第42話 ルドルフを追求せよ
◇◇◇
俺は勢いよく玉座の間の扉を開ける。
するとルドルフが玉座に座ろうとしていたので、行動を阻止した。
「その席にお前を座らせる訳にはいかない」
ここにいた者達の視線が全て俺へと集まる。
ルドルフは栄光の瞬間を邪魔されたからか、憎悪の目を向けてきた。
「誰だ! 貴様は⋯⋯フリーデン王国の護衛か!」
どうやら俺の顔は覚えていたようだ。だがゲストはそれだけではない。
俺の背後から二人の人物が現れる。
一人はザイン、そしてもう一人は⋯⋯
「敵国の者を神聖なる玉座に連れてくるとは⋯⋯血迷ったかアルドリック!」
「血迷ったか⋯⋯だと⋯⋯ 血迷ったのは兄貴の方だろ? リリシア王女に皇帝殺しの罪を擦り付けるとはどういうことだ?」
アルドリックは喚くルドルフを問い詰める。
だがこの男は絶対に真実を述べることはないだろう。
「何のことだ? 状況からして、父上を殺害したのはリリシア王女で間違いないはずだ」
予想通りの言葉だな。
それならばルドルフの動揺を促すため、さらに問い詰めてもらうことにしよう。
ザイン、アルドリックの後ろから新たなる人物が前に出る。
「私がお部屋に着いた時には、皇帝陛下と護衛の方は誰かに殺害された後でした」
「貴様はリリシア王女! 何故ここに⋯⋯まさかアルドリック、お前の差し金か!」
「そうだけど何か問題があるのか?」
「お前だけは見逃してやろうと思ったが、気が変わった。デレックと共に牢獄に入るがいい。兵士達よ! この狼藉者達を捕らえよ」
ルドルフの命令に従った兵士達が、こちらに向かってきた。俺とザインはリリシアとアルドリックを守るため、前に出る。
「リリシアちゃんを捕らえたければ、俺を倒してからにしな」
「真実を語られると困るのか? リリシアの邪魔はさせないぞ」
今の段階でも俺とザインは、そこらの兵士ごときに負けない強さを持っている。
向かってくる兵士達二人に対して、俺達は蹴りを食らわせ後方へと吹き飛ばした。
すると兵士達は、簡単に捕らえられる相手ではないと判断したのか、動きが止まる。
「小癪な! 帝国に歯向かうなど、この場から生きては帰さんぞ!」
「やれるものならやってみな!」
アルドリックがルドルフに向かって啖呵を切る。
セリフだけ聞けばカッコいいけど、俺達の背中に隠れて言ってる姿はダサい。
「だけどその前に兄貴に問いたい。親父が殺害された時間、裏庭で兄貴を目撃したという奴がいるんだが本当か?」
「それがどうした? それこそ俺が父上を殺していない証拠ではないか。リリシア王女⋯⋯いい加減罪を認めたらどうだ。もし無実だと言うのなら証拠を見せてくれ」
「私はこの件に関わってはいません。それに証拠はなくとも、証人はいます」
「な、何だと! そ、そのような者いるはずがない」
その動揺している姿が、有罪だと認めているようなものだと問いたい。
リリシアが後ろを振り返る。
するとそこに一人の⋯⋯いや、黒猫のルルがいた。
「はあ!? まさか証人とはその猫のことを言ってるのか?」
「そうです。あの時ルルちゃんは、私と一緒に皇帝陛下の部屋に入りました。私が何もしていないことを知っています」
「ククク⋯⋯リリシア王女は動物と話せるとでも言いたいのか? バカにするのも大概にしろ!」
リリシアはルルと話すことは出来ないけど、俺は話せる。皇帝陛下の部屋で起こった内容を聞いているので、リリシアが犯人でないことは間違いない。
だけどもし俺がそのことを証言しても、証拠として扱われないだろう。
それにリリシアもルルの証言で、自分が犯人ではないと言いたい訳ではない。
もしかしたらリリシアは、自分の口から罪を認めてほしいという思いがあったかも知れないが。
しかしこれは往生際の悪いルドルフを見るための、ただの余興だ。
何故なら俺達は確たる証拠を握っているからな。
得意気に自分は無実だと訴えるルドルフ。だがその見苦しい態度に我慢が出来なかったのか、突如ある人物の声が玉座の間に響き渡る。
「バカはお前だ。ルドルフ」
「誰だ! この皇帝であるルドルフ様をバカ呼ばわりするとは許さんぞ!」
ルルの背後から、突然外套で顔を隠した怪しい人物が現れる。
「そこまで証拠がほしいなら見せてやろう。ルドルフよ⋯⋯余の顔を見忘れたか!」
そして怪しい人物は外套を手に取り、空高く投げつけるのであった。
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