第3話 魔獣の森の真相
調査記録を宿に持ち帰り、手始め目に第三期調査隊記録を読むことにした。
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魔獣の森 第三期調査隊記録
〇月×日
本日より調査を再開することとする。
前回よりも奥地に進むと、2種類の新種の魔物と遭遇した。
グレータースパイダー・・・蜘蛛の形状をした魔物。
群れを率いて行動し肛門から毒性の糸を吐き出す。
牙には麻痺毒も検出された。
レッサーデーモン・・・これまでとは違い、人型の形状をした魔物。
闇属性の魔法を用いるや形状が酷似していることから、魔王軍に率いられていたデーモンの近縁種であるといえる。
前回と比べ金級冒険者を調査員としたため、特に被害を出さずに撃滅に成功した。
本日は洞窟内で野営を行うものとする。
〇月△日
さらに奥地に進むと壁の断層が変わったことからこの洞窟はいくつもの階層に分かれていることが判明した。
道中いくつかの魔物に遭遇したが、特に被害は出なかった。
そして洞窟の3層目に入ると、奇妙な植物を発見した。
近くには植物から自生したと思われる、植物型の魔物が生息している。
その後観察を続けると、奇妙な植物から女性の形状をした魔物が生まれた。
我々はこの魔物を植物の魔物としドライアドと命名する。
本日は一度引き返し、洞窟内で野営を行うこととする。
〇月×日
緊急事態が発生した。
あれからドライアドと接触を試みるも、ドライアドは我々を確認すると隊員の一人を植物で拘束し丸のみにしてしまった。
その後金級冒険者が応戦し、一度瀕死にまで追い込むもドライアドの捨て身の攻撃によって金級冒険者も殉職。
残る調査員は私を含め3名となり、これ以上の調査は不可能と判断した。
よってこれより帰還
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記録はここで途切れていた。
どうやら書いている最中に魔物に襲われたのだろう。
「これが第三期調査隊の悲劇なのか・・・」
この調査で第三期調査隊は全滅し、ミルス公国は冒険者からの信用を失ったことで没落していったのだろう。
それから僕は第四期調査隊記録を読むことにした。
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魔獣の森 第四期調査隊記録
書記担当:聖騎士ユリ
任務:第三期調査隊の記録を回収、そしてさらなる洞窟の調査
隊員:聖騎士二名、聖騎士見習い8名
◇月△日
本日より調査を開始します。
洞窟内の魔物は前回の調査隊の情報通りの魔物が多い印象でした。
奥に進むと、洞窟の階層が分かれており、この洞窟はいくつもの階層に分かれていることが判明しました。
道中新種の魔物を発見しましたが、数名が軽傷を負ったものの無事に撃滅したので調査に支障はありません。
さらに奥に進むと前回の調査隊の遺品を発見し、第一任務である第三期調査隊の記録を発見しました。
これより記録を持ち帰るために一時帰還します。
◇月〇日
前回に引き続き洞窟内の調査を続けると、前回の調査で失踪したと思われる金級冒険者の遺体を確認しましたが白骨化進んでいたため、遺体を持ち帰るのは困難と判断しました。
そして近くには女性の形状をした魔物の遺体も確認され、調査のために魔物から体の一部をサンプルとして採取しました。
第三期調査隊の記録では、ドライアドと命名されていたため我々もその名称を利用します。
隊員の疲労も目立つようになったため、本日は洞窟内で野営を行います。
◇月×日
さらに奥地に進むと、壁に貼りつきながらうごめく植物を発見しました。
調査隊の記録にはこの植物からドライアドが出現し、調査隊が全滅したことを踏まえ細心の注意を払いながら接近します。
その後ドライアドに近づくと、魔物の方から話しかけられました。
ドライアドには意思があるようで、自身を魔王軍によって作られた存在だと明かしました。
今回の調査により魔王軍が活動を再開したと判断します。
緊急事態発生、ドライアドと交戦し聖騎士1名、見習い聖騎士6名が殉職。
隊員は絶命したのちドライアドに吸収されました。
ドライアド頭部と両腕を失ったものの自身の上半身を切り落とし分体を作成。
その後幼体の姿となりました。
残された隊員は私のみであるため緊急事態の規則により撤退します。
たすけてたすけて・・・・食べないで・・・
教皇様ごめんなさ
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後半から、記録ではなく助けを懇願しているようだった。
この聖騎士は他の隊員と違って、生きたまま吸収されたのだろう。
「ドライアドか・・・」
僕の能力はこの記録にあるドライアドと同じ能力を使える。
そのため僕自身もドライアドと考えるのが妥当なのだろう。
だが一つだけ疑問が残った。
もし本当にドライアドだとしても、この第4期調査隊が出会ったドライアドとは別個体であると考えられる。
なぜなら僕が生まれた時期と、調査隊が活動した時期にずれがあるからだ。
「魔王軍か」
以前出会ったアルスという魔人を思い出す。
あの魔人も元は人間だったはずだ。
それが魔人となり、果てしない魔力と強靭な肉体を手に入れた。
あの魔人は数十年は生きているはずだが見た目は若い女性の姿をしていた。
魔人になったことで老いることもなくなったと考えられる。
もしかしたら僕自身も魔王軍によって作られた存在なのかもしれない。
これ以上詳しい内容を知るにはもう一度洞窟の奥に行きそのドライアドに聞くか、創造主である魔王軍に聞くしかないのだろう。
次の日になりイリス姉たちともこの話を共有した。
「ドライアドね・・・」
「やっとわかってよかったね」
「いやイリス姉たち落ち着きすぎじゃない!?」
「あれだけ危険視されてた魔人かもしれないんだよ?普通怖いとか思わないの?」
あまりにもみんなの様子が落ち着きすぎていたので驚いている。
すると最初にアルが発言した。
「奏ちゃんは奏ちゃんでしょ?例え魔人だとしてもかわいい大事な妹だよ」
「私も同じ意見だわ」
「それに私も竜人っていうよくわからない種族なんだし大丈夫よ」
「奏ちゃん、私も気にしないよ」
「本当?みんな・・・ありがとう」
それからイリス姉達と今後の方針について話し合った。
「奏の種族がようやく分かったのはいいけど、これからその洞窟に行くの?」
「それはしなくて大丈夫だよ、予定通り亜人の国に行った方が良いと思う」
「そう?まぁ最悪この先魔人に出会うことがあったらそいつに聞けばいいか」
「明日には茜さん達にも共有した方が良いかもね」
「アルの言うとおりね、教会経由で他の魔人の情報とかも持ってるんじゃないかしら」
「それに出航まであと5日もあるし、それまではのんびりしましょう?」
「そうだね、残りの5日間じっくりと街を見て回ろうか」
ようやく事件に巻き込まれることなく、観光に回れると内心ワクワクしている。
この日はそのまま眠りについた。
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