第一章 猫目石の魔術師(マグス) 1
「ねぇ。ねぇってば、ねえ!」
「うるさい!
メブレビは、腹の底からため息を吐いた。
こちらに向かって二人の男が歩いてくる。
一人は若い。十六になるメブレビより少し年上だろうか。片手に
もう一人は老人で、両手で危うげに
「ほら、坊主。食事を持ってきたから落ち着きなさい」
食事が出されるということはどうやらまだ、ここからは出られないらしい。
あれは、つい昨日のことだ。
日の入りも間近という頃。川辺で人助けをしていたら目の前の青年に突然、縛り上げられ、続いて大勢の大人に取り囲まれたかと思うとそのまま
青年は昨日と変わらず鬼のごとき
そして老人の方は気の毒そうな顔でメブレビの
ああ、
「どうして
「このっ! 自分の立場がわかっていないようだな。食事が出るだけありがたいと思え!」
地面は堅いしお尻は冷たいし、それになんだかここは雨の日の池みたいな匂いがする。
ほんの数日前まで新たな人生の
ああ、
「すまんねえ。井戸から水を
「いいよ、爺ちゃん。これで十分だから往復すんな。それよりもお兄さんの方。俺はいつ、ここから出られる?」
「お前が罪を認め、
「だから最初から全部ありのままを話してるじゃないか。あの女性を助けられなかったのは本当に申し訳ないが、俺がやったんじゃない。自分で川に身を」
「嘘をつくな!」
「ああもう、怒鳴るなよ」
「奥様がご自分で身を……投げたなど、あるはずがない! もうすぐお嬢様の八歳の誕生日なんだぞ」
「娘が居るのか?」
「奥様の葬儀が終わったら、覚えていろよ」
男は
辺りは再び闇に包まれ、遠くで扉の閉まる音がした。
「はあ、一体、何しに来たんだ」
衣服で手の汚れをぬぐい、格子の間からペラペラの
口に入れると味は無く、まあ、持った時からわかっていたことだったが、酷く
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