第7話 イリス
私の名前はイリス。
母が言うには亜人と人間の混血らしいけど、文献をあさってもどの種族なのか分からなかった。
母は私が赤ん坊の頃に孤児だった私を拾って育ててくれた。
やがてミルス公国で私が亜人だという噂が広まり、母はギルドの重要なポストを辞退して私と一緒にゲインまで来てくれた。
そしてアルとはゲインに来た時に初めて知り合った。
当時のアルは幼い頃に両親を亡くしたため孤児として生活していた。
母はそんなアルを引き取り、私とアルは家族同然として育った。
ミルス公国での差別のせいで私には友達もいなかったから、アルと友達になれたことはとても幸運だったと思う。
私の母は銀級の冒険者で、ギルドでも優秀な魔法使いだった。
母とアルと3人で、毎日ずっと幸せな毎日が過ごせると思っていた。
「お母さん!死なないで!」
「ゴホ!ゴホ!」
「ごめんね、イリス・・・」
母は当時のこの町で猛威を振るっていた流行り病にかかり寝たきりの状態になってしまった。
その時は今のような特効薬もなく、自然に治る以外はどうしようもなかった。
結局母は回復することもなく亡くなってしまい、私たちは再び身寄りのない孤児になってしまった。
そんなある日、母の知り合いだったマリーさんが訪ねてきて、シスター見習いとして働くことになった。
それから数年、無事に成人を終え私は魔法使いとしてアルと一緒に冒険者になることにした。
それから私は冒険者として順調に銅級冒険者にまで成長した。
あまりにも順風満帆に過ごしていたのが仇になったのか、小隊の護衛中に油断してゴブリンに捕まってしまい、鎖に繋がれて閉じ込められてしまった。
ゴブリンは人間の女性にとっては天敵で、これから何をされるか想像がついた。
そんなある日一人の少女が助けに来てくれた。
少女は奏と名乗っており、幼いながらも人間離れした美しさを持っていた。
さらに力がとても強いのかあっという間に鎖を破壊し、私が考えもつかなかった方法で見事に脱出することが出来た。
あれから奏には感謝し続けている。
アルも奏のことを気に入ったのか、会うたびにとてもうれしそうにしていた。
私も何故か奏と会うたびにドキドキして、時折胸が苦しくなってしまう。
自分のよくわからない感情に最近は戸惑ってばかりだ。
奏と出会って3か月が経った。
奏もすっかり孤児院の人気者になっており、仕事もバリバリとこなしていた。
私も明日から銀級冒険者の試験が始まり、これに合格すれば晴れて母と同じ銀級冒険者になることが出来る。
そう思っていたのに、どこからか私が亜人であるということが冒険者たちにバレてしまった。
やがて町の人たちにもそのことがバレてしまい、ミルス公国ではさんざん言われた暴言を町中の人たちから言われてしまった。
さらにアルも必死に私をかばったせいで非難の対象になってしまい、急いで孤児院に避難してきた。
あれからずっと涙が止まらず、部屋にこもっていたところで奏が訪ねてきた。
「イリス大丈夫?」
そう言って奏は私の話を聞いてくれた。
同じ亜人だからなのか、奏にはなんでも話せるような気がした。
奏は私をやさしく抱きしめてくれた。
それから奏に自分のことを話してからは気持ちがとても軽くなったように感じる。
あれから母との約束だった日記は、ずっと引き出しにしまったままだ。
奏と出会うまでは日記を書こうとすると母を思い出し、何も書けなくなってしまっていた。
でも奏に救われた今なら書けるような気がする。
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