第3話



 ハルの顔が嬉しそうに輝き出す。


「幸せだったなぁ、ほんと幸せだったよ。皆んなが言うんだ、捨てられて、拾われて、お母さん達の家の近所の病院に運ばれて、引き取って、これは運命だったんだ、絶対の出会いだったんだ、ってね」


「皆んな良い人達だった?かな?」


「うん、そこの家の子供達は三人いるんだけどね、三人ともね、学校?帰りの子供達と同じくらいの歳だったと思うよ」


「はははは、それは何よりだ」


「だからね、お腹が空いたときも、お散歩に行きたいときも、僕は呼んだよ、一生懸命呼んだよ、精一杯大きな声で呼んだんだ」


「そしたら誰かが来てくれるのかい?」


「うん、きっと誰かが来てくれるんだ」


「良い家族だったね」


「そう、皆んな、優しかったなぁ。夜はいつでも一緒に寝たんだ。僕は、四人目の子供って言われていたよ。でも、呼ばれる時は、ハル、なんだ」


「そんな毎日だったんだ」


「うん、でもね、時々、皆んなが朝から揃う日があるんだ。休日、って言っていたよ。そんな日はね、皆んなでお散歩に行ったんだ。僕は嬉しすぎて、走り続けたんだ。でもね、みんなが追い付けなくて僕一人きりで走り続けたら、僕は止まって皆んなが追いついて来るのを待つんだ。だって、一人きりは嫌だもの、捨てられた時のことを思い出しちゃうんだもの、悲しみなんて欲しくないもの」


「そうだ、私達は、寂しがり屋さんが多いからね」


「僕もだよ。誰でも良いから、皆んなのうちの誰か一人だけでも良いから、そばに居てくれたら、それだけで良いんだ」


「あははは、なるほど」


「家族皆んなでお出かけしたことがあるんだ。でも、連れて行ってもらえなかったんだ。悲しくて悲しくて、やりきれなくて、わざとおしっこをしてやったんだ。そしたらね、もっと悲しくなって、なんてことしてしまったんだろうって、皆んなが帰ってきても、嬉しくて飛び付けなかった。小屋の中でうずくまっていたよ、御免なさいって言いながら・・・」

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