わんわんのお里 2

織風 羊

第1話



 暖かな陽が二匹を照らしている。

一匹は全身が白い毛に包まれた老犬のようである。

もう一匹は、茶色の毛に包まれた犬である。


「よう、若いの、よくここまで来れたな」


「はい」


「名は何という?」


「ハル、です」


「ほう、良い名だ」


「なんで分かるんですか?」


「冬に、その家にやって来た。そして家人は、冬の寒い日よりも、これから来る暖かな季節を与えたかった。ハル、そうだろう?」


「はい」


 茶色の犬、ハルは老犬をまっすぐに見つめながら頷いた。


「ここまで来るには、それなりの理由があったと思うが、ハル?」


「僕は、皆んなに会いたい」


「時の湖、この対岸から何かが聞こえた。そうかな?」


「はい、みんなの泣き声が聞こえたんだ」


「その泣き声に釣られて来るには、あまりにも過酷で危険な一人旅、だったと思うが?」


「平気だった。それよりも、皆んなの泣き声の方が辛かったよ」


「それでも、この対岸で皆んなに会えたようには見えないが?」


「それが・・・、会えないどころか、声も聞こえなくなったんだ」


「どうだい? お若いの、どうして、そんなに皆んなに会いたいのか、聞かせてくれないか?」


「うん、言えるよ」


「ありがとう、お若いの、いや、ハル。皆んなに会えるまでの時間だけで良い」

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