第31話


というかそもそも、


俺がドアを開ける係になっていたのはなんでだ。


「なあ、ミヤ」


「どうしたの?達也くん」


上目遣いでこっちをみてくるミヤ。


クソっ、こっちを完全に信頼してるから瞳がキラキラしてやがる。


「あー、ミヤ」


「?」


「いいか、落ち着いて聞いてほしい。」


「言われなくても落ち着いてるよ?」


「……閉じこめられちゃったっぽいわ、俺ら」


「………………………はあ?」


***


「扇くん…遅いな」


とうのとっくに帰宅時間なのに。


一向に教室に現れない扇くんと………か、神崎くん。


何かあったのかな?


今日、チャイムが故障したみたいで、


帰宅時間を知らせるチャイムは鳴らなかった。


「まさか……先生から呼び出しだったりして。」


と。


ふと、持っているスマホが小さく振動した。


扇くんからだ。どうしたんだろ。


ーーー


「体育館に閉じこめられられちゃった。゚(゚´Д`゚)゚。」


「どうしよう(´・ω・`)」


「すぐ行くから待ってて」


ーーー


体育館に閉じ込められたって。


んな馬鹿な。


とりあえず行ってみるけど…。


おふざけじゃないといいな。


「よし、なら早く____」


ひやり、と背筋が冷たくなる。


唐突に暗くなる視界。


誰かが後ろに立っている。


誰かに背後をとられている。


誰かの影が私に覆い被さっている。


ゆっくりと顔を上げ、振り返る。


すると、そこには夏ノ瀬さんが立っていた。


「な、夏ノ瀬さん…?」


「どうしたの、そんなに白い顔でー。怯えるような目で私を見ないで、ほら」


私だよ、私でしょー?、と。


そう訴えるように、こちらに向けて手を広げてきた。


「私さー。思うんだよねー。」


「な、何が?」


「『嘘つきは泥棒のもと』って言うけれどー。嘘をついたことない人間っていないはずなのよー」


「だって、人間だもの」


「怪異でもない限りは。」


「自分に都合のいいように、自分の妄想を嘘にしちゃう。」


「嘘。」


「都合いいよねー。本当」


「でも、やっぱり、『嘘つきは泥棒のもと』って本当なんだろうねー」


「泥棒ー!って言われなくても、人のものを盗んだことくらい、誰にだってあるでしょー?」


「いやいや、本当だよー」


「じゃあ、君にはないのー?」


「悪ふざけで、遊びで物を盗ったことくらい。」


「あるでしょう?」


「だからやっぱり、あってるのかなと思うよー」


「どんな天才でも、どんな偉人でも。」


「誰にだって、嘘を吐いたことくらいあるんだから。」


「世界に無数に存在する、多種多様な嘘。」


「空虚で、虚無で、偽り。」



「それが、私という『うそ』で、『ほんと』なんだ」


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