第2話
茶色毛の犬、ハルは生前の事を喋り出した。
「僕は、捨てられたんだ。電信柱の下、ダンボール箱の中、寒くはなかったよ、だってダンボール箱の下には暖かな毛布が敷かれていたんだ、とても暖かったんだ。上には毛布を被せていてくれたんだ、捨てられても優しさを感じたよ。一人きりは悲しかったけれどね。でも、食べ物だって、たくさんお皿の中に入れていてくれてたんだ」
「しかし、何日も保つまい?」
「うん、お皿の中の食べ物は一日で無くなったよ。でも大丈夫、小さな女の子達がパンと牛乳をもって来てくれてたんだ」
「それは学校帰りの小学生だろうね」
「学校? ふーん、そうなんだ」
「ああ、私の飼い主も毎日通っていた」
「お爺さんも飼われていたの?」
「ああ、そうだとも。飼い主の名前は、あっくん、だ。毎日、あっくんが帰って来るのを楽しみにして過ごしていた」
「お爺さんは拾われたの?」
「いや、幼い頃に母犬と別れてな、あっくんに引き取られた」
「お母さんと別れるのは辛くなかったの?」
「そりゃ辛かったさ、でも、それを忘れさせてくれるくらいにあっくんは優しくしてくれた」
「そうなんだ・・・」
「辛かっただろう? 捨てられた毎日は・・・」
「うん、でもね雨の日に拾われたんだ。雨が降って、誰も来てくれなくて、お腹が空いて、段ボール箱は濡れて、寒くなってきて、なんとかしなきゃってね、歩き出したら道路横の溝に落ちたんだ。どうやっても這い出ることもできなかったんだ、疲れて声も出せなくなったよ。暗くなり始めた頃、眠くなって、そのまま眠ってしまったんだ。気がついたら病院にいたよ」
「それで?」
「お母さんが迎えに来てくれたんだ」
「お母さん?」
「みんなが、そう呼んでいたよ」
「飼い主が、見つかったんだ」
「うん、皆んなが僕の事を里子、って呼んでいたよ」
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