第2話 調査隊の記録

「奏ちゃん、その箱は何かな?」


早朝になり、僕は宿屋でアル姉とユラに正座させられていた。

実はキャビアはアル姉たちに内緒で買っていたのが、今朝バレてしまったのだ。

慎重に植物を使って運んだのに、隠し場所を宿屋の近くにしたのが悪かったらしい。


「あらら、バレちゃったか・・・」

「イリスは知ってたの!?」

「ごめんアル、奏に口止めされてて」

「イリスは後でいいとして、それより中には何が入ってたの?」

「キャビアっていう勇者の世界の高級食材が入ってたんだ」

「そんなにあったのに一人で食べたの?」

「う、あまりにも美味しくてつい・・・」

「ずるいよ、奏ちゃん!私たちはお土産いっぱい買ったのに!」

「ごめんなさい」


その後1時間に渡って二人に説教され、好きなものを一つ買うことでなんとか許してもらった。

ちなみにイリス姉は二人にいつの間にか買っていたお土産を渡して事なきを得ていた。

それから茜さんと冒険者ギルドで再開し、あることを聞くことにした。


「調査書ですか?」

「茜さんは調査隊にいたんですよね、前回の調査で中を見たりしませんでしたか?」

「あぁ!あれですね」

「確かに見ましたが、残念ながら重要機密で教えられないんですよ」

「そのあたりは大丈夫ですよ」


僕は聖騎士に任命されたときに教皇からもらった勲章を見せた。


「聖騎士は教会の重要機密も見られるんですよね」

「えぇぇぇ!!!奏さん聖騎、もが!」


茜さんが聖騎士と叫びかけたところで急いで口をふさいだ


「静かにしてください!一応教皇様にはまだ公表しないでほしいって言われてるんですから」

「はっ!ごめんなさい」


周りを見渡すが、幸いギルド内が騒がしかったせいか誰一人気づいていない。


「とにかく内容を教えてもらえませんか?」

「すみません、詳しい内容までは覚えていなくて・・・」

「一応春さんが管理していたので聞いてみますね」

「お願いします」


これでようやく僕の種族を知るのに一歩近づくかもしれないと内心ワクワクしている。

それから僕は茜と共に春がいる宿屋まで来ていた。

そこには水樹も居て、何故か水樹の膝の上に座りながら頭をなでられている。



「ふん♪ふん♪」

「あの・・・水樹さん?」

「なぁに?奏ちゃん」

「いえ、何でもないです」

「ずいぶんとご機嫌ね水樹」

「だってこんなにかわいい子が来てくれたんだよ?おもてなししないと♪」

「まぁいいわ、それで奏だっけ?今日は何しに来たの?」

「実は魔獣の森の調査記録を見せてほしくて」

「あぁあれね、でも残念ねあれは機密情報の塊だから部外者には見せられないの」

「それなら大丈夫です」


僕は春に聖騎士の勲章を見せた。


「あなた・・・聖騎士だったのね」

「すごぉい、奏ちゃんこんなに小さいのに」

「それなら今から見せるわ」

「持ってるんですか?」

「えぇ一応複製を持ってるわ、今でも教会所属には変わりないし」

「なるほど」

「それに、今は冒険者を名乗ってるけど、本当は教会から亜人の国の調査をしてほしいって言われてるのよ」

「なんでも、最近亜人の一部の勢力が不穏な動きをみせてるらしいから」

「そうなんですか?」

「えぇ、ただそうなった原因が教会側にあるから、戦争になる前に賠償をしたいそうよ」


なるほどな、今回の亜人狩りは市民が勝手に行ったことだが、元をたどれば教会の発言が原因だ。

亜人側からすれば、教会が亜人を排除しようとしていると捉えられたのだろう。

だが亜人の国と人間の国では国力に絶対的な差があり、もし戦争になれば間違いなく亜人側が負ける。

それでも亜人には人間への憎悪をもった奴らは多い。

もしかしたら一矢報いるために戦争を仕掛けてくるかもしれないのだ。


「それで調査記録かしら」

「はい」


すると春は空中から二冊の日誌を取り出した。


「それは?」

「あぁ、そういえばこの世界の人たちで持っている人は少ないって言ってたわね」

「これは収納スキルって言って、異空間に自由にものを保管できるスキルよ」

「私達の世界から来た人たちは、内容量に差はあってもみんなこのスキルを持っているらしいわ」


なにそれずるい!そんなスキルもらってないんですけど!!!

これは俗にいう、召喚者限定のチートスキルという奴だろう。


「ちなみに春さん達は三人で召喚されたんですか?」

「いえ、私たちは1クラスじゃわからないか、30人規模で召喚されたわ」


あぁよくあるクラスごと召喚されるやつね。


「なんでそんなにたくさんの人たちが召喚されたんですか?」

「教会の人たちがいうには魔王の復活が近いからとか言ってたわね」

「なるほど魔王ですか・・・」

「とりあえず中を確認してもらえばいいわ」

「この記録の中にそのことに関する記述も書いてあるはずだから」


僕は春さんからもらった調査記録を見せてもらった。

表紙にはそれぞれ第三期調査隊記録と第四期調査隊記録と書かれている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る