第30話


「おはよ、月見さん」


「……うん、おはよう扇くん」


「どうしたの?今日いつもより疲れてる?」


「まあ、その、うん」


「そっかー。お疲れ様だね。」


君のお友達と一緒に戦ってました。


実ってやつと。


「おはよ、月見サン」


「えっと…、誰だっけ」


「いや、神崎ね、神崎。昨日、ありがとな。マジで助かった。」


「ああ…、いや、全然。大丈夫だよ。うん。」


「句点多くね?大丈夫?」


「うん…。大丈夫。」


黒い髪、青い目。


そうだそうだ、神崎くんだった。


いつも顔と名前が一致しない…。


あれ、この人は白灰くんとは違うんだっけ?


「ね、ねえ二人とも…」


「「ん?」」


「___い、いつの間に仲良くなったの?」


***


「だーから、別にいいだろって。許せよー」


「…」


「どうしたんだよ、ミヤ。ん?嫉妬か?ん?」


「…」


「おいおい、大丈夫か?もう一回学校に閉じ込められとく?」


「…それはやだ…」


掃除時間中。


体育館の掃除を二人でやっている。


本当はもう一人や二人女子がいた気がするが、


サボリでどこかへ行ってしまった。


最後に聞こえた音は「ガチャン!」だったし。


それにしても、さっきからミヤが口をきいてくれない。


どうしたんだ、腹減ったのか?


おかしいな、こいつ調子こいてラーメン食って、


多すぎて半分以上残して俺に渡してきたくせに?


「おい、どうしたんだよミヤ。言ってくれねーとわかんねーんだよ」


「…だって」


「ん?」


「その…、仲良く、してたじゃん。月見さんと。」


んん?


その言い方だと俺に嫉妬してんのか月見サンに嫉妬してんのかわかんねーぞ?


「はは、そりゃどっちに嫉妬してんだよ?」


「…それは…言わない」


ミヤは、バン!と掃除用具ロッカーを閉めて、


「早く出よっ」


と玄関に急いでいった。


「はいはい、待っとけよー…」


俺も俺で、用具を片付けて、ミヤの方へ向かう。


そして、ドアを開けようとして。


「……ん?」


ガチャン!ガチャン!


何回ドアを押しても、ドアノブを回しても、


何故か一切開かない。


あれ?こんな固かったっけ。


「どうしたの?達也くん」


「あー、待ってな?」


ん?んん?んんん?


開かねー。


マジでかてぇ。


「あー、そうじゃん」


女子たちが出て行って最後に聞いたのは「ガチャン」という音だけ…


俺はその音はずっと「ドアを開けた音」だと思っていた。


違う。


「ガチャン」という音は、「鍵を閉めた音」だったのか。


あー、なるほどね。


納得、納得。


………じゃ、ねーーよバーーーーーーーカ!!!!


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