第22話


「ぅ……っく」


「……くははっ、お前そういう起き方するんか?」


「ま、おかげ様で。……まだふわふわしてるけど。』


「くはは、変わっとるぞ、声が。猫の声に。」


猫なで声に____、と刻戻。


「大丈夫だってば。とりあえず、殴らせて?」


「くははっ!直球じゃのう。じゃが……」



「触らせんぞ?猫」



「触るよ、力づくでもなんでも、ね」



妖力が滾るのが感じられる。


ちらちらと視界の端にうつる髪が真っ白。


そして、おそらく僕の片目は蒼いだろう。


でも、そんなことはどうでもいい。


思い出させてくれたことには感謝してる。でも___


「親友に、幼馴染にそんな顔させてんのはいただけねーな!!!』


妖術、と刻戻は唸る。


夢で見たよりもっとキレイな顔を歪ませながら。


「刻よ、再回帰しろ!」


教室が一瞬青く光る。


いや、違う。


「______ああああああっっっ!!!!」


殴る。


自分の頬を。


こうでもしないと、正気を保っていられない。


また寝てはいけない。


あの時とは違う。


僕は、弱い猫宮じゃない。


『おもしれーぜ!ユウレイさんよ?!』


「完全に猫化しとるな。のまれたか」


「ちげーよ。これで猫宮扇だ!』


「別人じゃない__どれだけ変わっててもな!』


「名前が変わっても、見た目が変わっても、正確が変わっても!」


「僕はずっと僕だし、達也くんはずっと達也くんだよ!」



「___そうだよなあ、ミヤ」



「_____お主」


「今覚めた。どこだっけここ」


「高校!僕達の!」


「おお、そうだったそうだった。___で」


『俺の親友がお世話になったみてーだな?刻戻』


「はん、お主も幽霊じゃったか。まあ別によい。お主も___」


「いや、俺は別に戦うとは言ってねーぜ?」


「は?」


は?


どういうこと?


達也くんだって夢を見てたでしょ?


あんなに苦しそうな顔をしていたのに、そこあっさり許しちゃうの?


「俺は、別にそこまでいやじゃなかったし。」


「というか、寧ろ忘れてたこと思い出させてくれてありがとうレベルだぜ」


「うわ…、すっかり興ざめなんだけど。でもさ」


「やっぱ一回くらい殴らせてほしい。」


「やめとけ、幽霊を殴ってもなんにもなんねーよ」


「なにかほしいわけじゃないの。ただ、殴らせてほしいだけ。」


刻戻は、少し考えた。


そして、いいぞと言った。


いやいいのかよとも思ったが。


だが、僕は、精神誠意をもって、


満面の笑顔で殴った。



「ありがとう。でも、ありがたくないよ」



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