第13話 王女の行方 (奏視点)
あれからイリスたちには王女を探すついでに地上の魔物を倒してもらうことにした。
「あの・・・これでいいでしょうか?」
「うん、そこに置いといて」
そして今は城のメイドさんたちに協力してもらって城中にある観葉植物なんかを集めてもらっている。
僕はその植物たちを片っ端から能力を使って成長させた。
「それは何をしているのですか?」
しばらく作業をしていると後ろから教皇が話しかけてきた。
「これから王女を探すために私の能力を使ってこの植物たちを成長させています」
「それがあなたの種族の能力なのですね」
「はい、といってもどんな種族の能力なのか自分でもわかりません」
「ゲインの街でもたくさんの文献を調べましたが何の手がかりもない状況です」
「なるほど・・・そういえば以前我々教会が管理している魔獣の森の調査隊が帰ってきたのですが」
「そこに興味深い記録が残っていたそうなんです」
魔獣の森の調査隊と言えば、あの日本人たちがいた部隊だろう。
それにあの森で数か月暮らしたが、あの洞窟以外に新しい洞窟は見つからなかった。
さすがにあの洞窟にいた狼と戦いたくなかったので中には入らなかったが・・・
それと調査隊とはあの人たちのことだろう。
森で生活しているときに、たまたま洞窟に入っていったのを見かけたことがある。
「その調査隊って今は教会が管理しているんですか?」
「はい、以前はミルス公国が単独で調査を行っていましたが、第3期調査隊で起きた悲劇以来、教会が組織を吸収し管理しています」
「ですが第4期調査隊も先月に全滅したため、教会の方でも調査隊の解体案が出ているのです」
「今回の調査は兵士たちの遺品だけでも回収しようと、急遽集められた部隊なのです」
「その記録ってすぐに見れますか?」
「今すぐには難しいですね」
「記録は教会の本部に保管されていますので・・・」
「そうですか・・・」
その後植物が十分に成長した。
すぐさま僕は街中の地下に向かって成長させた植物を向かわせた。
「結構きついかも・・・」
すると伸びた植物から無数の情報が流れてくる。
ひどい頭痛に耐えながら地下を探していると、下水の近くにある小部屋で運よく拘束された王女を見つけた。
だがその近くには地上にいた魔人の少女もいる。
二人の近くには巨大な魔法陣が描かれており、恐ろしいほどの魔力を感じた。
急いでその場に向かうと、こちらに気付いた王女が叫んだ。
「奏さん!来ちゃだめです!」
「来客?邪魔するなら容赦しないよ」
少女はヘラヘラと笑っているが、その目からはとてつもない殺意を感じる。
だが少女からは何故か一切の魔力を感じなかった。
「王女を離せ!」
魔人に向かって風魔法で攻撃するがひらりとかわされてしまった。
「あなたの強さは知ってるよ、上から見てたけど下級魔人のギース相手にぼろ負けだった弱虫だね」
「私はアルス、魔人の中でも上位の存在なの」
その瞬間アルスは目にも止まらない速さで移動し、僕の目の前に来た。
だが何もせずに、呆れた表情を浮かべている。
「つまんない、ゆっくり動いたはずなのに反応できないなんて」
「ぐ・・・」
いくら何でも早すぎる!こんなの目で追えないぞ・・・
アルスはあれだけ倒すのに苦戦したギースという魔人よりもはるかに強いだろう。
魔力を使っていないあたり、この速度はアルスの純粋な身体能力だといえる。
「掴め!」
アルスを拘束しようと、部屋の隙間からツタを発射する。
するとツタはアルスの右手と左足に巻き付いた。
「こんなので拘束したつもりなの?よいしょっと」
まるで紙切れのようにツタを千切って拘束を解いてしまった。
アルスはゆっくりと僕に近づいてきた。
「無駄無駄、てかよく見ると白髪じゃん」
「それに私好みの顔してるし、もしかしてあの王女よりも生贄に最適じゃない?」
すると突然アルスは僕の手を掴んだ。
「生贄にしちゃったら死んじゃうし、その前に楽しんじゃおうっと」
「離せ!」
「てかよく見たら右手折れてんじゃん、もしかしてギースの仕業?」
「あいつこんなかわいい子傷つけやがって、生きてたらぶっ殺してやる」
必死に抵抗するがアルスの力は恐ろしいほど強く、離れそうにない。
「もう~暴れないの、お姉さんが良いことしてあげるから」
アルスに捕まれて危うく貞操の危機に瀕したが、ここに突入する前に行っていたある準備がようやく完了した。
「吹き飛べ!!!」
そういうと、部屋の床から巨大なツタがアルスに向かってすさまじい勢いで伸びていった。
「がふ・・・!」
ツタはアルスのお腹に直撃し、あまりの衝撃に壁に吹き飛ばされてしまった。
「痛い・・・、いきなり何すんのよ!」
アルスはすぐに反撃に出ようとしたが、先ほどのツタがさらに勢いを増して迫ってきていた。
「あが!」
さらにツタがお腹に直撃し、一度目の時よりも起き上がるのに時間がかかっている。
どうやら今の一撃で内臓にもダメージが入ったらしく、口から血を吐きだしていた。
「たった2発でこんな・・・」
「くそ!魔力さえあればこんな奴!」
「油断したな」
「今のツタは城中の植物を集めて放った特別製だよ」
「ここに来る前にそこら中に根を張っておいたんだ」
「あんたに殺されるくらいなら・・・」
するとアルスは翼を広げ、魔法陣の中に飛んで行った。
「あがが・・・」
魔法陣に入ったアルスは突然苦しみだしそのまま意識を失った。
僕はミレニア王女を救うために拘束を解きに行った。
「ミレニア王女大丈夫ですか?」
「はい、ですが奏さん逃げてください」
「本当に危険なのは魔人ではないのです」
ミレニア王女がそう言うと、突然魔法陣が光りだした。
魔法陣の中では見たことのない化け物の体が生成されている。
「急いでください!あれは厄災の王ルーガスが封印されている魔法陣です」
「もうじきこの地下室も魔物によって押しつぶされるでしょう」
「ですが王女様を置いていけません!」
「わたしは足を怪我して、動けないのです」
王女様をよく見ると、足が折れているのかまともに歩けないようだった。
首にかけていたアーティファクトはすでに効力を失っており、あのアルスという魔人は逃げられないように足だけを狙って攻撃していたのだろう。
「私を連れては奏さんも巻き添えにあってしまいます」
「ではこうしましょう」
僕はミレニア王女を運ぶためにお姫様抱っこをした。
この体だとミレニア王女をおんぶするには小さすぎたため苦肉の策である。
けっしてやましい気持ちがあるわけではない。
「奏さん!?ちょっと恥ずかしいって!」
ミレニア王女は抱えられたせいか、顔が赤くなっている。
恥ずかしさのあまり少し口調が荒くなったため、もしかしたらこれが王女の素の口調なのかもしれない。
「我慢してください」
そう言った後、地面からツタを天井に向かって発射し、大穴を開けた。
ツタに乗って上に上がるついでに、ルーガスとかいう魔物も運ぶことにした。
このまま地下で復活させて暴れられたら、街が崩れる危険性があるからだ。
ようやく地上に出ると、近くにイリスたちの姿を確認した。
どうやら地上の敵をすべて倒してくれたらしく、あらためてイリスたちが以前よりもあきらかに強くなっていることを実感する。
そのままイリスたちと合流し、あのでかい魔物をどうするか話し合うことにした。
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