第4話 酔いどれダメコンビ
次の日になり茜達がいる宿屋に向かった。
彼女たちの部屋に案内され、中に入ると茜と春がいた。
春は何やら魔術に集中しているのか、記録については茜が対応してくれることになった。
自身の正体に近づいたことを茜にも報告した。
「なるほど、ドライアドですか」
「はい、この記録の中のドライアドと同様の能力を使用できるので・・・」
すると近くにいた春が話しかけてきた。
「けど記録の中のドライアドは魔王との関係があったんでしょ?」
「奏の存在を魔人たちが知らないとは思えないし」
「これまで何の接触もなかったのはおかしいわ」
春の言う通りだ。
確かに以前戦った魔人たちも僕の存在を知らなかった。
もし戦力として僕を作ったのなら、何かしらの接触があってもおかしくない。
そしてもう一つ記録を読んで気になったことがある。
「記録によるとドライアドは2体いたんですよね」
「討伐されたドライアドのサンプルは残っていなかったんですか?」
「それが・・・」
茜は少し気まずそうにしている。
すると春が説明し始めた。
「私たちが洞窟内に調査した時にはその記録以外何も残されていなかったの」
「前回の調査からたった1月ほどで遺品が一つもないのはおかしいですね」
「洞窟の奥に行ってもドライアドはいないし、記録の中にあった植物もなかった」
「そうですか・・・」
一通り話を終えると、突然バタリと扉が開いた。
そこには何故か興奮した様子のアルと水樹が立っている。
すると恐ろしい勢いで近づいてきた。
「ちょっと!?アル姉と水樹さん!?」
「グヘェ奏ちゃんだ~」
「ホントだぁ」
二人に両手を掴まれ、身動きが取れなくなる。
「て!酒臭い!」
二人の口からアルコールのにおいがしており、かなり酔っているようだった。
「奏大丈夫!?」
その時イリス姉が扉から現れた。
僕は二人を床に座らせてから、イリス姉に二人が酔っ払った原因を聞くことにした。
「わぁ~奏ちゃんが三人いるよ~」
「グヒ!なんだかぽかぽかするぅ」
二人は今にもはだけそうな格好をしており、ユラが必死に服を着させていた。
「それで、イリス姉なんでこんなことになったの?」
「奏が出かけた後のことなんだけど・・・」
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奏が記録を返しに行った後、宿屋で装備の点検をしていると水樹が部屋に入ってきた。
「奏ちゃ~ん!!!・・・てあれ?」
「奏ならいないわよ」
「確か記録を返すって言ってたから、茜ちゃんの所にいるんじゃないかな」
「おうふ、まさかすれ違うなんてぇ・・・」
「水樹さんは奏ちゃんに何か用があったんですか?」
「春ちゃんに小さい子を一人で歩かせるのは危ないから、迎えに行きなさいっていわれたの」
「あぁ確かに奏は見た目だけは幼いからね」
「はは、奏ちゃんたまに何歳なのか分からない時があるよね」
アルの言う通り奏は私たちと出会ったとき、自分のことを7歳といった。
その時はそれで納得したけどたまに大人顔負けの行動をする時があるから、実際はもっと上の年齢だと思う。
「ねぇイリスちゃん達今暇かな?」
「そうね、船が出るまでは観光くらいしかやることないから」
「せっかくだしこの町の酒場に行かない?」
その後水樹に連れられ、この町で一番大きい酒場に行くことになった。
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「それでこうなったと・・・」
「そうね、最初のうちは朝から酔うのは良くないから、ほどほどにしなさいって言ったんだけど」
「ちょっと目を離してたら、こんなことになってたわ・・・」
「うわぁ・・・」
というか20歳じゃないのにお酒を飲んでいいのだろうか・・・
すると茜がそのことに気付いたのか水樹を叱っていた。
「水樹さん!20歳じゃないのに、お酒を飲んだらダメですよ!」
「ヒグ!別にいいじゃん、ここはもう日本じゃないんだよぉ?」
「ほら茜ちゃんも飲むといいよぉ、気持ちいいから・・・」
すると水樹は手に持っていた酒瓶を茜に見せていた。
「はぁ・・・これはダメですね」
二人の様子を見かねて春が提案してきた。
「酔っ払い二人は部屋に置いといて、私たちは観光しに行きましょう?」
「それもそうね」
「いいと思います、奏ちゃんも行こ?」
「そうだね、ユラも見たい物まだまだあるんでしょ?」
「奏ちゃんに似合いそうな服を見つけたから、買いに行こ?」
ユラはミルス公国の時よりもキラキラした表情をしている。
きっと以前アル姉と買い物に行った際に、町中でいいお店を見つけたのだろう。
またあの時のように何時間もユラの着せ替え人形になると思うと、憂鬱な気分になった。
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夕方になりようやく私は目覚めた。
「ふが?」
「あれ?ここは」
隣を見ると、酒場で飲み比べをしていた水樹ちゃんがいる。
「ネムネム、もう飲めませんよぉ~」
未だに酔っぱらっているあたり、お酒にあまり強くないのかもしれない。
「そっかここは春ちゃん達が泊ってる宿屋か・・・」
「はは、またイリスに迷惑かけちゃったな」
こんなにお酒を飲んだのは久しぶりだ。
今日ほど酔っ払ったのは初めてイリスと冒険者として依頼を達成した時。
あの時はイリスに迷惑をかけたから、それ以来あまり飲まないようにしている。
部屋の窓を開けてから外を眺めていると、昔の記憶を思い出す。
「懐かしいなぁ、あの時もこうやって窓から外を眺めてたっけ」
あれは私が6歳の頃、この町で過ごしていた時に体験した忘れられない記憶だ。
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