「星座の名前」

もう何度呪いにかけられてることか 躊躇一瞬虫叩く初夏


虫かごの中でミイラになっていたサワガニあれどうしたんだっけ


校庭の水場で友とカマキリを洗い殺したりもした青春


メカめいた筆箱を卒業しますこれはペンケースと呼ぶのです


まだ罪の味がするうちに呑み込め 秘密のお菓子 それが鉄則


石橋を叩いて叩いて叩き割り破片を飛び飛び向こう岸へと


てのひらで帯なき表紙撫でるのはつるりと緊張感が足りない


春疾風 辺り構わずはためかせ一万円札攫っていった


旅をした 砂漠の薔薇が本当に思えるように砂塵のなかを


彫像のように静かに佇めりヘッドライトに浮かぶ小雄鹿


一言で説明できるならこんなことやってない 鯛焼きかじる


さよならで終わる話を知りたくて涙の気配嗅ぎ分けている


沈黙を埋める言の葉もくもくと透明な雲吐き出している


甘くない炭酸水の酸っぱさに目を眇めてる泡粒光る


超新星 今は星空のなかにいて僕の体も発光してる


いつか死にゆく赤い星なき後も繋がっていく星座の名前


見たこともない武器だけど雪原に火炎放射器ぶっ放したい


「菊の花びらを数えてください」と言われ全員梔子くちなしになる


チョコなしのミントの色の折り紙で貝の飾りを作り続けた


小説の文字がまだ読めない頃は松葉菊の葉を潰していた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る