第7話 船上の事件2

「そんなことがあったんだ」


イリス姉の話を聞いて僕は驚いていた。


「イリスの前世だった少女はどんな人だったの?」

「そうね、私とは違って生意気な奴だったわ」

「急に現れて、すぐにいなくなったから名前も聞きそびれたの」

「けど、最後に不思議なこと言ってたわ」

「へぇなんて言ってたの?」

「この世界には管理者?っていう奴がいるらしいわ」


管理者というのはこの世界の神様のような存在なのだろう。

茜達日本人をこの世界に呼んだのもその管理者なのかもしれない。


「だいぶ話し込んじゃったわね」

「そろそろアル達も話を聞いて回ったんじゃないかしら?」

「そうだね、そろそろアル姉たちを探しに行こうか」


その後アル姉たちを探しに行くと、甲板で揉めている冒険者たちがいた。

近くにはアル姉たちもいて、アル姉たちは必死に冒険者たちをなだめている。


「お前が犯人なんだろう!?」

「違うよ!私にそんな力あるわけない!」


僕たちはアル姉にこうなった状況を聞くことにした。


「アル姉これはどういう状況なの?」

「あ!奏ちゃん!それがね・・・」


アル姉の話によるとこの女性の冒険者は銅級の冒険者で職業は戦士らしい。

だがあの事件当時のアリバイがなかったそうだ。そのためこの事件で一番あやしい人物だとして他の冒険者に詰め寄られていた。


「あんたらいい加減にしなさい!」


するとイリスが冒険者たちの前に出ていった。


「邪魔しないでくれよ!そいつが一番怪しいんだ!」

「決めつけてもしょうがないでしょ?」

「まずはこの人が銀級冒険者を倒せるだけの力を持っているかが重要でしょ?」


イリスは詰め寄られていた冒険者に近寄った。


「それであなたの名前は?」

「ユリアです」

「一応聞くけど、あの時どこにいたの?」

「一人で荷解きをしていました、リーダーによると私は使えない戦士だそうで、パーティでも雑用を任されているんです」

「そう、ユリアこれを持って」


するとイリス姉はアル姉の予備の武器を手渡した。

そして目の前に結界を作り上げた。


「この結界は生半可な攻撃じゃ破壊できない結界よ」

「これが壊せるだけの力があるなら、そいつが犯人ってことよ」

「わかりました」

「えい!」


ユリアは戦士だったこともあってきれいな剣筋であったが、結界はびくともしなかった。


「これでこの人が犯人じゃないって、分かったかしら」

「それにユリアのパーティは誰かしら?」

「もしいるんだったら、前に出てきて」


すると冒険者の中から、ユリアのパーティメンバーと思われる数人の冒険者が出てきた。


「それで、誰がユリアが犯人だって言いだしたの?」

「リーダーのテルです」

「そう、それじゃテル以外は下がっていいわ」


テルは男の僧侶だ。ユリアと同じ同級の冒険者で元貴族だったらしく高そうな服を着ている。


「イリスさん、ユリアが犯人であるのは間違いないですよ」

「その根拠は?」

「そいつは出来損ないですからね、きっと今回の事件も何もできない自分の憂さ晴らしのためにやったことでしょう」

「そう、それじゃ消えてくれる?」


すると突然イリスはテルに向かって魔法を放った。

テルは突然放たれた魔法を、まるで見えているかのように避けた。


「ちょっとイリスさんなにするんですか?」

「今ので確信したわ、こいつが犯人よ」

「さっきから体から闇属性の魔力が漏れ出てんのよ、うまく隠してるみたいだけど以前戦った私にはバレバレよ」


イリスが話し終えるとテルは小さく舌打ちした。


「おいおい、この時代に魔人と戦ったやつがいるのかよ」

「えぇ、それで?あなたは何者か教えてくれるかしら?」


するとテルの体が変形し、体が女性になっていき頭から鬼の角が生えてきた。


「いいぜ、俺は魔人幽鬼!人に化ける鬼の魔人だ」

「あんたたち早く非難しなさい!」


イリスがそう言うと、他の冒険者は逃げていった。


「アル、奏、あいつを抑えてくれる?」

「了解だよ」

「分かったよ」


そしてイリス姉は魔法陣を展開し始めた。

僕は植物の根を体から放出し、魔人の体に巻き付けた。


「おいおい、そんなもんかよ・・・そりゃ!」


魔人はまるで紙を千切るかのように、拘束を解いた。


「へ!こんなもん」


魔人が油断している隙に、後ろからアル姉が持っていた剣で魔人の背中を切り裂いた。


「あが!くそが!」

「ほら、油断しすぎだよ!」


さらにアル姉による斬撃によって、幽鬼は片腕を切り落されてしまった。


「ぐが!いてぇ!」

「よくやったわ二人とも」

「凍り付きなさい!」


イリスは氷の魔法を放ち、幽鬼の全身を凍らせた。

そして軽い爆発が起きる魔法をかけると、幽鬼もろとも氷が粉々に砕け散った。


「ふう、案外あっけないものね」

「私たちが強くなった証拠だよ」


勝利の喜びに浸っていると、突然部屋の中が蒸し暑くなり砕け散った氷が溶けだした。


「おまえら!調子に乗るなよ!!!」


何処からか幽鬼の声が響き渡り、ばらばらになっていた幽鬼の体が集まっていった。

やがて体が再生し完全に元の姿に戻ってしまった。


「俺がこんなもんで死ぬわけないだろ?」

「アルスの時はこれで終わったのに」

「あぁアルスの奴やられちまったのか」

「あいつ確か俺より強かったはずだが、しくじったのか?」

「まぁいい」


幽鬼はこれまでとは比にならないほどの魔力を放出した。


「ここからは全力だ」

「魔王軍幹部、序列3位の俺様が本気で相手してやるよ」


幽鬼は体中から湯気が出ており、体中が赤くなっていた。

それから幽鬼との激しい戦いが始まった。


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