第21話
俺は幽霊だ。
生まれた時から死んでいて、
生まれる前から死んでいた。
「生きる」ということが分からない。
「死ぬ」ということが分からない。
生まれた時から死んでいて、
生まれる前から死んでいた俺には、
生の実感が湧かない。
死の実感が湧かない。
俺は、常に死んでいて、
俺は、常に終わっているのだ。
***
まあそもそも、俺は幽霊=死んでいるという認識がおかしいと思う。
別に俺は死んでいる訳じゃないし、
まあかといって生きているわけでもないんだけど。
別に幽霊でも死んでないヤツもいるし、
生まれたときから幽霊のヤツもいる。
人間が生まれたときから人間なように。
***
なあ、俺は好きだったぜ。
誰もいない屋上でふたりっきり____
颯爽とふく風が爽やかで。
ふたりだけの声が、それだけが響くんだ。
いい気持ちだった。
お前もそう思ってただろ?
なあ、扇______
お前も、嫌だったんだろ?
こんな親友、いらねえって。
うじうじしてて控えめな俺は、お前にとって嫌いの対象だったろ。
じゃあ別にいいか。
俺、お前の親友じゃなくて。
俺は幽霊。
人間とは違う、人間じゃない存在。
だから、もういいぜ。
俺はもう、あいつの友達でも親友でもねえ。
あいつとは_____。
他人だ。
***
落ちてみた。
とりあえず、屋上から。
うーん、やっぱり「死なない」な。
今日は久し振りに家に帰ってみるか。
母さんに聞いてみよう。
父さんは……多分知らないだろうな。
母さんは元々幽霊だったけど、
父さんは後天的な幽霊だ。
人だったけど、死んで幽霊になった。
母さんなら知ってると思うし、聞いてみよっと。
***
扇。
ミヤ。
どっちで呼ぶのがいいんだろう。
なあ、扇。
俺、変われたよな?
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