第12話 王女の行方 (イリス、アル視点)

前線で戦うミレニア王女を援護するためにイリスとアルはかなり急いでいた。

だが街はとても広く、なかなか王女は見つからない。

ちなみに奏は教皇たちの護衛もかねて城に残ることにしたらしい。

どうやら新しい作戦を思いついたらしく、城中の植物を集めていたが何をするつもりなのだろう。

イリスの攻撃により大型の魔物はあらかた片付いたが、物陰に隠れていた小型の魔物までは倒し切れていなかった。


「アル、目の前にいるあいつらを倒してくれる?私は隣のオーク達を倒すから」

「了解、あんな奴らパパっと倒しちゃうよ」


宣言通り、アルは目の前にいたゴブリン達を次々と倒していった。

すぐそばではイリスが魔法でオークを焼き殺している。

二人は一通り倒し終えたところで合流した。


「うへぇ、ゴブリンなんて久しぶりに倒したかも」


アルが持っている剣にはゴブリンの血がついており、血の臭いがこびりついていた。

ゴブリンの血をふき取っていると、オークを倒し終えたイリスが話しかけてきた。


「それにしても半年前の私たちからしたら、こんなに簡単に魔物を倒せるようになったなんて信じられないわね」

「奏ちゃんに触発されたとはいえ、私たち本当に強くなったよね」

「懐かしいわね、あの頃は油断したとはいえゴブリンにやられてたんだっけ」

「そういえば戦ってるときに見つけたんだけど、王女様あそこにいるんじゃないかしら」


イリスが示した方向には、赤レンガで出来た塔があった。

塔には何人かの人の気配があり、入り口では兵士たちが複数の魔物に囲われている。

アルはイリスと協力して入り口付近の魔物を素早く倒し、魔物の攻撃で動けなくなっていた兵士に王女の行方を聞いた。


「あの、大丈夫?」

「あ、あなたは護衛の冒険者の方ですよね?助けていただいてありがとうございます」


その兵士は兜越しに高い声で話しているため、どうやら女性の兵士だったようだ。


「うん、今ミレニア王女を探してるんだけど、どこにいるか知らない?」

「それが・・・」


アルの質問に対し、女性の兵士は下を向いてうつむいてしまった。


「ここには基礎訓練を受けただけの新人の兵士しかいません」

「我々も王女様と共に魔物と戦っていたのですが、敵の猛攻があまりにも激しく、王女様は我々をその場から逃がしました」

「嘘でしょ!?」


兵士の発言にイリスは驚き、怒りを覚えている。

イリスはそのまま兵士の胸ぐらを掴み怒鳴りこんだ。


「まさか王女を置いて逃げ出したっていうの!?」

「あの王女がいなくなったらこの国は本当に滅亡するのよ!?」

「うぐ・・・申し訳ありません」


すると兵士は泣き出してしまった。

隣にいたアルに諭され、イリスが手を離すと兵士は涙ぐみながら自身の境遇を話し出した。


「私にも、守らなくちゃいけない家族がいるんです」

「私がいなくなったら妹は孤児になってしまいます」


この兵士のような境遇を持つ人たちは多いだろう。

流行り病によってどこの国も親のいない子供は多い。

そのため、幼い家族を養うために働く子供たちも多いのだ。

この女性も残された家族を養うために仕方なく兵士に志願したんだと思う。


「イリス、この兵士さんを攻めてもどうしようもないよ」

「今は早く王女様を助けに行かないと」

「そうね・・・」


それから女性の兵士に案内され、王女が戦っていた場所にたどり着いた。

だがすでに王女はおらず、そこには兵士の死体だけが転がっている。


「一応あのアーティファクトがあるから大丈夫だとは思うんだけど」

「そうなの?」

「教皇さんが王女様に渡したんだけど、3回まではどんな攻撃からも守ってくれるんだって」

「そんなの神話の時代に作られた伝説のアーティファクトじゃない」

「すごいよね、自分が持ってるよりもこの国のために使った方が良いって言ってたんだよ」

「そう、あの教皇のこと嫌いだけど、ちょっと見直したわ」


それからイリス空を飛びながら街中を探したが、王女を見つけることは出来なかった。


「ダメね、手がかりが一つもないんじゃ見つからないわ」

「すみません力になれなくて・・・」

「顔を上げてよ、兵士さんも魔物を倒すの頑張ってたじゃん」

「地上の魔物はあらかた狩りつくしちゃったし、どうしたらいいのかしら・・・」


すると突然地面から、巨大なツタが恐ろしい勢いで出てきた。


「イリス、あのツタってもしかして・・・」

「そうね、私もアルと同じ人物が頭に浮かんだわ」


その後、ツタは地下から巨大な魔物を地上に引きずり出したところで止まった。

その魔物の中央には巨大な核があり、中には先ほど魔物を召還していた少女が眠っている。

今は眠っているのか、魔物は一切動こうとしていなかった。

すると遠くから奏の声が聞こえた。

声のした方を向くと王女を抱えた奏がこちらに向かって走って来ている。


「何してたのよ」

「作戦だよ、二人には地上から王女の行方を探してもらって、私は能力を使って地下を探すってやつだね」

「なるほどね、よく王女を助けられたわね」

「やっぱり奏ちゃんは天才だよ!」


王女の様子を見ると、奏にお姫様抱っこをされているせいか、かなり顔が赤くなっている。


「それでどうやって王女様を助けたの?いつのまにか腕も治ってるし」

「それを説明するにはちょっと話が長くなるんだけど・・・」


イリスは奏から、王女救出までの流れを聞くことにした。

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