第一章 猫目石の魔術師(マグス) 3
鷲はわずかに体を上へと持ち上げると、グンと勢いづいて高度を下げた。
一瞬訪れる、独特の浮遊感。その直後の下降。
髪がキンと冷えて行くのをメブレビは思う存分、楽しんだ。
数日ぶりの大地は砂漠とはまた違った踏み心地で、すでに懐かしく感じる故郷を思い出させる。土の柔らかさに、この鉱山が豊かな水を蓄えていることを感じた。
思うにこの山がアレーレの街を、干ばつと砂漠から来る砂嵐より守っているのだ。
荷ほどきをすると、二人は長旅を共にした鷲に心からの感謝と別れを告げた。
大地に頭を突っ込んだフラウウが言う。
「さ。それじゃあ、私は原石を採って来るからメブレビはここで火を起こしておいてくれ」
「了解」
火が大きくなるまでに四半刻もかからなかった。
フラウウの方もすぐに、腹の中を宝石でいっぱいにして、地面から顔を覗かせた。丸々と横に伸びた体を器用にくねらせ、
「お疲れ様。どう? 結構、
「ああ。なかなか良い味がしたから、質の良い
石を吐き出すとそう言い残し、出て来た穴からまた消えて行く。
フラウウが吐き出した石をメブレビは腰に下げていた麻袋にせっせと詰めて行った。
初回で中々の収穫だ。
土蛇はよく伸びる皮膚と
鉱物を主食とするので人間からは煙たがられていた。なぜかって、これから掘ろうと思っていた宝石採りの穴場をめちゃくちゃに荒らして居なくなることが、ざらだからだ。
「土蛇を狩れば宝石が取れてお得なんじゃ?」と思うかもしれないが、それは不可能だ。
土蛇に近寄ろうものなら、人など
火にあたり、旅の食料の残りだった
「うわっ!」
メブレビは思わず身を仰け反らせた。
女は虚ろな目をしている。
メブレビには視線をくれず、ぐるっとあたりに首を巡らせると焚き火のある方へ向かって一歩を踏み出した。女の首から下が
メブレビはそっと腰を浮かせ、焚き火を挟んで女と向い合うように立ち上がり距離を
取った。女は膝がうまく曲がらないようで、足の裏を擦って不自然に歩き、やはりメブレビを無視してゆっくりと焚き火を横切って、そのまま再び森の中に消えていった。
「なんだったんだ?」
何やら両腕に、赤黒い光を放つ
こっちの衣服がどんなものか馴染みがないのでその
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