第17話 李梅のアジトにて


『聖と若葉を、仕留めました』


 李梅は、二人目の殺し屋からの電話に安堵と共にほくそ笑んだ。


『即席で用意した金髪のカツラのお陰です。見事に聖だと騙されてくれましたよ』

「ご苦労だったわ。給料は私の秘書から貰っておいてちょうだい」

『承知しました』


 殺し屋からの電話を切り、人質──王野の方を見る。

 拷問用の椅子に、紐でがんじがらめに縛られた彼女は、声を荒げる。


「わ、若葉ちゃんを、殺したのか!?」

「あんな平社員よりも、自分の身を心配をしなさい」


 李梅は「残念だけど──」と、ぺろりと舌を出し、


「──あなたたたち救出課も、私たちには遠く及ばなかったわね。あなたの仲間も、みんなやられちゃったみたいだし」


 だが、まだ不透明な部分も多い。今回の作戦を立てたのは、この王野だそうだが、正直、訳がわからない。


 仮に自分が王野の部下だとしても、この若葉という使えない社員をみんなで護衛するという作戦には異を唱えていただろう。

 疑心は軋みを生む。

 現に救出課のチームワークはバラバラ。そんな簡単なことも分からないとは、人の上に立つ采配だとは思えない。


 かつては紫閃結芽と組んで、神龍テクノロジーを半壊にまで追い込んだのだから、どんなものかと思っていたが、結局は彼女の実力に依存していただけのこと。王野自身は大したことない、というか無能な人間。


「しかし、まだ──」


 悔しそうに歯噛みしながら言う。


「まだ?ああ、久院ってのが、まだだったわね」


 パソコンの電源を入れると、監視カメラの映像がぱっと映し出される。そこには、久院がこちらに向かっている姿が見える。李梅は「無駄なことを」と頰を吊り上げ、


「あなたを助けに来たようね。せっかく来たのだから、歓迎してあげないとね」

「な、何をする気だい!?」


 李梅は部屋の鍵を開け、扉の前に立った。

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