプロンを着けたタツヤの女性店員は、俺の顔を見ると一瞬で苦虫を噛んだような顔になった。

 明るい髪色のアンダーツインテと両手に抱えた新品の本の上にどっさり乗っかる胸元の大きな果実。


(このおっぱい……間違いない)


「み、海山?」

「げっ、後ろの席のオタク……」


 理由は全く分からないが、なぜか海山愛莉がタツヤでバイトしていたのだ。


(あれ、海山は彼氏とデート行くんじゃなかったのか?)

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