第一章 猫目石の魔術師(マグス) 2
「フラウウ、今頃、どうしてるかな……」
彼が巻きついて居ない首元が涼しくて、寂しい。
白い
故郷、シャルクの父と長兄に別れを告げてメブレビは生まれて初めて国を出た。
岩礁を見つけたときは鷲を休ませ、休憩の度に座椅子と食糧の位置を入れ替え翼への負担が偏らないようにし、雨が降った日にはフラウウの魔術で鷲を上から覆うように膜を張り、風雨を避けて進んだ。
目的地は
方角はフラウウが知っていた。
大海を無事に越え西に太陽、東に月を見つつ、大鷲に乗り白砂漠を渡る。
大地を滑る鷲の影にポツポツと緑が混じり始めたのが砂漠の終わりの合図だった。
やがて、木々
山はアレーレの街をその腕に抱くような形をしていて標高は高くはなく、どちらかと言うと横に平べったい。
しばらく高度を下げつつ街の方へ向かって飛ぶと、空気に香ばしい香りが混じった。
「なんの香りだ?」
「香辛料さ」
メブレビの首元から少年の声で、フラウウが返事を返す。
大鷲も頭上で一声鳴いた。
フラウウと違い言葉を交わせないのでわからないが、彼(もしかしたら彼女か?)にも、匂いがわかったのかもしれない。
「ねえ、やっぱり先に街へ降りないか? 丁度、夕食どきみたいだし。灯の粒の中に煮炊きの煙が見える」
「ダメだよ。今降りたってお金が無いんじゃ、ひもじい思いをするだけだ。こっちじゃ、メブレビは王子じゃない。タダで食事にありつけると思ったら大間違いだよ」
「国から
「お金なら今から稼げる。海の上で金を食べるわけにもいかないだろう。食料は少しでも多い方がいい」
「じゃあ、俺の食費のためにフラウウ様、いっちょ、よろしくお願い致します」
「こういう時だけしおらしくして、この子は
フラウウがゆるく首を振る。と、メブレビの目の前に両手のひらに収まるほどの光の玉が現れた。玉はすっと空中を滑りメブレビの背の方へと回ると、足下の山の中のどこかを目掛けて飛んでいく。これは旅の間、大鷲に方角を示すとき、フラウウが取っていた方法だった。
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