「胸骨に抱く」

衛星のような猫ゆく駐車場 雨はしばらく降らないだろう


切り取った明かりが部屋に射しこんでいるはじめての自販機の夜


蜂蜜をひたすら喉におとしこみ微睡んでたいだけの年末


共感を救済として生きているコーヒーの味カフェと嘯く


孤独なる電線上の曲芸師 美味しい餌を一人で食べる


百八つ取り除かれた空洞に補給の車向かっています


うすあおの日溜まりよりもあったかく水の重さを胸骨に抱く


その辺で拾った石の御利益を信じて歩く一秒でした


一生に一度の願いを何度でも使える僕はたぶん死んでる


投薬の効果がいずれ現れて世界は丸く 丸くなるでしょう


のど飴を希望と呼んで生きている日々にわたしの窓はまだない


突風に煽られふわり吹きつけるこれは雪粒いやひなあられ


こんな日に生まれたならば蒼と名を付けたいような早朝の朝だ


生き物だ 雪と風とがあるのなら 光の下の夜の光景


ハンドルを握って好きな曲聞いて皆死ねって呟く夜道


揚げたての衣を砕くような音立てコンビニの床で蝉死ぬ


今生の世界の覇者は人間で次はイカだとテレビは言いたり


逃げ場はない 銀河がぼくを呑み込んで君の鼓動がとどかない距離


きらきらと光る悲しみまぶされた含めば甘い指先白し


金色の竜は花びら舞うなかに

ひとり立ってる 君を待ってる

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