「咲き誇る春」

チェーンソー響いたあとに植物の血の匂い漂う昼さがり


あんなにも慕わしかったタピオカを結局いまだ口にしていず


ゆっくりと去る背を見せるくらいなら最高速で走り去ってよ


靴底で叩く地面が押し上げる涙が水たまりへと落ちる


小袋のままで福豆ばら撒いた一年鬼はうちにいただろう


三度目の正直になるはずもなく最初の二度もそうだったでしょう


アルカイックスマイルで乗り切るしかない、不満なら開発部へどうぞ


しなやかに隣家の塀の隙間抜け 猫との散歩は三歩で終わる


歓声が乱暴に背中を押してくる丹田に力を入れろ


重力に負けている夜だからこそ包んでくれる腕もあるんだ


つぶあんとこしあんならばつぶあんがいいと言ったら絶交される


愛情を込められすぎたチューリップがお化けのように咲き誇る春


指先に蜻蛉とんぼをとまらせる術はいつの間にやら無くなっていた


「ぼくりんごだいすきりんごだいすき!」とりんごパイ観察する子ども


銃弾は金平糖で窓をわり部屋に幾つも星をふらせる


アスファルトぽつんと落ちてる手袋を拾って進み進んで捨てる


ただ努力するのは勇気がいることで劣等感がいまも友達


「ビンはワレモノです」わかる「ヒビワレているかも」待って、商品だよね?


駐車場までの道のり忍ばせる暗器の代わり車のキーを


去っていった怪物の子の怪物の仮面をひろう、月夜の晩に

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